何になりたいんだ







「…カンナ…お前はもう子供じゃない…そんな瞳をする子供私は見たことないよ…」

令美に語りかけるイズミはいつも困ったような苦笑い…でもその笑顔には優しさがある

「…カンナに何があったか無理に聞くつもりないし“大人が汚い”を否定するつもりもないよ…見ての通り私も自分勝手に求めて禁忌を犯した…

だがカンナ…お前はどうする?

大人になりたくない…だが子供でもないお前は…

何がしたいんだ…いいや違うな

カンナは何になりたいんだ…」


「(……何になりたい…?)」

イズミの言葉に令美は目を見開いた…そんな事初めて言われたから…昔から大人を嫌い拒絶する令美に対して周りの人は皆、あきれて…離れる者や力でねじ伏せる者だけだった

『…君の力は…神…そのモノだ…』

      『ほらアレでしょ…女王様で…』

    『…あんたは…化け物よ…』

「…私は…」

過去の記憶が巡るなか…令美は幼い頃から願ってたこと…

  ( …そんなの決まってる…私は…

         “神奈 令美”は… )


   「 …“人間”…

       ただの“人間”になりたい… 」

「…人間?」

 「みんな勝手に私を決める…

私は神様でも化け物ない…わたしは…

        普通の人間になりたい…」

令美は気づかない内に本音を言ってしまった…大人にいいように操られるのは嫌いな令美なのに不思議と嫌な感情がない…

「…そうか…」

令美の本音にイズミは安心したように笑った…その微笑み…


「…大人は嫌い…でもあなたは少しだけマシ…」

「…!ははっ!…それは光栄だなぁ」


   令美は嫌いではなかった…




「…カンナはいくつなんだい?」
「……14」
「へぇー!あの兄弟より年下かぁ…同じ歳くらいだと思っていた」

「…エド達バカでガキだから…」
話が終わり、令美は気まずくなりエド達を追うことにしたがイズミがそれを止めてお茶を出した…汽車のことなど気にしてないイズミに疑問を思うが令美は流れでお茶することに…

たどたどしくイズミの質問に答える令美に始終笑顔を絶やさないイズミ
(バン‼︎)
「師匠‼︎」
「どの面下げて戻って来た‼︎」
外で誰かが走る音がすると思ったらドアが開きエドが入ってきた…容赦がないイズミはエドの頭上に包丁を投げた…今回ばかりはエドも身長がなくてよかったと思うぐらいギリギリだった

「なにが“師匠”だ!貴様らなんぞ弟子とは思わん!とっとと帰れ‼︎」
「師匠‼︎」

「ボクたち元の身体に戻る手がかりを得にここに来たんです!」

「手ブラでは帰れません‼︎」

破門され出て行ったのに何が変化して戻ってきたのか令美はわからなかったが…イズミは若干戻ってくると思ってたのか…だから令美にお茶を出したのか…と令美は予想する

「…ばかたれが…」
「(…結局折れてるし…ここにはいつまでいるんだろ…)」
エドの真っ直ぐな瞳に弱いイズミは兄弟を家の中へ入れた…そうして令美達は正式にイズミにお世話になることになった…



◇◆◇◆


「アルは真理を見なかったんだね?」

「あっ…えーと『真理』ってなんの事かさっぱり…」
エド達が帰らなくてすみ、さっそくエド達は錬金術について話す…令美をのぞいて…錬金術について令美は口出しすることはない…だって理解出来ないし興味がまったくないからだ…だがこの話は少し興味がある…

『真理』
エドとイズミが人体錬成をした時見たというソレをアルには記憶がない…
「ふぅん…ショックで記憶が飛んでるのかね?アルの記憶を戻してみよう…なんせ全身持って行かれてるから」
「そうか!あいつの言ってた『通行料』の量で言うならアルは真理に1番近い所にいる‼︎」
「じゃあその時の記憶が戻れば‼︎」
『真理』に近づくためアルの記憶を戻すことが一つ目の課題ができ明るくなったが…『真理』を知るエドとイズミは苦い顔に…なんでも“精神がイカれる”とか“廃人”とか…とにかく嫌な記憶らしい

「 …( 真理…ね… )」

「…それでも可能性があるならそれにすがりたい‼︎」

「…よし、記憶を戻す方法をさがそう…私も知人に当たってみる」
記憶を取り戻すことに前向きなアルにイズミも少し悩んだがそれしか道がないため明日からアルの記憶を戻す事に専念することになった

「その前におなかすいたでしょ、ご飯にしよう手伝いな方法がみつかるまで帰る気は無いんでしょ?」
イズミが話は終わりと言わんばかりに夕食を食べることに…確かにもう夜遅い

「ほらっいつまで座ってんの!」
「はっはいっ‼︎」
「ありがとうございますっ‼︎」

夕食の準備を手伝うため兄弟は立ち上がり師匠についていく…
「あぁ…カンナも手伝ってくれるか?」

「…“レイミ”が名前…そっちの方で呼んで」

「…あぁ!レイミが名前だったのか…レイミ…いい名だ…」

『⁉︎』
イズミに対して敬語じゃない令美にも驚くが何より令美が少しだけイズミと仲良く見えた

兄弟のイメージでは令美は最初から師匠に敵意剥き出しだった…のだが自分たちの知らないところで何がと頭を悩ませる兄弟


(大人は嫌い…そんなの変わりっこない

  でも私が嫌いな大人じゃない人もいると

      認めてもいいかもね…)





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