一人の夜はいやだよ








「…」

父親のホーエンハイムに言われた事でエドは独断で人体錬成で作った母親の遺体を埋めた墓を掘り起こした…そんな勝手なことをしてアルが怒るのは正しいがアルが怒鳴る前にエドが止めた

「結果として!あれは母さんではないという結論に達した…」

アレは母だと…母を作ったと思っていたアルはその結果に怒りも忘れ唖然とし力無くしたように座った

「…それで母ではないとして…何か分かったの?」
混乱してるアルの代わりに令美がエドがそこまでした訳をきく
「…あぁ…おまえが元の身体に戻れる確信を得た…」

「「…本当に⁉︎」」


エドが何故アルの身体が戻ると確信したか、それを説明する前にエドは急に過去の話を持ち出して、何故かエド達の過去何があったのか…3人で話し出した
「(…何で私がこんなくだらない話聞いてんだろ…)」
エド達が5歳の頃『ウィンリィを嫁にするのはどっち』で兄弟ゲンカした話や背が低いからフったと言うエドにとってはイヤなエピソードをアルもしっかり覚えている…それにエドが知らないアルとウィンリィだけのエピソードもアルはしっかり覚えてるそれは鎧の中にいるアルは本物って事で…

過去の話に傷つきまくりのエドが言うに10歳、鋼になる前の記憶はある…じゃああの日鎧になった日からのアルの記憶はどうなっているかと考えた時、鎧に描かれた血の錬成陣はただアルの魂を定着させてるだけで…記憶は…

「…思うにどこかに存在するアルの肉体は今も活動していて脳は動いている…」

エドの仮定はアルが二人いて…『魂』と『肉体』この2つを繋げているのは『精神』と言うことに…
「…」
魂やら精神やら令美にはよく分からない…ウィンリィも同様でエドとアルが話す内容についていけてない…だが唯一令美には気になる事が

『真理の扉』

『通行料』

アルは死んでなく真理の扉に持っていかれた…エドは通行料として右腕を払ってアルの魂だけを引っ張りだした…と
「…母さんは『死者』だ…存在しない者をあの扉から引っぱり出すのは不可能だ…」
「(…死者には無理で、生者は出来る…

  “通行料”に“扉”…もしかして…)」

結果、扉の先に手を伸ばして、いたのは母ではなく自分自身だと思い出したアル…扉に肉体を取られたアルの魂は作り出した母の中…母の魂はどこにもなかった…
「…あれにおまえの魂が定着しなかったのは不幸中の幸いか…」
「今思えば拒絶反応だったんだろうね…

そうか…あれは母さんじゃなかったんだね…」

「…」


「許してくれとは言わない…全く関係ない者を錬成しておまえを巻き込んで…おまけに爆弾抱える身体にしちまって…

オレは…」

エド達の話した仮定は真実に近い…だからエドはアルに上手く言葉が伝えれない…言葉を濁すエドにタイミングよく電話がかかってエドとアルは電話があるホテルのロビーへ降りていった…

「……真理の扉…」

出て行ったエドとアルの後をウィンリィは追いかけたが令美は部屋に残った…

思い出すのは白い部屋の中…

        自分の前には大きな扉に…

    白い敵だと思ってた…“自分”


「…これも隠してはおけない…かも」


部屋を出なくても令美はアリスを使ってエドがイズミと電話をしてるのを聞いていた…自身の亡くした子供を人体錬成したイズミも作り出した者はイズミ夫婦から生まれるはずのない肌や髪色をしていた…

『…ありがとう』

失われた者は再構築できないと確信したエドの言葉に…イズミはエドにお礼を言った…エドは何故お礼を言われたのか分からなかったがアルには分かった…

『兄さんありがとう

  ボクは母さんを殺していなかった……‼︎』


「…どいつもこいつも罰を背負い過ぎなのよ…バカ」
盗み聞き中の令美はエドやアル…それに棗に届いてないのに独り…愚痴を言わずにはいられなかった…





母を殺していなくてもアルの身体を元に戻すまでエドが1人背負うのをアルは止めた…それも一緒に背負い、元の身体に戻る可能性があるなら…アルは…

『もう…もう……一人の夜はいやだよ…‼︎』

  『…オレもおまえの笑った顔が見たい…』

2人はまた決意する…強くなり誰一人失わず元の身体に戻ると…

『もうグダグダ悩んでるヒマは無ぇ

  やってやるさ…真理の野郎ぶっとばして

 あそこからおまえの身体を

       引っぱり出してやる!』


「……」
彼らが決断して前に進む時…令美は決めていた…一緒に行くか、行かないか…

令美は…




吹っ切れたエドとアルは部屋に戻って優雅にお茶してる令美を見て脱力…
「遅い、待ってたんだから」
「お、まえ…」
「エドも揃ったから私の話しようと思ったのに…帰って早々慌ただしい…」
エド達からしたら真実が分かって革命が起きたかのような瞬間、慌ただしくしない方が難しい…なのに何故文句を言われなくてはいけないのか…

「レイミ…話すって…」
「約束したでしょ…エドも揃ったら私の話をするって」

「んっ⁉︎」

アルには事件の後、アリスについて話すと言った令美だが、その場にいなかったエドはもちろん知らない
「…でも条件がある、エドが軍の犬だろうが軍の人間にはまだ口外しないで、あと馬鹿王子にも…

それと…彼女も…」



「え…」

エドが状況についていけない中令美が勝手に話を進める…後から部屋に入ってきたウィンリィもよく分かっていない

「…ワガママかもしれないけどこの条件だけは譲れない…」

「…レイミ…」





アルがエド達に詳しく説明して…納得はしてなかったがウィンリィは自分の部屋に戻ってもらった
「なんでウィンリィは聞いちゃいけねーんだよ‼︎」
納得出来ない人物がもう一人…いや、不機嫌なエドとは違いアルは大人しいが内心令美がウィンリィを遠ざけるのか疑問に思っている

「…彼女は綺麗だから…

   汚したくない…そう思ったから…」

「「……」」


ウィンリィを入れなかった訳を話しながら自分の手を見つめる令美にエドもアルも何も言い返せなかった

何故か少し共感できた…








アカシ-Tsukimi