だが、それもあと少し。違法取引の証拠はつかんだ。あとはこれをサーに提出するだけ。
そう彩果が思いかけた瞬間、目前で倉庫の扉が閉ざされた。続けて聞こえた金属音は、施錠のしるし。
しまったと思う間もなく、背後から黒い液体を浴びせかけられた。慌てて振り返った先にいたのは、吸盤のついた白い足がいくつも生えた、大柄な男。
生臭く粘度の強い液体は、壁の色と同化していたはずの彩果の肩から膝にかけてを、とたんに浮かびあがらせた。
彩果は戦慄した。続いてつま先から頭頂部までを駆け抜けたのは、例えようもない恐怖だった。
己の中に生じた恐怖を押し隠し、もう一度周囲を見回す。敵の数は二十人ほど。
多勢に無勢だ。しかも自分の個性は戦闘に特化したものではない。己の姿を周囲に同化させ、姿を見えなくするだけのものだ。戦闘訓練は積んでいるから五人程度ならなんとかなるかもしれないが、戦闘に特化した個性の持ち主が集まる武闘派の、しかも集団を相手にするとなると、かなり厳しい戦いになる。
今のように個性を封じられてしまえば、なおさらだった。
ヒーローもののアニメなどでは、最強系のヒロインが一対多勢で勝利を収めたりもするが、そんなものはファンタジー。
戦闘の優劣を決定するのは数だ。それを覆せるのは、戦闘に特化した強個性の持ち主くらいのもの。そう、たとえば、オールマイトのような。
その名を思い浮かべた瞬間、彩果の脳裏で彼の声が響いた。
――いいか、ピンチの時ほど笑うんだ。笑えば少し気持ちが落ち着く。的確な判断は、心が粟立っていてはくだせない。危機的状況に陥った時こそ、冷静になれ。
そうだ笑え、と彩果はむりやりに己の口角をひきあげた。それが、自分の敬愛してやまないヒーローの、教え。
笑え、笑え、笑え。
そうして彩果は個性を解き、姿を敵の前にさらけ出した。例え一部であろうとも、スミをかけられ姿が見えるようになってしまった今、個性を使い続けることに意味はない。逆に個性を解除することには、実は少々意味がある。
彩果が個性を解きなから笑ったことで、いっしゅん、敵がひるんだように見えた。
多勢に無勢のこの状況で笑えるものなど、そうはいない。なにか策があるのかと勘ぐるのも無理はなかったし、それもまた、彩果の計算のひとつでもある。
彩果は笑みながら、自らが会得している格闘術の構えをとった。左手を前方に、右手は腰部に。そのまま重心を臍下丹田に置いて、軽く腰を落とす。
本来であれば右手は胸の手前に置くのが基本姿勢だが、彩果にはひそかな目的があった。
右の掌が触れる位置に、それはある。
ヒーロースーツの内側に作られた隠しポケット。その中身はGPS内蔵の超小型端末だ。彩果は敵に気づかれぬよう最新の注意を払いつつ、掌底でスイッチを押した。
これだけでいい。これだけで、端末は事務所のコンピューターに繋がり、こちら側の音声が共有される。もちろん、音声は自動的に録音される。
いざというときいつでも救援が呼べるようにと、事務所から支給されたものだった。
スーツの内側にあるため、今のように何らかの液体を浴びせられるようなことがあったとしても、外側からは見えないしくみだ。
これで、救援は来る。
東京からここまでは一時間、あるいは、もっとかかるだろうか。それまでの辛抱だ。
「なかなかいい女じゃねぇか」
野卑な言葉をかけられて、ぞっとした。
品定めするように彩果を見ている男たちの目に浮かんでいるものは、ヒーローを前にした敵のものではない。それは被食者に対する、捕食者の目。
「上玉だな」
「アジトに戻ってから好きなだけ楽しめ。今はそいつを確保して、撤収だ」
リーダーらしき人物の言葉と共にこちらに向かって伸ばされた腕を、左腕で円を描くように彩果は弾いた。たいていにおいて、人はバランスを崩すと、その原因になった方の足にいったん重心を移すものだ。右に倒れそうなら右足側面に、前方であればつま先に。
思った通り、彩果に手を伸ばした男は、右側に体重を移動させた。その瞬間を狙って、彩果は相手の左足を払った。当然の如く、相手はそのまま床に転がる。倒れたところに、手刀をたたき込んだ。
相手の勢いと体重を逆に利用し、投げる。これは彩果が長年親しんできた流派の、基本的な技のひとつだ。
似たような技は、格闘術を嗜んだものなら大抵身につけている、達人になると、相手の手首を捻るだけで敵の重心移動を自在に操ることすらできるといわれる。
次に襲いかかってきた男は、そう体格差のない相手だった。彩果は男の攻撃を軽く受け流し、みぞおちに一撃。
膝をついた相手には目もくれず、同時に横から飛び出てきた刃物をサバいた。指先が刃物になる個性の男だった。
もう一度顔に向かって伸びてきた刃物に対し、彩果は個性を発動させた。
