本当に変な子










夕食中、エドは運動してストレス発散したのか、スッキリした顔でウィンリィに組み手をする理由を話す
「オレ達の師匠が『精神を鍛えるにはまず肉体を鍛えよ』ってんでさ、こうやって日頃から鍛えておかないとならない訳よ」
「それでヒマさえあれば組み手をやってんの?そりゃあオートメイルもすぐ壊れるわよ」
「まぁこっちは、もうかっていいけどねぇ」
理由にウィンリィは呆れていたがピナコは金になると笑った

「ふむ、しかし正論ではあるな…健全な精神は鍛えぬかれた美しき肉体に宿るというもの…見よ我輩の…」
「アルそこのソース取って」
食事中にもかかわらず服を脱ぎだす少佐に誰も文句を言わないのは慣れだ…ウィンリィとピナコはドン引きはするが

そんな楽しそうに食事をする中に令美は入らなかった…入ろうとも思ってはいないが


明日、エド達は朝イチに中央へ行く、令美は食事が終わるとすぐに借りている部屋へと篭った

「結局仲良くなれなかったな…」
ウィンリィはとても残念そうに令美の部屋を見つめる…
「仕方ないさ、徹夜で仕事してりゃ話す時間なんてありゃしないよ」
「あー特急じゃなかったら良かったのにー‼︎」
ピナコがウィンリィを励ますがウィンリィはそれでも諦めきれなく、エドを恨めしそうに見つめる

「おい、こっちは客だぞ…それに時間があれば仲良くなれる保証もねーだろ」
エドはウィンリィの苦情を受け付けない、特急なのは事情があるし、あの令美と仲良くなれるとは思わないからだ

「第一なんでそんなに仲良くなりたいんだよ…」
「だって可愛いじゃない」

真剣に答えたウィンリィ以外のみんなの時が止まった

「超・美少女と仲良くなりたいじゃない‼︎」

嘘のない、目を輝かせたウィンリィに少佐の筋肉に引けを取らないほどのドン引きをエドとアルはしてしまった…



「星が多い…」
令美は部屋に篭ったが…今は屋根の上で星空を見上げていた、初日にこの空を見て星の数には驚いていた令美は気に入り毎日星空を見ていた
「(…あの子…変な子だとは思ってたけど…本当に変な子)」
室内の会話は令美にしてみれば筒抜けであり、ウィンリィの会話もしっかり聞こえてる

 『…令美はなんでそんなに怯えているの?』


「…怯えてなんか…ない…」


     『令美、行こう…』


            『イヤよ…』

「…」



「世話になったなばっちゃん」
「あぁ」
朝方、準備の整ったエド達が行くのをピナコが見送る
「あれ、ウィンリィは?」
眠たそうな令美を支えながらアルはウィンリィがいないのに気づいた
「徹夜続きだったからまだぐっすり寝てるよ起こしてくるかい?」
「あーいいよいいよ起きて来たらオートメイルの手入れはきちんとしろだの、あーだこーだうるさいから」
エドはピナコの提案を止めた、嫌な顔しながらも本心じゃないことぐらい気づかれているが

「じゃあな」
「あぁ気よつけて行っといでボウズども、たまにはご飯食べに帰っておいでよ…あんたも次は家でゆっくりしな」
ピナコはあまり令美にあれこれ言わなかったのに最後に令美 に言葉をかけた

「…はい」

令美は体制を整えてピナコに返事をした…そんな令美にピナコもエド達も満足そうに笑った
「うん、そのうち…また」
「…こんな山奥にメシ食うだけに来いってか…」
アルもエドもピナコに返事をすれば少佐はますます笑顔で
「?なんだよ」
「迎えてくれる家族…帰るべき場所があるというのは幸せな事だな」
「へっオレたちゃ旅から旅への根無し草だよ」


「エド!アル!いってらっさい」

              「……おう!」

少佐の言葉を否定していたエドだが、2階からウィンリィが見送りにの挨拶をすれば…エドは返事をした
「…」
「レイミもまたきてねー‼︎」

  ( 本当、“同じ”じゃない…

          やっぱり…私は… )

ウィンリィの言葉にやはり令美は返事を返すことが出来なかった…

だけど、手だけふり返すことは出来た


          
アカシ-Tsukimi