年はいくつだね
「それは困る」
グリードの後ろに…“アレ”がいた…令美は真っ直ぐと見つめた…寝ぼけてたとか勘違いだと思いたかったが…令美の思いとは違い、やはり“アレ”はーー
「…誰だ?」
「大統領…なんでここに⁉︎」
「…へぇ…この国で1番にエライ方がこんな所になんの用で?」
キング・ブラッドレイ…アメストリスの“大統領”という地位を持った人が現れたことにアルは驚き、グリードは笑顔を無くし…令美は確信する
「君、年はいくつだね」
「は?」
国の最高地位を持つ男だけあって冷静で余裕がある大統領の突然の質問にグリードは呆気にとられる
「…あいつ、逃げた方がいいよ」
「え?」
令美がポツリと助言した…あいつは大統領ではないグリードの方だ
「私は今年60になる、年をとると体が思うように動かなくなるな…こんな事さっさと終わらせて帰りたいのだよ」
「引退しな、おっさん」
「…やられるよ…あいつ…」
令美の助言など意味はなく、グリードは手を硬化する前にブラッドレイが両手に持つ剣で手を切断した…
「…おっ…おいおいおい‼︎なんつーおっさんだ‼︎」
グリードが慌てて再生するがブラッドレイがそれを許さず、早ずぎるスピードでグリードに近づき剣で傷つけていく
「…そこのあんた」
ブラッドレイの早い攻撃に見てることしか出来ないアルに令美が話かける…
「え?」
「…アルじゃなくて、アルの中にいる女に言ってるの」
『…何?』
グリードとブラッドレイはもう令美達からは見えない、ただ戦いの音が聞こえるだけ…
「…生き残りたいなら逃げた方がいい…あんたのボスはきっとやられるから…」
『なっ…グリードさんが殺されるはずないじゃん‼︎あんただって見たでしょグリードさんの体でどうやって殺すのよ‼︎』
アルの鎧の中に入ってる監視役のマーテルは令美に怒鳴る
「でも不死じゃないんでしょ…そのためにアルを誘拐したんだから、きっと死ぬまで殺されるか身動きで出来ないように捕らえるか…とにかくあいつが逃げる方法なんてないの」
怒鳴るマーテルなんて臆する事なく令美は冷静に忠告する…だが令美の言い草にマーテルは受け入れられない感情的になり怒りが増幅していく
『あんたにグリードさんの何がわかんのよ!』
「っ…!」
マーテルの単調な返しに令美は呆れると一緒につい言ってしまいたくなった…
“あんたこそ何の真実が見えてるの”
…と、令美まで感情的になっては事態はどう転がるか分からない令美はいっぱい、いっぱいな頭を使い冷静な行動をする
「アル、こんな馬鹿私はどうでもいいけど…あなたは違うでしょ…逃げた方がいい」
「…レイミさん…」
グリードは硬化の力がある…という事はホムンクルスには特殊な力がある…あの第五研究所であった2人も…大統領は動きは早いが普通の人間とそう変わらない…
だが…目が異常に良いのだ…
「(…あいつ…)」
大統領『キング・ブラッドレイ』は
最強の眼を持つ人造人間(ホムンクルス)
令美の瞳にはブラッドレイの眼帯で隠されている眼にウロボロスの入れ墨があるのを見た
だったらここで令美はアリスを使うのはリスクが大き過ぎる…令美はアリスの力をもう嫌いな大人に利用されるのだけは嫌だから…
「アル、早く…っ‼︎」
戦闘の音はいつの間か無くなって静かになった…そして足音が一つこちらに近づいてきて…現れたのは…
「…誰だ⁉︎」
暗闇から出て来たのグリードだった…けど背後にいるブラッドレイに首を剣で刺されていた
「グリードさ…」
「ダメだ‼︎」
マーテルがアルの中から出ようとするがアルがそれを止める自分の頭を抑え、出たいマーテルを自分の中に閉じ込める
アルは令美の忠告通り…今出ていけばマーテルは殺される
「…これで15回は死んだか…あと何回かね?ん?」
「て…め…」
「あぁ…くそさっきの所でくたばってりゃ楽に死ねたなぁロア…まったくツいてねー」
グリードの再生…若干スピードが落ちてるように令美は見えた…ブラッドレイに意識を集中しすぎたのか令美達の後ろからボロボロのグリードの仲間が…ロアとドルチェットが現れた…
「尻尾を巻いて逃げてもいいぞドルチェット」
「そうしたいところだがご主人様があんなんじゃなぁ…いやになるぜ犬ってのは忠誠心が強くってよぉ…
なんだ…テメェ戻ってきたのか…」
ドルチェットは監視役だった犬っぽいやつでロアは見ての通りクマ…死んでもおかしくない傷だらけなのに戻ってきた令美におかしく笑った
「そんなの私の勝手でしょ…」
「…ハッ!違いねぇな…ナマイキな所も変わんねー」
「…わかってんでしょ…死ぬわよ」
あのブラッドレイには勝てない…だが令美の忠告にもドルチェットは笑っていた
「(…なんで…)」
「まだ中にいるんだろ…そいつ逃してやってくれ」
「たのんだぞ」
ドルチェットがアルの両手足縛られていた鎖を切ってマーテルを託した…そしてグリードを助けに…
ロア、ドルチェットがブラッドレイと戦う…2人がかりなのにブラッドレイはその強さは揺るぎない
マーテルはアルに叫び続けた…仲間を助けたいから…だがアルは絶対マーテルを出さない
グリードが敵わない相手に負傷の彼らが勝てるはずなく…
「おいおいブラッドレイさんよ…どうしてくれんだ俺の部下をこんなにしちまってよ…」
「駒に情が移ったのか、くだらん」
まだ完全ではないが再生したグリードが水道の水に浮かぶ部下を見た…
その顔には怒りがあった