どうぞ、姫さま
「レイミ‼︎いい所に!一緒に来て‼︎」
「は?」
アルから逃げ出してしまった令美を捕まえたのはウィンリィーと…
「おぉ!いいぞ2人とも家に来い‼︎人数が多いとエリシアが喜ぶからなぁ‼︎」
「…は?」
◇◆◇◆
令美は今、軍人であるエドの名を使って宿泊施設を安い値段で泊まっている…支払いもエドがしてるが…だが今日は宿泊施設に帰れないかもしれない…病院でウィンリィーに捕まったのが始まりだ
「あのぉ…ヒューズさん…」
「なんだ?」
「これはいったい…」
まず令美はヒューズを覚えてなかった…イーストシティーで会い、エドに紹介されたはずだが…ロイの隣にいたおじさん達…位の印象しかない
「よくぞ訊いてくれました‼︎今日は俺の娘の3歳の誕生日だ‼︎」
「……」
なのに今、ウィンリィーに連れられしかもヒューズが買ったプレゼントを持たされてる令美はすこぶる不機嫌だ
「パパーおかえりー」
「あらかわいいお客さん達」
事情もあまり分からず連れてこられたヒューズの家、出迎えてくれたヒューズの奥さんと子供…ヒューズは相当な親バカで娘エリシアに抱きついているのは令美もウィンリィーも引いた…
「前はなしたろ、ほらエルリック兄弟」
「えぇ」
「アレと一緒に旅してる子がレイミちゃんで幼なじみのウィンリィーちゃん、泊まる所探してたから連れて来た…妻のグレイシアと娘のエミリアだ」
「お世話になります」
「……」
泊まる場所なんかに困ってない令美はヒューズの言葉に驚いた…そしてウィンリィーを見ればなんとも気まずそうに令美から目を逸らした…確信犯だ
「エリシアちゃん、今いくつ?」
「ふたっ…みっちゅ!」
「やーん!かわいい〜‼︎」
流れに押されて令美の今日の寝床がヒューズ家になりそうな中、令美はウィンリィーを問い詰めたいのに小さな天使に父親もろともメロメロなので話しかけずらい令美
「(…なんなのコレ…)」
「でもいいんですか?私なんかが娘さんの誕生日におよばれして…」
「祝い事はみんなで分け合った方が楽しいだろ!
ようこそ ヒューズ家へ…」
「…誕生日」
『エリシアちゃん!お誕生日おめでとー‼︎』
お祝い事なだけあり家の中にはたくさんの大人と子供がいてテーブルには豪華な料理とケーキがありエリシアを祝った
「……」
パーティーが始まり賑やかになった家の中に令美はついていけなくて部屋の隅でひとり大人しくしてた
「(…場違い…こんな面倒な事に巻き込まれるなんて…)」
知らない顔ばかりのパーティーに馴染めない令美とは違いウィンリィーは容易くパーティーの輪の中に入って楽しそうだった…
「お姉ちゃん!一緒に遊ぼ‼︎」
パーティーに誘ったウィンリィーを令美は憎らしく睨んでたら子供が近づいてきた
子供の相手などまったくしたことない令美は固まった…過去、棗に懐いていた陽一の相手を何回かしたことあるが…こんなに騒がしくなかった…だが無視できない理由がある…令美に話しかけた子が今日の主役、エリシアだからだ
「はぁ…どうぞ、姫さま」
子供相手は面倒な令美はさっさと終わらせようと小さな花束を渡した
「わー!おねーさんすっごーい‼︎」
あ、と令美が気づいた時は遅くアリスを使って出した花束にエリシアは大興奮、そのせいで周りの子供達も集まりだし…
「何ー⁉︎今のまほう⁉︎」
「もう一回やって‼︎もう一回見たーい‼︎」
「…レイミって錬金術使えるの⁉︎」
「いや、今の錬金術じゃないだろ?器用なもんだなぁ…」
子供が盛り上がれば大人も寄ってきて令美は注目の的に…ウィンリィーには錬金術と思われたがヒューズは軍人なだけあってコレが錬金術ではないと気づいていた
「……手品みたいなものよ、練習すれば誰でも出来る」
練習したところでまったく出来ないけど令美は嘘で誤魔化した…アリスの事は言っても理解されないから
子供達が何度も手品を要求するので満足するまで令美はアリスを使って花をぽんぽん出していく…
ようやく盛り上がりが落ち着いて、令美は大いに疲れた…一刻も早く帰りたい令美は隅っこで休憩していた
「…?」
そんな令美の服を引っ張る人がいて
「…お姉ちゃん…おはにゃ、ありがとー」
エリシアが舌足らずな口調でお礼をしっかり言った…令美は別に子供は嫌いではない、騒がしいのが嫌いだが…
「…」
令美は優しくエリシアの頭を優しく撫でた…少し陽一を思い出して令美は懐かしさに笑顔した
「…なんだ…ちゃんと笑えんじゃないの…」
「…レイミの笑顔…可愛すぎる…⁉︎」
「……」
ヒューズは令美の笑顔を見て安心した…初めて会った時から普通の子供とは違っていたから…エドとアル同様に…
結局、ウィンリィーだけがヒューズ家に泊まるはずだったが、エリシアに気に入られウィンリィーにも泣きつかれ令美も一緒に泊まるはめになった…