前に進みなさい
次の日、朝早くからウィンリィは宿を出た…令美もつれて…
『…ごめん…レイミも一緒に…お願い…』
『…いいけど』
弱々しいウィンリィに頼まれて令美は断ることが出来ず一緒に行くことになった…令美はウィンリィに気づかれないよう、いまだに帰ってきてない兄弟に置き手紙を残して2人はある人の家の前にきた
(コンコン)
「…パパ!…」
「あっ…」
ドアをノックして出てきたのは笑顔のエリシア…パパのヒューズが帰ってきたと思ったのか、ウィンリィと令美を見て笑顔をなくしてウィンリィに抱きついた
「どうしたのエリシア…お客様?」
抱きついて離れないエリシアにウィンリィが困ってる、令美に助けを求めても助けてくれず…グレイシアが来てくれて…グレイシアは令美達を見て驚いていたがウィンリィの様子を見て察してくれて快く部屋に入れてくれた
「…」
ヒューズの事をウィンリィはグレイシアに確かめることはせず…膝にエリシアをのせて黙ったままだった
「ウィンリィ迎えに来たぞ」
エドとアルが来たのはそう時間はかからなかった…グレイシアが連絡してくれてたから
「ん…ごめん」
「いや…オレも…ごめん…」
何も言わずに行動したことにお互い謝罪するウィンリィとエド…それとエドは令美にも…
「…レイミもごめん」
「…別に、気にしてないから」
「グレイシアさんに話しておかなければならない事があるんで…いいですか?」
「ウィンリィとレイミさんも一緒に聴いてくれる?」
兄弟の目的はウィンリィを迎えに来ただけじゃないみたいだ…
一つのテーブルを囲んで座り、エドとアルはまず自分達の過去から話始めた…このことはヒューズの死に大きく関わるから
「…この前兄さんが入院中にヒューズ中…准将が色々と面倒を見てくれて…石の事もついでに調べてくれてるんです」
元の身体に戻るために賢者の石を探してるエド達にヒューズは協力していた…“ヒューズ”から話を“聞いていた”時も思ったけど令美は呆れた
「(…やっぱり、おせっかいな人…)」
「軍法会議所の資料をひもといて…でもそれはどうやら軍の暗部につながる極秘の…一般人が知ってはいけない事だったんです…
大統領自ら『危険だ』と制止に来るほどの…」
「……」
アルの言葉に大統領がでて令美が僅かに反応したが気づく者はいない
「主人は何かを知ってしまった…もしくはそれ以上首をつっこむなと言う犯人側の警告ね?」
「おそらく…オレ達が…オレ達が巻き込んだのも同然です…
すみません……すみません……‼︎」
エドが謝罪のに誰も何も言えない…ただ悲しいだけ
「…元の身体に戻ろうとする事でこの先また犠牲者がでるかもしれないから僕達はもう…」
「人助けしようとして死んだとしたらあの人らしいわね…」
エドの謝罪とアルの諦めの言葉にグレイシアは困ったように笑った…その言葉とは裏腹に色々な感情がグレイシアの中にある事を令美だけが分かる
「昔からおせっかいの世話焼きで損してばかりなのよあの人…でも損以上に沢山の幸せがあったわ…
ここであなた達があきらめると言うなら主人の死は全くの無駄になります…」
グレイシアが感情に流されず…兄弟を思っての言葉に令美は強く心を揺さぶられた…きっとエド達も…
「賢者の石とやらがダメなら他の方法があるかもしれないじゃない…
自分達の納得する方法で前に進みなさい…」
「(…前に)」
話が終わり、玄関までグレイシアは見送ってくれた…令美はヒューズが言っていた妻は美しくて強い人だと言っていたのを思い出した…きっと今頃グレイシアは泣いている…エド達の前では泣かない
死人を生き返らすことはアリスでも出来ない
ヒューズの想いを伝える事はヒューズが望んでない
きっとグレイシアも…
「(…私に出来ること…)」
宿に帰っていくエド達の背中を眺めながら令美はきっとこの兄弟は落ち込んでも前に進むと確信していた…では令美はその時兄弟の隣にいることは…
「“借り”をまだ返してもらってねーんだよ…
逃げられると思うなよ…レイミ」
「行きましょう…令美さん…‼︎」
「……決まってんじゃない…そうね、
私1人だけ置いてかれるのは…ムカつく…」
「……レイミおねぇちゃん…?」
帰ったはずの令美がまたヒューズの家に来た、出迎えてくれたエリシアと少し目元が赤いグレイシア
「……伝え忘れてる事があるので…き、ました」
「…え」
令美の心臓がいつもより強く鼓動して…なれない敬語に戸惑って…らしくない自分に気味が悪い、だが令美は伝えたかった
彼らの隣に立つために…
「…見ず知らずの私にグレイシアさんの旦那さん…エリシアのお父さんには色々とお世話になりました…
ありがとうございました…」
令美がまた来た事も驚いたが令美の言葉をきいてグレイシアはもっと驚いた…ほんの少しの時間しかグレイシアは令美の事を知らないが少し訳ありな子だとわかっていたから…こんな事を言う子だとは思ってなかった
「…レイミちゃん…」
「……私は…エドとアルと一緒に行きます…
だから安心して下さい、あいつらのこと
私が守ります 」
強い子だと思っていたグレイシアだが…前に会った時より今の令美は少し違う…
「…ありがとうレイミちゃん…あなたも気をつけるのよ…」
「……っ!」
グレイシアはたまらず令美を抱きしめた、それを真似してエリシアも…大人の女性に抱きしめられた事なんてなかった令美…
戸惑う令美は感じたことないこの温もりを
どう受け止めたらいいか分からないでいた
「(……あったかい…)」
いつか分かる日がくるのか…
今はまだその温もりを忘れないように
小さなエリシアの手をにぎった