05:思い出話

「カラ松、ありがとうねえ。量が多いから助かるよ」
「フッ……気にするなシスター。これくらい兄として当然の勤め」
「いや兄私。あ間違った姉だ私」

そう……それはサンシャイン……がふりそそぐホリデー。マイシスター、なまえから懇願された俺は、快くそのミッションへの同行を承諾したというわけだ……。ああ、妹の願いを聞き入れる優しい……俺!まさに、兄の鑑というものだ!ハハァ!

「カラ松ってさ、やっぱり根っこは変わんないよね」
「ンン〜?」
「穏やかで優しいカラ松!懐かしいな〜。ねえ覚えてる?高校まですっごい気弱でさ、あの頃は私のこと姉さんって呼んでくれたよね。可愛かったなあ、あの時のカラ松」
「なまえ」
「ん?」
「なまえは以前の俺の方がいいか?」

確かに今、俺はなまえのことを姉さんとは呼ばない。なまえの兄として振る舞っている。これはなまえをばかにしているとかではなく、守ってやりたいからだ。昔からなまえは強がりだから、俺たちに頼ってくれたことがほとんどない。兄として振る舞えば、俺に甘えてくれるんじゃないかと……そう、思っていたのだが……。何か裏目に出てしまったのだろうか?俺はただなまえ姉さんの力になりたいだけなんだが、それは間違っていたのだろうか?もしなまえを不快にさせてしまったのなら……
俺の三歩先を歩いていたなまえがこちらを振り返った。瞳が揺れているように見えた。

「あっ……ごめん!ちがう、そうじゃなくて……あの頃は可愛くって、今はさ、ほら、かっこよくなっちゃったじゃない。そりゃ、姉さんって呼んでくれたら嬉しいけどさ。今も昔もカラ松はとっても優しくていい子だと思ってる。姉さんはどっちのカラ松もリスペクトしてるよ!」

ああ……よかった。

「フッ……そうだろうとも!俺はかっこいい……!兄弟の中で一番かっこいい!そうかやはり姉さんにも分かってしまうか!はっはっは!」
「え」
「ん?……あ」

ミステイク……!ああやはりなまえ一人の前ではつい気が緩んでしまう……!心臓が苦しくなるからそんな嬉しそうな顔しないでくれなまえ……!

「……カラ松……!」
「い、今のは忘れてくれないか……」
「やだ!」
「なまえ!」
「ふふ、姉さん。姉さんだって〜ふふふ。まだそう思ってくれてたんだね。嬉しいな」
「っ……!はあ…… もう言わない」
「えー!なんで!もっと言ってよ〜!お姉ちゃんいつでも待ってるからね、カラ松!」

なまえに頼られる男になるためには……まだまだ己を高める必要がありそうだ……。