取られたモノがある
「話が逸れたけど、アリスについては理解したってことでいいでしょ」
「…まぁ…認めたくねーけど…」
科学者として非現実的なアリスを受け入れるのは難しいが令美は気にする事なく次へ
「それで、その力でどーやって扉を見たんだよ」
「…『タイムスリップ』のアリスよ」
「タ…」
「……イム…」
また兄弟の思考回路がストップしたのは仕方ないことだった
「私、力のコントロールには自信あったから…よく2つのアリスを同時使用したり出来たの
それで『タイムスリップ』と別のアリスを一緒に使えばどうなるか…新しいアリスでも出来ると思ったら…」
「…扉の前にいたのか…」
「そう、白い世界に大きな扉…それに透明な奴…アリスも使えなかったし…」
令美の話についていけない兄弟はギブアップ…エドは髪を掻き乱し、アルは天を仰いでいる…『タイムスリップ』などはエド達にとっては異次元な話だ…だが認めるしかなかった…令美が話した真実の扉はエド達もしっかり見た
「あー!もう訳わかんねぇ…頭がおいつかねぇ…」
「うん…僕も…」
「…もちろん、“コチラ側”に来る時にあんた達同様に私もあいつに取られたモノがある…」
「何⁉︎」
あり得ない話に脱力してる兄弟に令美は追い打ちをかける、エドは腕と足、アルは身体を取られた代償に知識を得た…同じように令美も取られた
「私の場合は…『癒しのアリス』…」
「…いやし?」
「傷や病気を治すアリス、医者なんかいらない便利なアリスを取られた…」
「そんなヤツもあるのか⁉︎」
驚きすぎて理解するよりも恐怖を感じたのはアルだった…未知は恐怖だ…理解しようにもアリスには手も足も出ない
「…アリスって何でも出来るんですね…僕…少し怖くなりました…」
「……そうね」
アリスの存在を知って恐怖したアルの感想はなんともマヌケなモノになった…が、令美はそれにただ淡々と返事した…その声色は何故だか優しく感じた…
「…ちょっといいか…」
「え?」
だが、そこに待ったをかけたのはエドで…エドは一つ気になることがある
「…令美、アリスを取られたって言ったよな…」
「……えぇ、今も癒しのアリスは使えない」
「俺らは身体と引き換えに知識を手に入れた…令美は今まで見る限り錬金術の知識はない…
令美…
何と引き換えに『癒しのアリス』を奪われた…」
「あ…」
「………」
令美としてはエドがそこに気づき、追求してくるとは思わなかった…本当は“別の”ことを話されると想像していたから…
「…へぇー気づいたんだ…頭の中混乱してるから気づかないかと思ったけど」
「おい」
アルのようにただ感想言うだけなら令美は言わなかったかもしれない…エドの“全部話せ”と言わんばかりの強い目を無視して令美は信じられない話をする
「…この『世界』に『アリス』はないでしょ…」
令美はつぶやくように話す…
「…確かに『アリス』なんて規格外な力見たことも聞いたこともねぇ」
「本とか調べても無かったよね」
令美は知ってるエドとアル…それに大佐達がアリスについて調べてたってこと…
「調べたって出てくるわけない、ここには錬金術しかない…だって…」
「…令美?」
「…私は別の世界…きっと『異世界』から来た」
まるで夢物語のような現実味がまったくない話を…
この世の中には別の世界があると…
世界そのものが違う所から来たと…
令美は真っ直ぐと兄弟を見つめて言った
◇◆◇◆
「……異…世界…」
「私はココに来る前は学校にいたの…アリス学園って言うアリスを持つ人だけがいる学校に…アリスは世界的にも有名で優遇されてる、どんなに小さい国でもアリスは常識的知識だから…知らないなんてことあり得ない」
驚く…と言うよりエド達は信じられず戸惑っていた…令美はそれを冷静に説明する
「それに私の世界はこの世界と比べて機械などが発達していた…最初は別の国に飛んだと思ったけど…私の世界には錬金術なんて無かった…」
「…錬金術がないだと⁉︎」
説明するが…この令美の話は証拠も信憑性すらない…ますます難しい顔している兄弟に令美は…
「…まぁ、この話は信じなくていい」
「「⁉︎」」
「…証拠もない証明しようもないのに“信じろ”なんて無茶苦茶なこと言わないから…
ただ、アリスの存在だけは理解してもらえればそれでいいから…」
軽く、異世界から来た話は冗談だったと言わんばかりに令美はエドとアルに諦めさせようとした…