偽物だった










「お世話になりました」

翌朝、1日お世話になったヒューズ家にウィンリィーは頭を下げる、令美も眠たそうにだが軽く礼をする
「…本当にいいの?中央にいる間ずっと泊まってもいいのよ?」
「そんなに甘える訳にもいきませんから今日は自分で宿を…」
「…遠慮します」

(ひしっ…)

今日限りで泊まるのは遠慮したい令美とウィンリィーの服を掴んで離さない子がいる

「エリシア!…すっかりなついちやって…」
「こうして見ると3姉妹みたいだな…」
何が何でも離さないエリシアに両親が笑うが令美は笑い事ではない

「おねえちゃんいってらっしゃい早く帰ってきてね」

「こりぁ今日の宿も決まりね」
「へへ…妹ができたみたいでうれしい」
エリシアの可愛さに負けたウィンリィーの宿が決まった…それは 令美も泊まるということで…
エリシアに抱きつくウィンリィーを見ながら令美は小さなため息を吐いた…




◇◆◇◆◇◆




「私を巻き込まないで欲しいんだけど…」
「ごめんね!本当ごめんねーレイミ〜‼︎」
ウィンリィーと共に病院へ向かう中ウィンリィーに文句を言う令美、後ろには送ってくれたヒューズもいる

怒っている令美にウィンリィーは謝るが始終笑顔で反省してるかわからない…笑顔のウィンリィーがエドの病室へ入った時ー


「ボクは好きでこんな身体になったんじゃない‼︎」


それはアルの内に秘めた叫びであった…その言葉にエドはもちろん、ウィンリィーも止まった
「…好きで…こんな身体になったんじゃない…」

「…」
エドのくだらない愚痴が始まりでアルの想いが爆発した…令美は部屋に入らず、だがアルの想いは聞いて

「あ…悪かったよ…そうだよなこうなったのもオレのせいだもんな…だから一日でも早くアルを元に戻してやりたいよ…」

「…本当に元の身体に戻れるって保証は?」

爆発した想いは止まることはなく、アルはエドに想いをぶつけた
「絶対に戻してやるからオレを信じろよ!」

「『信じろ』って‼︎

この空っぽの身体で何を信じろって言うんだ…‼︎

錬金術において人間は肉体と精神と霊魂の三つから成ると言うけど!それを実験で証明した人がいたか⁉︎」
いつもアルとは違うとエドも気づきウィンリィーも…
「『記憶』だって突き詰めればただの『情報』でしかない…人工的に構築する事も可能なはずだ…」
「おまえ…何言って…」

「…兄さん前にボクに怖くて言えない事があるって言ってたよね

それはもしかしてボクの魂も記憶も本当は全部でっちあげた

偽物だったってことじゃなかい?」

アルの仮定にエドは言葉を失う…エドにとって考えも及ばない内容だったから

「ねぇ…兄さん、アルフォンス・エルリックという人間が本当に存在したって証明はどうやって⁉︎

そうだよ…

ウィンリィーもばっちゃんも皆でボクをだましてるって事もないあり得るじゃないか‼︎

どうなんだよ!兄さん‼︎」

(ガン‼︎)

アルの叫びはエドが机を叩いた事で止まった…静かになった室内にエドは

「…ずっとそれを溜め込んでいたのか?

     言いたい事はそれで全部か…」

エドは怒るでも否定する事もなくアルに問い、アルが頷くと…
「…そうか」
エドはそれだけを聞くと何も言い出す事無く病室から出て行った、そんなエドに令美は不思議でならない
「(…なんで何も言い返さないの…?)」



「バカーーっ‼︎」

“ごわん”とすごい音と共にウィンリィーの怒鳴り声…アルがウィンリィーにスパナで殴られたようだ…

「ウィ…ウィンリィ…」
「アルのバカちん‼︎エドの気持ちも知らないで‼︎」
泣き出したウィンリィーにアルはオロオロと慌て出す、だがそんなアルにウィンリィーはまたスパナで殴る

「エドが怖くて言えなかった事ってのはね…

アルがエドを恨んでるんじゃないかって事よ‼︎」

ウィンリィーはエドの代わりに泣いて説明した
「オールメイル手術の痛みと熱にうなされながらあいつ毎晩泣いてたんだよ…それを…それなのにあんたはっ…

自分の命を捨てる覚悟で偽物を、弟を作るバカがどこの世界にいるって言うのよ‼︎

あんた達たった二人の兄弟じゃないの…」

泣きながらアルをスパナで叩くウィンリィーの言葉にアルは…

「追いかけなさい‼︎」
「あっ…うん…」
目が覚めたアルはウィンリィーの言った通りエドを追いかけた
「…やっぱ兄弟ね…世話がかかるところが似てる」

走って行くアルの背を見ながら令美はこれで兄弟の喧嘩は終わるだろうと確信する









アカシ-Tsukimi