06:意地悪

「うぅわぁああ……!あぁあ……あああ……」
「ほーらくるぞーくるぞー」
「あっわあああああ」
「なっはっはっは!」

なまえが急にトランプしようなんて言い出すから負けた方が勝った方の言うこと聞くってルールにして見事俺大勝利!まあね!当然っちゃー当然だよね!だって俺長男だし!カリスマだし!負ける訳ねーよなあ!
そんで今はなまえの苦手なホラー映画鑑賞中〜。しかも電気消してカーテンもしめて!やりすぎ?いやいや、むしろこのぐらいにしてあげた俺偉いぐらいっしょ?だってその気になればキスしてとかおっぱい見せてとかゲスなこと言えたわけじゃん。でも俺しなかったじゃん。偉くないまじで。超偉いよ。本当はゲスいこと注文してやろうってこの機会に便乗してやろうって思ったのにさ。何か負けた瞬間のあいつの顔見たらそんな気なくしちゃったんだよね。ほんとずりぃよ。あんな怯えた顔されたら強く出れないじゃん。

「ひっ、ひあ……うあ……」

だからさ。これぐらいは多目に見てくれよな。

「ばあっ」
「きゃあああああ!!!」
「あっはっはっは!びびってやんのー」
「……」
「はー、どした?もうギブ?まさか松野家の長女様が途中リタイアなんてするわけねーよなぁ?」

当然でしょ!い、今のはあれ、ちょっとびっくりしただけ!びびってはない!

……と、返ってくるかと思いきや、返事がない。

「おーい、なまえちゃーん?なーに無視して……」

その先は言えなかった。目にいっぱい涙をためたまま硬直してるなまえがいたから。俺はというと、気づいたらテレビを消してまつりを抱き締めていた。部屋ん中真っ暗で、何も見えねーけど。腕んとこがじわじわ濡れた。やばい、やばい。

「ごめん、なまえ……やりすぎた」
「っ……ふ、あああ、おそ松のばかあぁああ」
「ごめん、ほんと、そんなまじのやつだと思わなかった」
「こわ、怖かったああ……うあああ……っ」
「わるい、兄ちゃんが悪かった、ごめんな」
「兄ちゃんは私だばかあああ」
「いや兄ちゃんではないだろ」
「うっ、うっ……今日一緒寝てよ、ばか……」
「はー、わぁったよ……」

そのあと、ホラー映画流しっぱだったテレビを運悪く点けちゃったトド松からめちゃくちゃ怒られた。