真逆なの




      (…おかしいよね…棗)


  (私…あんた達から逃げてきたのに…)


   (…今、私エド達から逃げてない…)


     (…逃げたいと思ってない…)





「…で、何なんだよレイミの話ってのは」

「エド達の話を聞いて分かったの…

         私も…真理の扉を見てる」

「「⁉︎」」
盗み聞きが趣味なのか令美は聞き耳立ててる2人組から聞こえぬよう部屋に結界をはった…その変化に気付く者はいない…目の前で驚き固まってるエドとアルにも

「…な、んで…レイミが真理の扉を…錬金術師でもないのに…」
固まってたエドが理解に追いつかない頭をフルに使って令美にきく
「…そうね、私は錬金術師でなければ人体錬成したこともない…」
「じゃあどうして…」


    「…きっと私の“アリス”のせい…」


前、令美が『アリス』について詳しく話さないのには何か理由があっての事だと兄弟は令美が話したくなるまで待ってようとコソコソと相談していた…(アルが説得したとも言う)まぁ令美には全て筒抜けで相変わらずのお人好しバカだとは思っていた

だけどそんな兄弟に甘えて言えなかった令美も人のこと言えない立場なのだが

でも…

「“真理の扉”の話をする前にまずは“アリス”の話をする…だからそんなところに立ってないで座って…

話は長くなるとおもうから…」


 令美も前に進むことにした

            エド達と同じように


令美は2人が座り、盗み聞きされてないか確認してから話した

「…科学頭な兄弟には信じられない話だけど…


…アリスって言うのはね…

   神からもらった天賦の才能なの…

  錬金術が科学なら、アリスは真逆なの…」

「……真逆?」


  「…アリスは非科学の力…“超能力”よ…」






        ◇◆◇◆◇◆







ウィンリィはものすごく居心地悪く感じていた…

「…そう言えば…あちら側にいるアルの体って平気なの…?」
ちょっと前に令美と話があるからと何故か自分だけ部屋を出されてコソコソと3人で話してたのに終わったからとアルに呼ばれたウィンリィの心境は複雑なものだった…なのに令美は気にすることなく平然とした態度だったのには驚いたし気にしてるのは自分だけで…居心地が悪いウィンリィ

「…僕の…身体…?」
「エドの推測じゃ身体があっちにあるんでしょ?腐ってんじゃない?」

「っ⁉︎」

気まずい空気の中なのに令美の疑問に空気が変わった…アルの顔色が鎧なのに青く見える…

「…そうだ…腐ってたら…どうしよう…」

不安は積もる一方で…アルはますます嫌な予想が膨らむ…
「だってあっちにあるって言うボクの肉体は栄養を取ってないんだよ⁉︎睡眠も取ってないんだよ⁉︎バリーの肉体みたいに崩壊しかけたらその身体に戻ったとしても…‼︎」

「キモい」
アルが鎧を震わせて自身の腐った身体を想像する…冷たい令美も斬り捨てるように一言

「え⁉︎ちょっと、どうしようエド‼︎」
さすがのウィンリィも先程までの居心地悪さを忘れてアルの心配をする


「…うむ…仮説だが…

母さんを錬成しようとした時、魂の情報としてオレとアルの血を混ぜたよな?」
「うん」
「そして二人一緒にあっちに持って行かれて一度分解された…その過程でオレの精神とアルの精神が混線してしまった可能性は無いだろうか?」
「何が言いたいのさ?」

「こっちのオレとあっちのアルがリンクしている可能性は無いかって事だ」
人体錬成でたった一滴兄弟の血が混ざっただけで精神が繋がるとエドの仮説に令美は理解できない…アリスなら分かるが錬金術でそう言ったことが出来るとは思えないからだ

「(さっぱり分かんないんだけど…)」


理解出来ない令美をおいて、仮説はまだ続く

「ほら…オレって年の割に身長ちいさ…

ちぃ…





……ちいさいし…」

「(みとめた…‼︎)」
「(トラウマと向き合った…‼︎)」
仮説の為、泣いて自分の身長の低さを認めたエドにウィンリィとアルが分かりやすく驚く

「……」



「えーと…つまりアルの肉体の成長分もエドが背負ってる…って事?とっぴょーしも無い…」
「とっぴょーし無くない‼︎」
「あんたは牛乳飲まないから伸びないの!」
エドの仮説に無理ヤリ感を感じるウィンリィに怒るエド…そうすれば2人のケンカが始まる

「…へへ…そうだといいな…」
「…何でそこで嬉しがるの…」
ケンカしてる2人を止める事なくアルはエドの立てた仮説に喜んでいる

「…そりゃあ同じ血を分けた兄弟だもんね」
「おうよ!二人で一人前!」
アルの気持ちが分からない令美だったがウィンリィとエドには分かったらしく、ゴンと拳同士を合わせて笑い合っている

「…釈然としないけど、まぁいいか…もう用事ないから私部屋で休むから」
もう興味がなくなったのかマイペースな令美は隣の部屋へ行ってしまった、もちろんエド達は止めない…止めても言う事聞かないと分かっているから



「……ね…ねぇ!レイミの話って…何だったの?」

令美が出て行ったのを見送ってから、ウィンリィはずっと気にしてたことをエド達に聞く
「「…」」
ウィンリィとしてはエドが師匠に電話した後何故か自分だけ部屋に戻され3人でこそこそと話されて良い気はしない…でも後でエド達に聞けば話してくれるって確信はあったのに…

「?…どうしたの…」

「…ごめん…ウィンリィ…」

返ってきた返事は想像とは違くて兄弟のバツ悪そうな顔と謝罪…
「…レイミと話した事は言えねぇんだ…ワリィ…」
「え…」
断られると考えてなかったウィンリィはもちろん驚いた…訳も知りたがったが気まずそうなエドの顔を見てその問いは口からは出ない

「…あ…ううん!いいの‼︎気にしないで…

あー…あ!取り敢えずアルのことは安心した!明日ガーフィールさんの所に戻るし…じゃあ…私も部屋戻って支度するね!」

ウィンリィは変な空気になるのを避けるようにいつもの態度で部屋を出て行ったつもりだが付き合いが長い兄弟にはウィンリィが無理してるのがバレバレだった…



「…何やってんの…私」
部屋を戻ると言ったがそこには令美がいる…気まずさで居場所がないウィンリィは静かな廊下で項垂れた

「(…そうだよね…

 レイミが秘密をエド達に話したからって

   私に話してくれるとは限らないよね…)」

胸の内に広がるモヤモヤとした感情が悲しみなのか悔しい気持ちなのかウィンリィは分からない





「…ウィンリィには悪いことしちゃったかな…」
気をつかって無理に笑って出て行ってしまったウィンリィにアルは罪悪感が拭えなかった

「…仕方ねぇだろ…あんな話、ウィンリィには出来ねぇだろ…」

「…うん」





アカシ-Tsukimi