甘いんだよ








この地下に侵入してからロイとは別れアルはリザとバリーと一緒に行動していたが…

「…中尉立って…逃げるんだ…」

大きな陣が書かれた扉がある異質な部屋でアルは中尉を守っていた…バリーは目の前の敵、ホムンクルスのラストにやられてしまった

「困った子ね…先に死にたいの?」

ロイの死をラストから聞いたリザは気を取り乱し銃を乱射して今は戦意喪失している…銃を何発も身体に受けたラストが地に落ちることはなかった…

不老不死相手にアルはリザを守るため…錬成陣なしで武器を錬成した
「!…そう…あなた扉を開けたの…」
アルの錬成に興味を示したラストは自身の武器と言っていい、手の黒い爪部分を伸ばし鋭い棘の様にして攻撃する

「残念だわ…人柱確定の人材を屠る事になるなんて…」

ラストの爪によってすぐに壊されたアルの武器…武器がないアルにラストは容赦なく攻撃する…だがアルは絶対動かない…後ろにはリザがいるから


「なら殺さないでよ」


ラストに返事したその声はラストの背後から聞こえた…それに反応するよりも前にラストの腹部に何かが貫通して血が噴き出した…だが傷はすぐに直る…
「…なっ⁉︎」
音もなく気配もなく…急に現れたその人物にラストは驚きを隠せない…だって令美は始末する予定だったから…

「何のために行かせたと思ってんのよ…バカアル」

「レイミさん⁉︎」
 
…あの第五研究所からラストには令美が異質に見える…今だって武器一つも持たずに立っている…ならどうやってラストを攻撃したのかラストには分からない自分達ホムンクルスとは違うのに…
「…あなた…まだ生きていたの…」

「…私を殺そうなんてあんた達には無理」

ラストはエンヴィー達が失敗したと分かり…ならこの場でこの異質な少女を始末するため令美と向き合った

「レイミさん!逃げて‼︎」

「…そうね、せっかく命が助かったのに…死に来るなんて…」

リザを守るため動けないアルが令美に逃げるよう声をあげる…令美のたってる場所からならラストが攻撃してくる前に逃げれば…


「バカじゃないの…この私がここまで来て

     なんで逃げないといけないのよ
      
私がこんなおばさんに

       殺されるわけないでしょ」


アルの忠告もラストの脅威もモロともせず令美は最高に上から目線で反発

「…カンナ レイミ…生意気ね…」

「私が相手してあげる…死なないようにね…

               おばさん」

人を馬鹿にした態度の令美にラストは久しぶりの怒りを感じた…容赦はしないとラストは自身の爪を棘に変え襲い掛かると…何も持ってないはずの令美が銃を取り出た
「っ⁉︎」
ラストに近づかれる前に令美は心臓や頭、足を撃つ…

「レイミさん‼︎」
「アル!あんたは自分とその女守ってなさい!」
足を撃たれたラストはその場に留まるが傷はすぐ直っていく…令美はラストの傷が治りきる前にまた銃を打ち続ける

「…そ、の…程度では私は殺さないわよ…」
「……あんたはなんも分かってない…命を軽視する奴は痛い目にあう…アル!壁を作りなさい‼︎」
何発撃たれようとラストにはきかない、だが令美はアルが壁を作ると指を鳴らした
「…なっ⁉︎」
(…ピピッ…ボゴッ‼︎‼︎)
「…っがぁあぁ‼︎」
体内に残った銃の弾を出される前に令美は弾と爆弾を取り替えればラストの身体の内側から爆弾した

「…甘いんだよ…敵の力も知りもしないで」

内側から爆破されてラストの半身は吹き飛んでいるが…それでもラストは地へ倒れていない…

「へぇ…よく倒れなかったな…」
「…どう…やって…」
少しずつ身体が戻っていくラストは令美の攻撃方法に驚きを隠せない
「…自分の力をわざわざ敵に教えるバカじゃないの、私は」
理解が出来ないラストに令美は何も告げず…負傷して動けないラストに近づいた

「いくら不死身の身体を持ってようとその程度じゃ私に傷1つ付けることは出来ない…ほら早く身体直してみなよ」
「…グッ…」

そしてまたしても何処からか出した刀を令美はラストの頭に突き刺した…

「…カンナ…レイミ…っ‼︎」

「…あんた達は人間じゃない…だから弱いんだよ…

 (…規格外がいるかもしれないけど…)」

直っていく身体で令美に反撃するラストだが…刺さった刀によって…いや、『何か』によってラストの身体は無惨にもバラバラに切られてしまった…

「…レイミ…さん…」

「…一応終わった…生き返る前に早くここから出よ」

完璧に完全にラストを倒し、無傷である令美にアルは何も言えなかった…が

「…何してんの?早く帰ろ」
「何でこんな危ないマネしたんですか‼︎」
令美の不思議な力よりアルは令美の行動の危険さに怒りをぶつけるのが先だったようだ…

「…別にこのくらいの敵、私は平気…この通り無傷でしょ」
怒るアルにめんどくさそうにそっぽを向く令美…それでもアルは

「…本当に…レイミさんが強くて…無事で良かったですけど…

 …でも…何かあってじゃ遅いんです‼︎

        僕は‼︎イヤなんです‼︎」


「……」

令美にアルは想いをぶつけた…想いをぶつけられた令美はそっぽを向いてた顔をアルに向けて真っ直ぐに見つめた

「…なら、信じて…私を…アル自身も

    私は…神奈 令美は死なないって」



「…レイミさん…」

「信じてくれたら私は絶対裏切らないから…大丈夫」
表情は変わらないのにアルが驚いているように令美は見えた…令美がちゃんとアルの気持ちを真剣に返してくれるとは思わなかった
「…それとレイミでいい…一応アルの方が年上でしょ」
令美の返事にアルが何も言えなくなった時、令美の後ろにいるラストの陰が動き、バラバラだった身体が一つになろうとしていた

「…レイミ‼︎」

令美はちゃんとラストの動きには気づいていた…がアルに名前で呼ばれて(読んでいいとは言ったが)少し動揺した
「…アル」
「…レイミさん、中尉を連れて逃げて下さい‼︎」
錬成で壁を作ったアルは次にはいつも通りになっていて令美は拍子抜け

「…私が相手して方がいいと思うケド…まぁいいか…」
ラストの相手をアルにお願いして、令美は今だに座り込んで呆然としているリザに声をかけた

「…アルが時間稼ぎしてくれてる、今のうちに行こう早く立って」
「…あなた達だけで逃げなさい…」
大佐が亡くなったと知り戦意喪失してるリザの事を詳しく知らない令美は理解不能

「…早死したいの?…私はどーでもいいけど…

     アルは許さないと思うけど…」

 「はい!中尉を置いてなんていけません‼︎」

「逃げなさい‼︎あなたたちだけでも‼︎」
何でここまで逃げろと言うリザに令美はめんどくさいから瞬間移動したくなったが…それは出来ないし、アルが…

「いやだ‼︎」
リザがどんなに逃げろと叫んでもアルは絶対に拒み続ける

「いやなんだよ‼︎ボクのせいで…自分の非力さのせいで

     人が死ぬなんてもう沢山だ‼︎

守れるはずの人が目の前で死んで行くのを見るのは

        我慢できない‼︎」


いくらボロボロになろうとアルは暴走しているラストの盾になり続けた…瞳の輝きを強くさせて…


  「よく言ったアルフォンス・エルリック」






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