仕事から帰ると妻が苦しんでいたアオキさんの話

アオキと二人並んで寝ていたベッドの隣はもう体温が残っておらず、彼が起床してからだいぶ時間が経っていることを物語る。今日は休日だと聞いていたはずなのに。

ナマエが寝間着のままリビングへ向かうと、アオキはすでにいつものスーツを着ていた。眠そうな表情のまま、起きてきたナマエにはすぐ気づいた。

「おはようございます。すみません、ナマエさんに謝らなければならないことが……」

まごまごと口ごもるアオキの様子を見て、きっとリーグからの緊急呼び出しだとか、やむを得ない理由なのははっきりした。それを謝ってほしいわけではなく、少しアオキにいじわるを言ってみたくなったのだ。

「あーあ、せっかく今日は二人でゆっくり過ごせると思ったんだけどなあ」

「……すみません、この埋め合わせは必ず」

「アオキさん、行かないでほしいです」

「それは、ちょっと……。帰ってきたらかまってあげますから……」

ナマエのあまえる攻撃は、出勤前のアオキには効かなかった。普段ならナマエにはとことん甘いアオキである為、仕事という建前を持ち出されても、多少冷たくあしらわれても、ナマエは動じなかった。玄関先までアオキのあとをついていく。アオキがスーツと同じ色で揃えられた革靴に足を入れ、癖のようにつま先をトントンと打ちつける。

「帰り、何時になる?」

「……なるべく早く終わらせます」

面倒くさい女だと思われただろうか。いつもなら快くいってらっしゃいの言葉をかけて送り出すのに、今日に限ってはそうではない。アオキはナマエの頭を、手持ちポケモンを撫でるかのごとく優しい手つきで撫でた。わずかについたナマエの寝癖にすら愛おしさを感じての行いだった。





さて、夫であるアオキが行ってしまった。仕方なく一人で朝食を済ませて、薄手の部屋着に着替える。どこかへ出かける用事も無し、夫の帰りを待つだけなら掃除でもしよう。普段から汚さない工夫をしているのか、アオキの部屋は整頓されている。寝室とは別に設けられたその部屋は、どこか彼のにおいがして思わず一人でにやけてしまう。窓を開けて外の空気と入れ替えると、すぐに彼のにおいは飛んでいった。






いつのまにかナマエは寝室で一人遊びに耽っていた。掃除が終わると手持ち無沙汰になり、昼寝でもしようとベッドへごろごろと寝転がる。特に何も考えずにスマホでネットサーフィンをしていたのだが、今朝がた出かけていった夫のことを思うと、だんだんと人恋しくなってきた。ちょっとだけ、と思いつつ不健全な動画を探し、以前アオキと一緒にネットで購入したピンクのローターをベッドの上に転がして自分を慰めることにした。





画面の中の女優がされているのと同じように、ぴんぴんと乳首を弾いてみる。二本の指で摘まんでこりこりすると、すぐにえっちな声が出てしまう。

「っぁ、あおきさん……ふぁ、も、もっとぉ……」

目の前にアオキがいて、彼がいつもナマエをいじめるときのように思い浮かべる。

ここですか。ナマエさんは相変わらず乳首弱いですね。こんなに立たせて……。

きっと低い声でこう言うんだろうなあとふわふわ妄想しながら手を止めない。もう下はぐしょぐしょで、早くアオキさんのを挿れてほしいし、それで何度も何度もえぐってほしい。そんなことを考えながら胸の蕾をかりかり擦っていると、寝室の扉が開いた。そこにはナマエの下品な妄想の餌食になっているアオキが立っていた。

「……ただいま帰りました」

「ぁ、え、アオキさ、……!? えっと、お、おかえりなさい……」

ど、どうしよう! 見られた! ひとりでえっちなことしているのを!

しかも近くには大人のおもちゃまで転がっているし、いくらナマエがそういうことにとても興味あるとは言え、夫にオナニーしている現場を見られるのにはまだ抵抗があり、なにより恥ずかしい。それなら二人でしているほうが羞恥心は少ない。目の前に放り出されたナマエのスマホロトムには、依然として何も纏わない女優があんあん乱れている。他の女の喘ぎ声を聞かないで、アオキさん……。辛抱たまらずナマエはそっとスマホの電源を落とした。

「……使っていたんですか」

「え?」

ベッドに転がっていたまだ新品のおもちゃを右手に取ると、アオキはジャケットを椅子の背もたれにかけると、ネクタイを緩めた。ああ、今日もかっこいい、相変わらずその手がえっちです。そんなナマエの心の声が漏れたのか、アオキは確かに口角を少しだけ上げて怪しく笑った。

