頑張ってー








「(…やっぱり私が残る必要なかったかも…)」

リンはグラトニー、ライファンがエンヴィーを相手に戦い続けている中、令美はただ安全な場所で見てるだげだった…これならアルの方へ行くべきだったと令美が思うくらい

「レイミちゃんは僕が守るヨ!」

「わーすごい…頑張ってー」

盾にするのはやめてと言っていたのに令美が棒読みで応援するとキラリ…とキメ顔を作って令美にアピールするリン…分かりやすく操られてる主人に納得いかないライファンだが、主人を守るため戦うしかない

「(…意外とあっちの方がヤバそーかもね…)」

個々の戦い方しか知らないホムンクルスとは違いリンとライファンは息が合うコンビプレイで、エンヴィーが地面を砕きライファンを捕まえようがリンが飛ばした剣がエンヴィーの横腹に刺さり、それで切り裂くライファン…その剣をリンに返してグラトニーを真っ二つにしたリン…

今は力の差があり、リン達は負けることはないがいくら切っても復活する2人に困ったリン…それに派手に戦いすぎたせいで周りに人が集まりだした…

「グラトニー人が増えてきた」
「うん、食べていい?」

「いや“飲んでいいよ”」

ざわり…と空気が変わったのに令美達は気づいた…グラトニーとエンヴィーの雰囲気も変わり…そして何かに変わろうとしている

「見物人もこいつらも…カンナレイミも

この嫉妬(エンヴィー)の姿を見た奴は何もかも全てだ」

「…」

エンヴィーの変化にリン達も警戒心を強くする…令美も…


『…何をしているのですか』

「⁉︎」

エンヴィーとグラトニーが何かする前に何処からか“声”がきこえた…急に現れた人物にリン達はもちろん、令美も驚く…

「(…この私が気づかなかった…)」

「『プライド』か⁉︎何しに来た‼︎」
『仕事も片付かず街中で醜態をさらし更に我々の懐にまで侵入を許すとは情けない』
「懐に侵入…‼︎じゃあカンナレイミは…」
囮になったつもりはない令美、この2人の足止めぐらいには考えてたが…ロイが上手く事を運んだようで結果的に囮になっただけ…

『エンヴィー君はいかさか雑すぎる今日は引いた方が良いでしょう』
「でも…」

姿を現さず声だけで緊張感を生み出すプライドに令美達は口出す事が出来ない…

『黙りなさい小童がこれ以上文字通り『醜態をさらす』と言うのですか』
「…っ‼︎引くぞグラトニー」

プライドは言葉だけでエンヴィーを従えた…それほどプライドは強いらしい
「おい、命拾いしたな…」
「どうかナ?やってみないとわからないヨ」
「フン…」

去っていくエンヴィー達をリンは追う事はしなかった…エンヴィーとグラトニーだけでも厄介なのにその上のプライドを相手にしようとは思わないみたいだ

「(…あの『プライド』って奴…)」

ホムンクルスが去っていって後リン達は令美の聞き取れない自国の言葉で話してる中(少し日本語っぽいけど)令美は消えたはずの敵をについて考える

「(…透視でも見れないなんて…ありえない…)」

感じたことの無い少しの不安を抱えながらも令美はリンに声をかけることなく…その場から消えた…

「あレ⁉︎レイミちゃんワ⁉︎」
リンが気づいた時には遅く令美がいないことにリンは探すフリをして悲しんだ

「……若、あのレイミという少女…何者なんですか?」
リンと部下の2人、ライファンとフーは相手の気を読むことが出来る、その為どんな人間に化けてようとホムンクルスが誰なのかわかる…だから令美は…

「んー人間だと思うヨ…詳しくは分かんないけど…僕のドストライクってこと以外ハ!」

「…あの少女…底が知れませんよ…」


「…そーだネ…敵にならないことを祈ってるヨ…」


この祈り…令美に届いて無いだろうけどね…とリンは何処かに行ってしまった令美を想いながら夜空を見上げた




       ◇◆◇◆◇◆



「…派手にやらかしたね…」

軍の施設である第三研究所の地下にはいかにも怪しげな施設があり…アルの後を追ってきた令美は誰にも見つかることなく中を探索し、ある部屋で足を止めた

「…こげくさ…」
たった今争った形跡のある部屋は丸ごと焼かれてとても汚くて令美は入りたくないのだが…部屋の中に見知った人が倒れていたので仕方なく生存確認

「…あれ?もしかして死んだ?」
見知った成人男性2人が倒れており、ピクリとも動かない2人にまさか死んだのかと少し驚く令美…だって殺しても死にそうにない人だと思ってたから

「……まだ…っ…死んで…ない…」

「あっ生きてた…なら、ただ負けただけか…」
「…手厳しい…な…っ!」
ロイ・マスタングが生きてると分かり令美はロイを見下ろした…傷がどれだけひどいか令美には分からないが、命からがらに見える

「おっさんが死のうが私はどーでもいいから…その傷は自分でどうにかしてね…

  今の私には何も出来ないから…」

手を貸すことなく令美は部屋を出て行こうとする…そんな彼女にロイは苦笑い…

「…あ、でも死なないでねアルのために…

  それに隣で死にそうな部下も助ければ…

     まだ間に合うかもよ…」

「っ‼︎」

最後に令美が残した言葉はロイにとっては希望で力になる言葉…

 「ハボック……そうか…っ!そうかぁ‼︎

     では…何としてでも 生きねば‼︎」






アカシ-Tsukimi