久しぶりね
『…いいんじゃねーか…“他人”でも…
“他人”にしか言えねぇってもんがあるんじゃねーか?』
「…お節介な人って…」
『…レイミちゃんとエド達は
“ 旅仲間 ”ってヤツじゃねーか 』
「…ほんと、バカ…」
『…次来た時は、“みんな”で家に来いよ…』
「…私少し寄り道してくるから先に行ってて…夜までには帰るから」
ロイと別れ、ヒューズ中佐もいないとなりエド達は宿へ向かうことになったが令美だけ別行動したいと言い出す
「あ?どこ行くんだよ」
「…少し、話したい人がいるの…」
どうせなんも言わないと思っていたエドだが令美は意外と素直に返事した…曖昧だけど
「…どうしたんだ?レイミのやつ…」
「「?」」
今日は天気がよく、この世界は高いビルなどもないので前の世界より青空が大きく広く見える
「……久しぶりね」
令美は1人、ある人物の墓の前で話しかけた
「まだ“行って”なかったみたいね…未練タラタラなんじゃない?」
“ ”は驚いていた…令美はそんな相手をバカにしたように笑った
「私を誰だと思ってるの?…ま、あんた達からしたら信じられないだろうけど知りたかったんでしょ?私の力…」
アリスを使って令美は花束を出した…そしたら相手はおかしそうに笑っていた
「…平気、死人に口なしって言うでしょ?」
令美は不敵な笑みを浮かべた
「…へぇ、他人になりすましねぇ…アリス持ってるみたいね本当…」
思った以上に話が長くなり広い空が青から茜色に変わってしまった
「大丈夫、あんな偽物になんかに私は負けないから…ついでにあの兄弟も守ってあげる」
気になってた事を教えてあげたら令美のアリスより驚いて…令美としては納得出来なかったがホムンクルスの情報は手に入ったので黙った
「…もう行く、夜になる前には帰らなきゃ…」
墓場の前に座っていた令美は立ち上がった
「…なにか……ないの?……家族に……」
それが令美の精一杯だった…家族と言うものを知らない令美が分からない中どうにか出した気遣いでもある
「……そう…」
令美が気を遣ったことに相手は驚いた…だが同時に嬉しくなった…きっとエド達の旅が少しだけ令美を変えたのかもしれない
“……………”
返ってきた返事は拒否だった…あんなに家族を大切にしていたのにどうして何もしないのか令美にはやっぱり分からない
「…じゃあ…さようなら… ヒューズ …」
“…ヒューズさん!…だろ!”
きっともう会うことはない…令美には何故だかそう確信していた…
“…じゃあな、レイミ…”
◇◆◇◆
宿へつく頃には外はもう暗く…令美の気分も重くなった…
「…エドがうるさくなる…」
“遅い‼︎”の一言から始まり…母でもないのに説教を始めるうるさいエド、時に参戦するアルにうんざりする令美…帰宅が遅くなると毎回その流れがあり、今日もそうなりそうで令美は帰るのが嫌になる
「(…それとも)」
エドとアルの部屋には兄弟はいなくウィンリィがいた
その手には持つのは
『マース・ヒューズ准将殺人事件の犯人が
マリア・ロス少尉と断定』と記載されてる情報新聞
「…あの2人いないじゃん、慌てて損した」
「…!……レイミっ‼︎」
新聞に夢中になってるウィンリィに話しかけた…誰もいないと思っていたウィンリィは令美の声に肩をビクッとさせ青い顔色で令美を見た
「…新聞…見たの?ひとりで」
ウィンリィは何も答えないが顔色の悪さと震える身体ですべてを語っていた
「…レイミ…ウソだよね…ヒューズさんが…」
「…本当…マース・ヒューズは死んだよ…」
令美の残酷な言葉に声を出せないウィンリィを令美は兄弟の部屋から出して自分達の部屋に連れて来て休むように言った
「…あのバカ兄弟、何してんのよ…」
ウィンリィを放っといて何処か行っている兄弟…そんな彼らがヒューズの死を知り…ロイ・マスタングがマリア・ロスをその炎で焼死させたのを目の当たりにし…最悪な夜を過ごしているとは令美は知らなかった