クリスマスの朝に

 冬の朝特有の、睡眠と覚醒の狭間にあるとろとろとした感覚を楽しみながら、ベッドの中で寝返りを打った。今日は休みだから、少しゆっくりしていたい。
 だがその時、位置を変えた頭の横で、なにかがかさりと音を立てた。
 寝ぼけ眼を擦りながら、音の正体を確かめるべく上体を起こす。と、自分の枕元に、薄い包みがひとつ置いてあることに気がついた。
 あ、とちいさく声を上げ、包みを手に取る。クリスマスの朝、枕元に置いてあるものと言えば、答えはひとつだ。
 視線を自身の眠っていたベッドの隣に向けると、当然のようにそこは空。枕元にプレゼントを置いた犯人は、すでに目覚めているようだった。



「おはよう」

 プレゼントを手にしたまま、ダイニングの扉を開ける。と、帰ってきたのは同じく「おはよう」という低い声。
 一足先にコーヒーを楽しんでいた背の高い彼――八木俊典――は、わたしに向かって微笑んで、「なまえも同じものでいい?」と小さく言った。

「ええ。ありがとう」

 わたしはそう答えて、テーブルに着く。
 コーヒーは俊典が、紅茶はわたしが淹れるというのが、ふたりのちいさなお約束。

 マグにコーヒーを満たして戻ってきた俊典が、自席に座る。椅子を動かす音すらさせずに。その男性的優雅さの典型とも呼ぶべき所作に心の中で感嘆の息をつきつつ、わたしは笑んだ。

「クリスマスプレゼント、ありがとう」
「どういたしまして」

 答えた彼もまた、わたしが昨夜ツリーの下に置いておいた包みを手にして、小さく微笑む。

「私からもお礼を言うよ。なまえ、ありがとう」
「どういたしまして」
「開けてもいいかい?」
「もちろんよ」

 わたしは俊典の淹れてくれた美味しいコーヒーを一口飲んで、彼と同じように、自身の包みに手をかけた。紺色に金の文字が入ったリボンをほどいて包みをひらくとそこから手触りの良い――おそらくはカシミヤであろう――ストールが顔を出した。
 軽くて柔らかいそのストールは、わたしの好きな色。

「素敵」
「気に入ってもらえたならよかった。私のはマフラーだね。暖かい」

 そう言いながら、気の早い俊典がわたしの選んだマフラーを首元に巻きつける。色はすこしくすんだイエローとあたたかなキャメルのバイカラー。シックなようでどこかかわいいその組み合わせは、思った通り、俊典によく似合っていた。

「そのコーヒー飲んだらさ、お互いのプレゼントを身につけて散歩にでも行かないか? 公園の向こうによさそうな洋食屋さんを見つけたんだよ。そこでブランチでもどうだい?」
「いいわね」

 と答えて笑うと、俊典もまた柔らかく笑んだ。

 いつもの休日とそうかわらない、けれどほんの少しだけ特別な、二人で過ごす、そんなクリスマスも悪くない。

2024.12.25
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月とうさぎ