そいつに甘すぎねぇか



   “…大人なんて嫌いだ…”

        “……私に家族なんて…

      …いらないーー”



「賢者の石?」

家の中に入りお茶を出され、エドはさっそくイズミに石の話をした
「師匠なら何か知ってるかなーと…」
「私は石は興味ないからなぁ…そんな伝説でしか存在しないようなモン研究してどーすんの?」

「…元のから…」
「いやっ‼︎ほら知的好奇心といいましょうか!」
石について話す前に研究するワケを聞いてきたイズミに令美がポロッと本音を言う前にエドが慌てて止めた

「…賢者の石ねぇ…」

「…おい!バカ何師匠に本当のこといってんだよ‼︎」
「…何で言ったらダメなのよ…もしかして“あの事”知らないの?」
「…当たり前だァ!死にたいのか‼︎‼︎」
石について頭悩ませてるイズミに気づかれぬようエドは令美に小声で怒るが令美は事の重要さに気づいてない

「…そういえばこの前の旅行で中央に寄った時石にやたら詳しい錬金術師に会ったよな…」
「ああ…あの男!えーとたしか…

  『ホーエン・ハイム』って名乗ってたっけ…」

「!」
錬金術師の名前を聞いた瞬間、2人の兄弟の顔色が変わった…

「どんな人でした⁉︎」
「割と背が高くて…金髪メガネにあごヒゲだったかな…年はよくわからなかったけど…けっこう男前だったよ…」
アルが真っ先に反応し、特徴を聞き出す…イズミの語る「ホーエン・ハイム」でイメージする令美の脳内に一つの写真が浮かんだ…

「(…あの写真の…)」

「…生きてたんだ…」
「知り合いか?」

「…父親です…ボク達の…」

リゼンプールのウィンリ家に飾られていた…数枚ある内の一枚の写真…小さな2人の子供を両親が2人で抱えてる家族写真…
「あの昔出て行ったっていうお前達の父親?丁度いいじゃないかまだ中央にいるかも…」

「あんな奴‼︎あんな奴に頼るのだけはごめんだ…‼︎」

エドがうつむいたまま怒鳴った…家族の話を令美は知らないが、エドの態度といい父親が見えないように飾られていた写真…仲が悪いと令美でもわかる
「…あ…あの父さん石について何か言ってました?」
「ん〜

長年の望みがもうすぐどうとか…うれしそうに語ってたっけ…」

「…」


話は一旦やめて、昼飯をご馳走になる男ばっかりなため肉中心のメニューでがつがつと食う男共
「はい、カンナはコレ食べな…ほらエド‼︎汚いだろうが」
「…」
「…師匠、そいつに甘すぎねぇか…」
イズミは女の子には甘く、汚いテーブルの中、自分と令美の所だけえらくきれいでオシャレな料理を並べていて隣のエドが少しでも侵入すると怖くなるイズミ

そんな差別がある食事中、話題になることはエド達の旅話しだった、令美と出会ったきっかけやら炭鉱の話しにこの前の出産の…
「ラッシュバレーで出産に立ち会ったもんな!」
「師匠!ボク達赤ん坊とりあげるの手伝ったんですよ‼︎」
「バッカおめー!手伝ったって言えるのかよあれで!オレ達うろたえてただけじゃん…」

「あはは!確かにレイミさんの方が大活躍だったよね‼︎

でも『案ずるより産むが易し』ってあの事だよね…

家族が協力して、母親も命をかけて…

みんなに祝福されて人間は産まれて来るんですね…」

「そうだよ…お前達もそうやって生を受けた…自分の命に誇りを持ちなさい…」


         「…………」



「そういえば…師匠のとこは子供は居ないですけど…」

エドの疑問はただ、純粋なモノでそれがイズミの禁句だとは知らない
「エドワード君‼︎」
メイスンがわざとらしく大声でエドを止め、話をすり替え…ご飯の後にエド達の錬金術がどれほど進歩したか見せる事になった

「私パス、興味ないから…夕方までには帰るから…」
やる気十分なエド達を前に令美は早々と出て行こうとする

「…どうかしたのか?」
いつもと変わらぬ冷たい態度の令美だがエドは少し気になって問いかける

「……別に、ただの気分転換よ」

令美はエドを見ずに冷たい返事をして早々と出て行ってしまった

「…カンナちゃんって意外とクールなんだね〜」
「…ナマイキなだけだ!…まぁもう慣れたけど…けど!」


「……」


メイスンが令美の印象を丸くおさめているがエドが訂正し令美の愚痴大会が始まる…アルが否定したりと騒がしくなる男らの中イズミだけが真剣に令美の背中を見ていた







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