ファンクラブ会員No.1

ー櫻野sideー




 初めて君を知ってから 

     全ては始まっていた…



この頃学園が騒がしい…

色々と噂の絶えない日向棗はもちろん、転校生の佐倉蜜柑がきてからこの学園は止まってた時が動いたかの様だ…でも僕は今そんな彼らよりも気になる人がいる…

佐倉蜜柑と同じ時に転校してきた苗字 名前…

彼を知るきっかけになったのは“あの”事件…
日向棗とも佐倉蜜柑とも違う、自信に満ちた瞳で上級生に向かって挑発的な態度なのに礼儀は正しい…それに何だか懐かしくも感じた…

そんな彼がどうしようもなく気になる

「秀…帰らないのか?」
「今日は行くとこがあるから先に帰っててよ」
今日も生徒会での仕事を終えて毎日ってほど一緒に帰ってる昴に今日だけは大事な用事があるため断る
「…どこに行くんだ?」
「個人的なこと、確認しに行くだけだから…少し気になることがあってね」
「…そうか、分かった先に帰っておく」
不器用に心配している昴には悪いが正確な事は告げずにやんわりと断る…申し訳ないが


「………」
だが僕はどうしても行かなければいけない場所がある

噂の店を知ったのは…生徒会という立場の僕だから知り得たことだと思う、こういう裏情報を把握するのはこの学園では少数のそれなりの地位がないと無理だろう…しかもこの噂の店はその裏情報よりも厳守で僕でさえ知り得るのに時間がかかった

「…この噂が本当なら“彼”に知らせないと…」
アリスを使って不当な利益を得る事は許されない彼だって傷つく…だけど何故だろう…生徒会として、先輩として、こういう店は取り締まらないといけないのに…

僕は噂の店に行くことが楽しみでもある…


「…ここか」
毎回場所が変わる噂の店へ着いた…そして商品を見て僕は言葉を失った
「…」
厳密に守られてる店なだけであって客は少なく商品も少ない…だが一つ一つの値段が高い…なのに客のみんなは値段を気にすることなく当たり前の様に全種類買ってた…

噂の店に並べられてる商品は全部同じ人物で写真やグッズが豊富…僕はその中から…

“本日のオススメ”…そう書かれてる目玉の商品を手に取る



     かわいい



今まで誰に対しても感じたことのないこの胸の高鳴り…それはまるで一目惚れしたみたいに僕は夢中になって見つめた…そして気がついた時には全ての商品を買ってしまっていた

先程まで彼に報告すべきだと言っていたが…ミイラ取りがミイラになったように僕も瞬殺でここの客になってしまった…
「…可愛い」
いや、これは仕方ないだろう…こんな可愛い存在見たことない…

“本日のオススメ”『苗字 名前くんの幻の妖精』

『急遽アクシデントにより妖精役をすることになった名前くんのたった一度の幻の舞台…そんな激レア妖精の舞台裏や舞台上の写真…そして今なら余すことなく名前くんの演技姿を映像で見られる‼︎超ビックなセットを数量限定で発売‼︎』

文化祭での体質系が少々トラブルがあったと聞いてはいたが彼が関わっていたとは…それにこんな彼の一面があるなんて…知らないなんて損だ…人生終わる…


『本日お越しのお客様に申し上げますー』
彼の女装姿にメロメロになっていると、店の方からアナウンスが流れる
『この度、当店が開店して1ヶ月が経ちました…苗字 名前様の人気は止まることを知らずに本日より当店は非公式ですがファンクラブを立ち上げます。ファンクラブ会員になりますと特典として、当店の開店日、設置場所を事前にお知らせすると共にファンクラブでしか手に入らない特別なグッズが月に一度いただけます…ご入会したい方は受付の方へー…』

その日僕は…光の速さの如く行動したと思う…

お陰で手元にはファンクラブ会員No.1のカードがある…そして大量に買ったグッズを大切に抱えて僕は帰った

その日から僕の推し活は始まった…




名前くん…ごめんね…

あの店を潰すことが出来なくなった…

名前くんに報告するのもやめておくよ…

君が知ったらきっと店は潰れるから…

僕にとってあの店はなくてはならないから…

ごめんね…




           ー櫻野side endー

記念Tsukimi