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05 >> 私は元気です。  [3/4]

 


「はい?って、あ、あぁアネキ!な、何でしょうか!?」
「!あ、あなた…さっき、元親さんが呼んでるって教えてくれてた人ですよね?」
「は、はい…」



、ていうか、噛みすぎでしょう…私そんなに怖い?確かに私この人睨んじゃったけど、ただの小娘に睨まれただけでしょ?
っ〜!じゃないよ!そういう事思っちゃダメだって!睨んじゃってごめんなさいって言うチャンスじゃん!
さあ謝れ私!



「あの、さっきはありがとうございました。それと、私ちょっと人見知りの傾向があって…不安も重なってて、睨んじゃってすいませんでした…」
「い、いや、あの、その!べ、別に俺怒ってるとか、そんなのないですから!謝らないでください!頭上げて下さい、アネキ!」
「そ、そうですか?でもすいませんでした。と、それとアネキって呼ぶのはちょっとやめて欲しいんですが…」
「え?でもアニキと上座に…」
「元親さんが気を遣ってくださってるんですよ、多分。私、ほら。人見知りなので…」
「あぁ…」



なるほど、と言うように納得した目の前の男性。
そう言えば、私の名前は一応皆さんに伝えられたけど、私は元親さん以外の人の名前を誰も知らない。
けど、今ここでこの人の名前をまず訊ねたらそれが要件だと思われそうだから、質問を終えてからにしよう。そうしよう。
ぎゃいぎゃいとそろそろ騒がしくなってきた中、ちゃんと声が届くように少し大きめに声を出す。
元親さんはまだ戻ってこなさそうだ。



「あの!今、日の本で大きい勢力を三つ挙げて下さい!」
「え?そうですねえ…豊臣と…織田はもう滅んじまったけどまだ残党が大分残ってるし、特に大きいのはその二つで、あとは武田と上杉とかですかね」
「!あ…そ、そうですか…ありがとうございます…」
「かず!お前もこっち来て飲めよ!」
「あっ、すいません、呼ばれたんで俺、行きますね」
「あ、どうぞ!時間取っちゃってすいません」
「いえいえ、おう!今行く!」



なんと。織田が滅んだ後だったとは。
ということは、アニメで言うならちょうど二期か。…しかし…それなら鵺宵は…?ザビー城に居るとして、って…、!
しまった、ザビー城アニメに何の関係性もないどころかザビー自体アニメに出て来てないよ!!
そう言えば鵺宵が文句言ってたしね!迂闊であった…!我としたことが!
え?どうしよう、本当困るんだけど、ちょっとザビー、歴史の表舞台よりアニメの表舞台に出て来てくれなきゃ!
…アニメに出て来てたらきっと鵺宵が凄く破顔するんだろうな…。
どうしよう、鵺宵が信者になってたら…ザビーの掟その三、お前の物は俺の物とか言い出したら…。てかだいたいそれジャイアンだし。



「…………」



上座から降りられないまま、目の前に用意されているお膳に手を付けることも出来ず鵺宵の事ばかり考える。
どうしよう、どうしよう。鵺宵が、…そうじゃない。私が心配してるのは鵺宵じゃない。私自身の心配だ。
私がもし鵺宵に要らないと言われてしまったら?本当に彼女にとって不必要になってしまったら?
私が…私が、彼女の一番じゃなくなってしまったら?

鵺宵の一番だと言う自信があった。でも、私が彼女の本当の一番になれないのも知っている。
彼女の一番は彼女自身の家族なのだ。鵺宵は何も言わないけど、…言ってくれないけど、分かる。
そしてその問題に私は立ち入れない。でも、きっといずれその問題に立ち入ることが許される人が彼女の前に現れる。

……もしかしたら、そうなのかもしれない。
彼女が“心を許せる人間”がこの世界に居るから、彼女は此処に来たのかもしれない。
私がここに飛ばされたのも、彼女から貰ったプラスチックの金メダルを持っているからに違いない。
私がこのプラスチックの金メダルを手放さなければ、彼女はきっと現れた人に素直に本物の一番を渡せないに決まっているからだ。彼女は優しい。



「…なぁんだ、そう言うことか。」



なら、私が心配することは何もない。
彼女は出会うべく人に出会うためここに飛ばされたのだ。
そして、そうならば彼女はきっと傷付かない。昔の傷を抉られることはあっても、それは“治療”のためなのだ。
私があの子にしてきたことはただの甘やかしにすぎないのかもしれない。
彼女がそれ以上の傷つかないよう、あるいはその傷を残したまま乗り越えられるよう、彼女に接してきたのだから。
…こんなことを言うと自己満足だと嘲笑われるだろうか。青臭いと貶されるだろうか。偽善者め、と罵られるだろうか。
“私は、それが彼女のためになると思っていた。それが彼女が自身の傷を治すことに繋がると”



「っごめんね…!…私、間違ってたんだね…!」



でもね、ごめんね、でも大丈夫だから。
もう、“私”から、解放してあげるから。


 

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