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02 >> 届いた贈り物  [1/1]

入浴も朝食も終え、それぞれの自由時間。玲魅の部屋を片付ける手伝いを断られた歌淋はぼんやりとテレビを見ながら、左手にある竹刀を器用に回していた。利き手ではないというのにそのお手並みは鮮やかだ。その利き手は何をしているのかと言えば、テレビのリモコンを手持ち無沙汰に持っているだけである。

『昨夜未明、○○県△市に住む□□さんの家が全焼し、焼け跡からその家に住む父親と見られる男性、母親と見られる女性、子供二人の遺体が見つかりました。警察は家族が全員居間に居た上、窓なども全て閉め切られていた事などの状況や周辺住民の証言から、一家心中との見方を強めています』

そのアナウンサーは淡々と原稿に書かれたニュースを読んでいた。それには亡くなった人達を弔う気持ちが全く籠もっていないように思えて、何だか腹が立つ。気持ちを込めてはいけないのかもしれないが、それでも嫌だ。
そうしてぼーっと見ている内に次のニュースに切り替わっていた。
報道番組は嫌いではないが、何か辛い物を感じてしまう。
歌淋は竹刀を回す手を止めた。視線を宙に彷徨わせ、そのままベランダに続く窓の外を見やる。人間の起こした事など小さいとでも言わんばかりに、そこに広がるのはどこまでも続く蒼い空だ。

「……心中、か」

馬鹿馬鹿しい、と呟く歌淋の表情には呆れと寂寞が見え隠れしていた。




玲魅は自分の部屋を片付けていた。
服は粗方片付けたが、ぬいぐるみと大切な物がまだ段ボールの中に収められていた。
段ボールの中から化粧ポーチのような物を取り出し、そっとチャックを開ける。中には鏡、目薬、そして青いカラーコンタクトの箱が入っていた。玲魅は鏡を取り出し、顔を映してみる。其処には眼の色の違う自分が映し出されていた。右眼はコバルトブルー、左眼は漆黒。所謂オッドアイ、またの名を虹彩異色症と呼ばれる物だ。

「カラコン、入れなきゃね」

玲魅はふぅと息を吐くと、漆黒の眼に青のカラコンを挿入した。これを挿れるのは何回目だろうか。

「……ははっ、嫌になっちゃうなぁ」

歌淋からの手伝い要請を断ったのは、これが理由である。歌淋は玲魅の心境に敏感に反応する。カラコンを挿れる際の玲魅の表情を歌淋はあまり好かないようで、いつも目を逸らしているのだ。

「さ、片付け片付け!」

玲魅はポーチを机の上に置くと、ぬいぐるみを段ボールの中から出して窓際の棚に並べ始めた。




いつまでぼーっとしていたのだろう。気付けば、報道番組だけでなくドラマの再放送まで終わっていた。時計の針は10時58分を差している。
歌淋はテレビの電源をリモコン操作で切り、その手でリモコンをテーブルの上に置いた。そして竹刀を脇に挟み、回し続けて痺れた左手を揉み解し始めた。

「……玲魅はまだ片付けをしているのか?」

あれから2時間は経っている。もしかしたら朝が早過ぎたから寝てしまっているのかもしれない。

歌淋は玲魅の部屋に向かう為徐に立ち上がった。――直後だった。

ドンッドサッ

「!?」

人が数人一気に落ちてくるような不可解な音に歌淋は咄嗟に竹刀を掴んで振り返った。

「…な、何だ…これは…?」

歌淋は竹刀を構えたまま立ち尽くした。目の前に広がる光景は余りにも現実離れし過ぎていて、どう反応すべきなのか分からない。

何故なら、鎧を着た武将と思われる者達が2人も俯せに転がっていたからである。




玲魅は片付けを終えて地べたに仰向けに寝そべっていた。最早起き上がりたくない程に疲れている。

「あ…今何時かなー?」

玲魅はふと疑問に思い、頭の上にあった携帯電話の時計を見てさあ起きようと思った――刹那

ドサッバキッ

「ふぁあっ!?」

物凄い音とその直後に伸し掛かる体重の重さに、玲魅は気絶しそうになった。
飛び掛けた意識を必死で引き戻し、そして恐る恐るそのモノを見つめる。どうやら人が2人位乗っているようだ。

「あれ、もしかしてこの人達…?」

只今の時刻、10時59分。


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2011/08/07
2017/01/15編集

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