そこまでだ




「そこまでだ…」

心臓が激しく鼓動するのをスカーは感じた…それは確かな恐怖だ、死に対する…

スカーは自身が死んでないのを確信し、自分の目の前に軍隊を引き連れた、ロイ・マスタングを見た

「…来るのが遅い」

『⁉︎』
スカーとエドとの間には距離がある、令美を狙ったスカーが離れたせいだ…なのに令美は今、エドの隣にいた
「…お…まえ、は…えっ?」
「あんた達はやられるのが早いのよ!しかも諦めてるし、馬鹿」
エドがア然とスカーと令美を見比べている中令美は軍にもエドにも文句を言ってる

「まぁ、何にしろ危ないところだったな、鋼の」
「…大佐、こいつは」
「その男は一連の国家錬金術師殺しの容疑者…だったが、この状態から見て確実となったな…タッカー邸の殺害事件も貴様の犯行だったな?」
令美の文句など聞こえてないフリするロイはスカーについて話せばエドの目つきが変わった

「…錬金術師とは元来あるべき姿の物を異形の物へと変成する者…それすなわち満物の創造主たる神への冒瀆…
 我は神の代行者として裁きをくだす者なり!」

「(神…?)」
スカーは自身の信念を貫きとおす…令美には全く理解は出来ないが

「それがわからない…世の中に錬金術師は数多いが国家資格を持つ者ばかり狙うというのはどういう事だ?」

「…どうあっても邪魔をすると言うのなら貴様も排除するのみだ」
ロイの質問にスカーが答えることなどない、ただ今この場に国家錬金術師がいる事に喜んでいる

戦う気満々のロイをリザが止めるが聞いてない…リザはロイを助け銃で威嚇射撃
「雨の日は無能なんですから下がってください大佐!」
なんとも情けない話である…雨が弱点なのに雨降ってることに気づかないなんて
「…ダサッ」
(ガーン…)


「わざわざ出向いて来た上に焔が出せぬとは好都合この上ない…国家錬金術師!そして我が使命を邪魔する者!この場全員滅ぼす‼︎」

「やってみるがよい」
 (ドンッ‼︎)
ロイが戦闘不能により、また新たな錬金術師が出てきた…スカーに当たる筈だった一撃は壁を壊す

「………なにあれ…」

「…国家に仇なす不届き者よ…この場の全員滅ぼす…と言ったな、笑止‼︎ならばまず‼︎この我輩を倒してみせよ‼︎

 アレックス・ルイ・アームストロングをな‼︎」

声がデカい、態度もデカい、図体もデカい、筋肉もデカい、全てがデカい男に令美はドン引き
「…今日はまったく次から次へと…こちらから出向く手間が省けるというもんだ…これも“神の加護”か!」
「(また神)」
どっちにもドン引きな令美は、アームストロングが部下の止めも聞かず市街を破壊し服まで脱ぎ出して…
「破壊の裏に創造あり!創造の裏に破壊あり!破壊と創造は表裏一体‼︎壊して創る‼︎
   これすなわち大宇宙の法則なり‼︎」

アームストロングの宣言に誰も理解できる者はいなかった、令美は視界に入れたくないほど生理的に無理だった…

「…なぁに…同じ錬金術師ならムチャとは思わんさ

そうだろう?スカーよ」

「錬金術師…奴も錬金術師だと言うのか⁉︎」
「やっぱりそうか…」
スカーが錬金術師だとは知らなかったのか、落ち込んでたロイは驚いていた、エドは若干気付いてたみたいだけど
「(あれって錬金術なんだ…)」
神の力と言うスカーにアリスの可能性も感じていた令美はガッカリ

「早く捕まえればいいのに…」
ロイが錬金術の錬成課程は“理解”“分解”“再構築”の三つで行う、それをスカーは二つ目の分解で錬成を止めている…と説明してるが令美は全く興味がない…

スカーの手口が分かったが、スカーを捕まえるのは困難だったアームストロングの一撃はかなりのモノだが当たらない

リザの銃もスカーに当たらない…がスカーのつけてたサングラスにかすり…

「……赤い…目…」

「褐色の肌に赤目の…‼︎」
     「…イシュヴァールの民か…‼︎」

サングラスのせいで今まで見えなかったスカーの瞳は赤だっだ

「(…赤)」



アカシ-Tsukimi