03 >> 色彩豊かな非現実 [3/3]
一瞬でも歌淋を怖いと思った。それが後ろめたくてどう接して良いか分からなくなる。あまり友人と接する事のない玲魅には有りがちな事だ。
しかし今はそんな事を考えている暇はない。目の前の人に現状を説明しなければならないのだ。
「あの、よく聞いて下さい」
「なに?」
佐助の圧力すごいよっ!!それでも負ける訳にはいかない。ここで引き下がったらまた歌淋が傷付いてしまう…!
玲魅は佐助の目を正面から逸らす事なく見つめた。
「私達は貴方を攫っていません」
「まーたそんなこと言って」
「本当です。信じるか信じないかは自由ですが」
玲魅は佐助の言葉を遮ってはっきりと言った。それには流石の佐助も少し驚いたようだ。歌淋は肩で小さく息をしながら睨んでいた。
「そこで1つ、お伺いしたい事があります」
「…何だ?」
「お名前です」
「何で俺様がアンタ等みたいな奴に名乗んなきゃいけないの」
「名乗って頂かないと確信が持てないからです」
何だか腹が立って佐助を睨むように見据えてやる。
歌淋を傷付けたのはお前だろうという怨念を込めて。
「では先に私が名乗ります。私は――」
「ちょっと!さっきの子居るかい!?」
名乗ろうと口を開いた時、ドタドタという音と共に数人が部屋に転がり込んできた。あまりの展開に呆然とそれらを見る。
真っ先に入ってきたのは慶次、そして後に続いて元親、政宗。3人ともが驚いたような複雑な表情をしている。
何だこの王道メンバー。
「え、なにアンタらも……?」
忍と独眼竜は辺りを素早く見て、お互いに主君と従者が揃っていないことを沈黙のうちに確認した。
「ちょっと歌淋、どういう事かな。この子達もしかしてずっと下に居たのかな?」
「すまん……でも玲魅が呼んだから」
歌淋は罰が悪そうに言った。確かにそうだ。もし佐助と同じタイミングで来たのだとすれば、ある意味バッドタイミングで歌淋を呼びつけてしまった事になる。
「……そうだね、ありがとう」
「ちょーっとちょっと、ってアンタ怪我してるじゃないかっ」
礼を言ったと同時に慶次が割り込んできた。空気を読んで欲しい。彼は目敏く(誰でも気付くと思うが)歌淋の傷に気付き、そっと傷口に触れた。
「触るな。これくらい、支障ない」
歌淋は慶次の手を軽く払いのけると立ち上がった。ごぷっと血が傷口から吹き出て、ゆらりと体が揺れた。支障がない筈がない。
玲魅は一刻も早く救急車を呼ぶためにも、一つ息を吐き、さわりの部分だけ伝えておく事にした。
「……この際だからこの場で先に言ってしまいますが、ここは戦乱の世ではありませんよ」
空気が止まった。時計の秒針の動く音がはっきりと聞こえる。
「何言ってんの?」
その沈黙を破ったのは佐助の殺意の籠もった、それでいて呆れた声だ。玲魅は佐助を一瞥する。
「詳しく説明致しますからまず下へ行きましょう。彼等からも何か話があるようですし」
玲魅は下から上がってきた3人を見遣り、歌淋を心配気に一瞥した。
「歌淋の傷の手当てもしたいですからね」
玲魅は武将達を見回した。異論があろうとも認めはしない、という意思を放ちながら。
武将達もそれを受け取ったのか、特に異論はなく部屋を出て階段を下り始めた。
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2011/08/24
2017/01/15編集