囚われすぎね
『ーー棗、どうしてそこまでするの?あんな子ほっとけばいいじゃない!ーー』
『ーー俺はあいつをーー』
「…本当、過去に囚われすぎね…」
ここは令美が知ってる場所とは大きく違う、ウィンリィだって“あの子”とは全然違う…なのに
なつかしく感じてしまった…
忘れたい…過去の記憶
「…バカね…」
( 忌わしい )
「…レイミ?」
後ろから名前を呼ばれて令美が振り返ればエドと犬のデンがいた
「何してんの?」
「それはコッチのセリフだ!…人ん家の前で何やってんだよ」
令美がいる場所は…昔、家があった…今は焼け野原になった…エドとアルの家
「…帰る家ないのね」
「……あぁ」
エドは母の墓参りの後この家に来た…この家を出て旅する日にエドとアルは家を焼いた…この焼け野原に
「…レイミはあるのか?」
それはエドの興味本位だった
『……令美』
(…私の…帰る場所…)
「あるわけないじゃん…
そんな“場所”知りもしないわよ…」
◇◆◇◆◇◆
それから3日間、日中は外で過ごした令美
町の人に会うためじゃない…令美は初めての自然と言うものを感じる為
家の手伝いをしてるアームストロングやアルには心配されるが、何か起こるわけがなく
3日目にして令美は飽きてきた
「(なにも感じなくていいけど…ヒマ)」
動物は怖がって近づいてこないし、虫は気持ち悪いし、花はもう十分見たから飽きた…と令美は自分が自然には合ってないのを感じた
「…戻ったの?」
何もすることが無いので早く帰ってきたら、エドの腕が、アルの身体が元に戻っていた
「まぁ…な…」
あの日からエドは令美に気まずく、この3日まともに話してない
「……、…オートメイルつけても小さいのは変わりないから可哀想…ね、おチビさん」
寝っ転がってるエドを令美は見下ろしながら笑った…今日まであの時のことを引きずってたエドはその一言で爆発した
「誰が目に見えないほどのだチビだってーーー‼︎」
「兄さんそこまでレイミさん言ってない」
怒鳴るエドが令美に掴み掛かろうとするのをアルが止める
「…フン!アル続きやるぞ…」
「え…あっうん…」
いつもより早く怒鳴り終わったエドはアルとまた組み立を始めた、令美はそんなエドを見届けて家に入っていった
「…何かあったの?兄さん」
「…」
アルは2人に何かあったか、今聞くべきだと思った…2人の様子が少し変なのは気づいていたけど何となく聞けなかったから
「…兄さん?」
「……帰る場所…無いんだと…」
エドは令美が去っていった方向を見ながら、ポツリとつぶやく様に言った
「……墓参りの日レイミ、オレ達の家にいたんだ…その時言ったよ…オレ達と“同じ”だって…レイミのヤツ平然と言いやがった…」
「…レイミさんが…」
家族がいないのは知っていた2人、前に令美が言った通り珍しい話ではない…エドが今こんなに感情が荒れているのは令美が感情なく平然と家族の話をしたから…それと
「…だがな‼︎」
エドは出来上がったばかりの手を強く握った…
「…帰る場所すら知らなぇ奴がオレらと“同じ”なはずねーだろっ‼︎」
エドはこの日まで悩み、モヤモヤした感情が溜まって…今爆発した…令美のせいで
「…なのにあいつ…気ぃ使いやがって‼︎」
「…レイミさんって本当素直じゃないよね…」
“誰かさんとそっくりだ…”とアルは似たもの同士の2人にココにはない心が温かくなったと感じた
「アル‼︎やるぞ‼︎」
「はいはい」
その後エドはイライラしながら組み手をしていたが少佐が参加してきて、それどころではなくなった