おかえり






「…ここがリゼンブール…」

汽車に揺れようやくたどり着いたエド達の故郷はエドが言った通りなにもない場所だった
「…本当に何もないところね」
「令美、何してんだ行くぞ」
あるのは自然だけ、どこをみても人工物が無い景色は令美にとって初めて見る景色だった

整備師のところへは歩いて向かっていたエドはリゼンブールについてから観光客の様に景色ばかり見て歩くのが遅い令美が珍しかった

「なんも無いのにレイミのヤツなんであんなに夢中なんだ?」
「田舎が初めてと言っていたが…本当だったみたいだな、我輩には喜んでる様に見えるぞ」
「そーかー?」

「うん、楽しそうだよレイミさん」

「…全然北の森とは違う…」


(わうっ!)
しばらく歩き、一軒家が見えた…するとその家の方から左前脚がオートメイルの犬がエドを出迎えた
「ようピナコばっちゃんまた、たのむよ」
てっきり整備師というのは男だと思ってた令美…なんとエドより小さい年配の女性とは…

「こっちアームストロング少佐、そっちは…レイミだ」
「ピナコ・ロックベルだよ」
エドが少佐と令美を紹介する…ピナコと呼ばれたお婆ちゃんに握手を求められ令美は気まずいながらも握り返した…やはり犬のデンは令美に近づかないが

「しかし…しばらく見ないうちに…エドはちっさくなったねぇ…」
ピナコはでかい少佐とエドを見比べてエドを小さく感じた…もちろんそんな事言われて黙ってるエドじゃない
「だれがちっさいって⁉︎このミニマムばばぁ‼︎」
「言ったねドちび‼︎」
始まってしまった2人の口ケンカ…アルが止めないところを見るにこれは日常的らしい

「こらー‼︎エド‼︎」
「ごふ‼︎‼︎」
ピナコと口喧嘩してるエドに向かって家の方からスパナが投げられた…見事エドの頭に直撃したスパナをなげたのは少女だった
「てめぇーウィンリィ‼︎殺す気か‼︎‼︎」
一軒家の2階から出てきた少女は何かエドに怒っていたのに笑顔でエド達を見下ろした

「あはは!おかえり!」
「おう!」


「……」


家の中に入り、早速エドの右腕をピナコとウィンリィに見せればウィンリィが悲鳴を上げた
「おぉ悪いぶっ壊れた」
「ぶっ壊れたってあんたちょっと‼︎あたしが丹精こめて作った最高級オートメイルをどんな使い方したら壊れるって言うのよ‼︎」

「いや それが もう粉々のバラバラに」
エドの話にウィンリィは顔を青くして、またエドの頭をスパナで叩いた

「で、なに?アルも壊されちゃってるわけ?あんたらいったいどんな生活してんのよ…それに…」
ボロボロのエドとアルの旅にウィンリィは想像がつかない…それに気になるのはもう一つ…
「…」
「豆チビもマセたもんだねぇ」
ウィンリィは気不味そうに、でも好奇心には勝てないのかチラチラと令美を見れば、ピナコがウィンリィの気持ちを代弁した…

「は…ハァ⁉︎」
令美を見つめる2人の反応にエドが理解した
「レイミはただ旅にくっついてきただけだ‼︎」
「ほぉ〜くっつくね〜」
ニヤニヤしてるピナコにエドは顔が赤くなった…アルは巻き込まれない様に静観してる
「変な勘違いしてんじゃねーよ!チビばばぁ‼︎」
「変なことってなんの事だい?豆ちび〜」
慌てて令美との関係を正そうとするがニヤニヤしたピナコは強敵で…またもや2人の口喧嘩が始まる



「…私、ウィンリィ・ロックベルよろしくね…」

そんな2人をよそにウィンリィは令美に近づき、にっこりと挨拶した
「……神奈 令美」
笑顔のウィンリィとは違い令美は無愛想で返事した、名前だけの返事で印象は悪いが…

「…カンナ レイミ?」
「……レイミが名前」
ウィンリィは嫌な顔一つせず、“じゃあレイミって呼んでいい?”と笑顔でぐいぐい迫っていく…令美の苦手なタイプだ

「(美少女って…無表情でも可愛い…)」
令美に苦手とされてるウィンリィはまったく気づかず、令美に興味津々


3日間、事情を話してなるべく早く修理してほしいエドは1週間かかるとふんでいたが…ピナコは3日でやるといった
「削り出しから組み立て微調整、接続、仕上げと…うわカンペキ徹夜だわ…」
右腕を一から作り直し、左脚もエドの身長に合わせる為調整することになった…3日間での仕事量にウィンリィは顔を青ざめた

「悪いな、無理言って…」
調整の為に左脚を取られスペアをつけられたエドは慣れない足取り
「1日でも早く中央に行きたいんでしょ?だったら無理してやろうじゃないのさ…そのかわり特急料金がっぽり払ってもらうからね!」
(ばしっ!)
ウィンリィの一撃は慣れない足のエドには強すぎて転んだ

「…ったくなんなんだ、あの狂暴女は‼︎」
「何を今さら」
作業の邪魔になるためエドとアルは外に出されてしまった、エドはまだ頭が痛むのかウィンリィの愚痴を言う

「はー三日かー…とりあえずやる事が無いとなるとヒマだな…」
「ここしばらくハードだったからたまにはヒマでもいいんじゃない?」
「〜ヒマなのは性に合わねぇ‼︎」
何もしない待つだけの3日間、ヒマなのが嫌なエド、地面に寝転びながら落ち着きなく身体をバタバタしてる

「…てか、レイミどこ行ったんだよ…いつの間にかいなくなって…」

「レイミさんなら周りを見にいくって言ってたじゃん、兄さん気づかなかったの?」
「…う…自由だな〜レイミのヤツ〜」
全然聞いてなかったエドは誤魔化した…下手すぎて誤魔化せてない

「…ハァ、そうだ!そんなヒマなら母さんの墓参りに行っといでよ」

ヒマなエドはアルの提案を受け入れるしかない






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