11-2:密談当日

翌土曜日。松野家一階居間にて。

「それじゃあ、紹介しますね。一番左が長男おそ松」
「なはは〜、よろしくお願いしまーす!」
「隣が次男カラ松」
「フッ……よろしく」
「こっちが三男チョロ松」
「どうぞよろしくお願いしますー」
「こっちは四男一松」
「……よろしくお願いします」
「その隣が五男十四松」
「ハイハイハーイ!十四松でーす!よろしくお願いしマッスル!」
「一番右が末弟トド松」
「よろしくお願いしまーす」
「以上、松野家の六つ子です。皆、こちら私の会社の先輩の山本さん」
「ほ……本当に同じ顔が六つもある……」
「ご理解いただけました?私はこの子達といるのが楽しいので、しばらく恋人はいりません」
「で……でも松野さんって長女だよね?それなら早く身を固めて、親御さんを安心させてあげた方がいいんじゃない?」
「お言葉ですが山田さん」
「山本です六つ子さん」
「チョロ松です。確かにうちのなまえは長女ですがねー、長女ゆえに恐らく結婚することになれば相手方の家に嫁ぐことになるでしょう。その場合、松野家という血筋の繁栄にはつながらないわけですね。よって、なまえに恋人が出来ることと、両親を安心させることには、何の因果関係もございません」
「はい、やり直してきてー」
「やり直しって何!?」
「一点補足しますと」
「何か別の奴入ってきたんだけど!?」
「一松です。そもそも恋人をつくるのに大事なことは、親を安心させることなんでしょうか?うちのなまえの気持ちが一番大事なんじゃないですか?うちのなまえの気持ちを無視して付き合おうとするような輩には、到底渡せませんなあ」
「フッ、やり直しだ」
「だからやり直しって何だよ!」
「ねー山川さん!」
「だから山本!」
「具体的に、うちのなまえねーさんのどこが好きなんですか!?」
「え……えっと……、仕事に一生懸命だったり、影で凄く頑張ってるのにそれをひけらかさなかったり、誰にでも分け隔てないところ……とか……」
「お言葉ですが山田さん」
「だから山本な?覚える気ねぇだろお前」
「チョロ松です。誰にでも分け隔てないということは、あなたのこともさして眼中にないということです。この時点で脈はありませんよね。身の程を知るべきですよね」
「何で好きなところ答えただけでこんな言われなきゃなんないの!?」
「残念だったねー、やり直してきてー」
「お前はさっきっから何をやり直させようとしてんだよ!」
「ねーねー山内さん」
「山本だっつってんだろ!レパートリー増やしてんじゃねえよ!」
「うちのなまえ姉さんと付き合ったら、具体的に何がしたいの?」
「ん……そうだな、二人で食事に行ったり……」
「そのあとセッ●スしたり?」
「っ二人でいろいろな所へ訪れたり……」
「あーそのあとセッ●スしたり?」
「彼女の生活に寄り添いたいと思っている」
「なるほど、濃厚なセッ●スをご所望だと」
「ん〜すみませんが山本さん」
「いや急に正解すんのかよ」
「一松です。動機がちょっと不純ですねぇ。あなたただセッ●スがしたいだけですよね?そんな方にうちのなまえを渡すわけにはいきませんねえ」
「いや俺一言も言ってねーよ!まわりの野次しか拾ってねぇじゃねえか!」
「悪いな、やり直しだ」
「もうつっこむのめんどくせぇな!松野さん!こんなやつらと一緒にいたら君もおかしくなる!そうか……そういうことだったんだね松野さん!これは君から俺への救難信号……!わかったよ、今からでも遅くない!こんなやつらがいる家からさっさと出るんだ!」
「あれ〜、いけないなあ、審査員に対してそんな態度。はい1ポイント減点ね」
「審査員だったの!?弟じゃなくて!?」
「フッ、ブラザー兼ジャッジメンだ……マイナス1ポイーント」
「いや今のは何で引かれた!?」
「山本さん」
「ま、松野さん……」
「私は家族が大好きです。その最愛の家族を侮辱する方とはお付き合いできません。お引き取りください」
「っ……!くそ!なんだよこれ!お前みたいなどんくさい女、一生結婚できねぇよ!」
「あああ???てめー今なんつったクラァ!!」
「ぶっ殺されてぇのか?ああ!?」
「ヒッ、ヒィッ……!」
「あーあーついに本音でちゃったね〜」
「あはは〜どうする〜?殺す〜?」
「ああ、いいぞ十四松」
「松野家の敷居を跨いだのが運の尽きだ……覚悟しろよ」
「す、すみませんでしたあああああ!!」
ドタドタドタ!ガラガラガラッバンッ
「……ぷっ」
「「「「「「ぷっ」」」」」」
「あっはっは!もう皆やりすぎだよ〜!」
「あー、めっちゃびびってたなー」
「ああ、傑作だな」
「つーかまじ審査員ってなんだよ」
「なんだよほんと」
「あー面白かったー」
「もー笑いこらえるの大変だったよ〜!」
「ははは……はー……でもおかげでもう大丈夫かな!皆、本当にありがとう!今夜はお姉ちゃんの奢りだから、好きなだけ食べてね!」
「「「「「「あざーす!」」」」」」