「これ、使いたいんですよね」







「あぁっ! だ、だめぇ、あっ、ん、ぁあ、すぐ、いく、いっちゃうからぁ! ぁっ、あぅ、ぁ、あおき、さ……!」

案の定、ナマエはアオキにめちゃくちゃにされている。十分に濡れそぼった膣はそのままに、ぷっくりと熟れてしまったクリトリスにローターが当てられる。たまに刺激を変えようとぐりぐりされるのが気持ちいい。アオキは空いた左手でナマエの乳首をこりこりと捏ねたり、摘んだり。もう片方の乳首は口に含まれて吸われるばかり。赤ちゃんみたいだな、とかわいらしく思っていると、突然舌で転がされて甘噛みされるので、実際には痺れていないくせにまひ状態みたいにびりびりしてしまう。

「っ、あぁ、アオキさん、ぁ、もう、もう挿れてほしい……」

「まだです」

アオキはこういうとき、ナマエを焦らす傾向がある。彼の口が胸から離れたと思えば、両手でナマエの胸を寄せて先端をふたつ同時に舐めはじめた。

「ふぁ、あぁ! ゃ、あぁ、それ、だめ……あ、ぁっ、アオキさん……!」

すでに弱くなったそこばかりいじめられて、もうほんとにダメになりそうだった。自分でするよりも刺激が強く、目の前がちかちかする。おろそかになっていた右手を、思い出したようにクリトリスへ当てる。もはやナマエの愛液でぬるぬるになってしまったアオキの右手とローター。人ができない振動と動きに、アオキは少しだけ不満を抱いていた。

「ナマエさん……自分が触るよりも感じているような気がしますが……」

だとすると寂しいですね。そう言って彼はいつもと変わらぬ様子で、至って普通。右手は敏感なところから離さない。それどころか、中にローターを入れようとまでしてくる。大きさはかわいらしいものだが、アオキが手にするとどこか普通でなく、おおよそ似合わない。

「あっ、そこは、や、だめ……アオキさんのが、いいっ……」

遠回しにナマエが拒否すると、アオキは彼女の蜜にまみれたローターを敏感なところからしぶしぶ遠ざけた。快感でくったりとしたナマエを横目にサイドテーブルの引き出しを開け、避妊具を取り出す。手早く衣服を取り去って、空気を抜きながら自身にかぶせる。

「ナマエさんの望みどおり、挿れますね」

あえて言葉にする。ただし、ナマエの膣の入り口を何度か擦って、すぐには挿れてやらなかった。すると、ナマエが不満そうにして少しだけ起きあがり、アオキのものを小さな手で上下に扱く。そしてゆっくりとアオキを押し倒すと、濡れている自分の奥へ誘いこんだ。

「いいですよ、ナマエさんの好きに動いて」

辛抱できないナマエが上下する。その動きに合わせて、ぐちゅぐちゅと結合部から卑猥な音が聞こえる。お腹の奥まで届くアオキのそれに、ひどく酔いしれ、もっと、もっと、と欲が出る。その姿を見た彼がふるふると揺れる胸を掴み、指先で頂を摘んだ。

「あぁっ、や、っあ!」

「あ、いま締まりましたね」

「言わなくて、いい、からぁ!」

何度か浮き沈みを繰り返すも、しびれを切らしたアオキはナマエの腰を掴んで下から突き上げた。だんだんと高ぶる劣情に、ひたすら耐える。

「ぁ、だめ、いま、わたしが動いてるのに……! っあ!」

彼女を求めてしばしば溺れる。明けても暮れても彼女を想い、抱く。官能をくすぐられ、歯止めの効かない自身の切なさには、ほとほと困る。どこまで自分を追い込めば気が済むのか。アオキはもはや限界を迎えていた。

「ナマエさん、そろそろ……」

「あっ、あぁ、わたしも、アオキさ、いく、いっちゃう……!」

激しく揺さぶられるとともに、何度も彼の名前を呼ぶ。奥へアオキ自身を押しこむと、果てに何度もぶつかった。そして惜しみなくナマエの中へ注いだ。
アオキは小さくため息を吐きながら避妊具を外したあと、まだぼんやりとしているナマエに口付けた。

「……大丈夫ですか」

シーツの上でまどろんでいたナマエに声をかける。

「平気です……。でも、仕事だったのに、なんで……」

日が沈む前にアオキが帰ってくるとは思わず、一人で慰めていたのに。行為を終えても、カーテンの外はまだ明るい。

「自分の言葉には責任を持たなくては、と思ったまでです。……まあ、帰ってきたらナマエさんの苦しむ声が聞こえたので驚きましたが」

今後、彼女を一人にさせるときは何をしていたのか問い詰めるのも一興だな、とアオキは少しのあいだ下心を隠すことにした。