彩果の個性が周囲の色に擬態するものだとわかっていても、一度姿を見せた相手がまた消えるとは思っていなかったのだろう。スミがかかっていない首から上が消えただけであったが、効果はあった。
刃物の男が、驚いたように目を瞬かせる。もちろん、その一瞬を彩果が見逃すはずもない。顎にハイキックをお見舞いすると、刃物の男が崩れ落ちた。
こんな抵抗が長く続かないことも知っている。それどころか、ますます相手を怒らせるだけだろう。
それでも、無抵抗で捕まるわけにはいかなかった。救援が来るまで、少しでも相手を疲弊させておきたい。少しでも時間を稼ぎたい。
続けて五人を倒し、彩果は心の中で悪態をついた。相手はまだまだ数が多い。しかも、打撃が浅かったのだろう、視界の端で最初に倒したはずの大柄な男が立ち上がるようすが見えた。
しかし、絶望する時間は、今はまだない。
次に彩果の前に立ちはだかった男は、身体から強い臭気を放っていた。そういう個性なのだろう。顔をゆがませながらいなしたところで、後ろから腕を捕まれた。
慌てて振り返ったところに立っていたのは、豚の顔をした男。
この男か、と、彩果は思った。潜入に気づかれたのはこの個性があってこそ。豚の嗅覚は犬と同じくらい、あるいはより優れていると言われる。
警察から事前に渡されていた情報の中に、この男のデータはなかった。嗅覚にすぐれた個性の主がいるとも聞かされていない。けれど、うかつだったと今ならわかる。
腕を捕まれた時の対処法はいくつかある。捕まれた側の手首を立てつつ反転し、空いている側の手で相手の肘を強く押すのがその一つだ。
だが、このとき相手の男は、彩果が立てようとした手首を、逆方向にひねった。
「……っ!」
痛みに思わず声が漏れた。
豚の顔をした男は、個性も使わず彩果の動きを封じた。つまりは、かなりの手練れ。
人間は関節を攻められると存外脆い。身体が大きくても、筋力があろうとそれは同じだ。だからこそ彩果が習得していたような武術が発展したのだが、実力が拮抗する者同士が対戦した場合、やはり軍配は力の強いほう、身体の大きい方、体力のあるほうにあがる。こればかりはどうしようもない。
手首をひねられた瞬間、相手の方がうわてだと、彩果は瞬時に気がついた。
これだけの実力があるのなら、もっと簡単に、そしてもっと早く彩果をとらえることができたはずだ。
だが、豚の個性を持った男はそれをしなかった。なぜか。答えはひとつ。
この男は心身共に彩果をなぶるつもりだからだ。
対戦し身体を痛めつけ、その後ゆっくりと蹂躙し絶望させ、心を折る。
その陰湿さに、ぞっとした。
「少しはやるようだが、これまでだな。お嬢ちゃん」
同時に腹部にたたき込まれた、男の拳。崩れそうになったところを、髪をつかまれ、上を向かされた。続いて頬に強い衝撃。
反射的に、男をにらんだ。
すると男は、満足そうに両の口角をゆっくりとあげた。
「さすがヒーロー。気が強いことだ」
男が空いている手で、彩果の顎をつかんだ。獣の顔が近づいてくる。臭気の個性を持った先ほどの男より、目前の男の呼気のほうがよほど臭うような気さえした。
絶対に屈してなどやるものか。
たとえ何をされようとも、誇りだけは失うまい。
そう彩果が覚悟を決めた瞬間、背後から響いた破壊音。
上がる砂煙に少し遅れて、壊れた扉がコンクリートの大地にたたきつけられる音がした。
倉庫の扉をシャッターごと吹き飛ばし砂塵の中から現れたのは、彩果の敬愛してやまない、金髪碧眼の偉丈夫だ。
だが彼は、常とは違い、お決まりの台詞も、高らかな笑い声も発しなかった。
「オールマイト!」
彩果は歓喜を込めてその名を呼び、それに相対していた集団は、恐怖を込めてその名を叫んだ。
呼ぶ声に応じるように、倉庫内の空気がびりびりと震える。
その刹那、場にいた全員が、凍りついたように動きを止めた。相棒であるはずの、彩果ですらも。
空気が、いや、倉庫そのものが震えているのは、吹きつける潮風のせいだけでは、決してなかった。
それはオールマイトから生じる、威圧感によるものだ。大柄な肉体から放たれているのは、圧倒的な強者のみが持つ、覇気、あるいは闘気とよべるもの。
それを前にしたとき、全員が心の底からの恐怖を覚えた。
身体の奥底、いや、DNAの奥深くに存在する太古の記憶が、目前の相手が危険であることを告げている。
触れてはいけない、目を合わせてはいけない。天災にも等しい破壊力を有する、あれはきっと、人ならぬ者。
オールマイト……全能の名を持つ、最強のヒーロー。
新人であるが、彩果はオールマイトの相棒の一人だ。同じ現場に立ったことも何度かある。けれどここまでの圧を彼から感じたのは、初めてのことだった。
普段のオールマイトは、どこまでもやわらかく人当たりがいい。圧という一点においては、直属の上司であるサーの方が強いと思っていたくらいだ。
けれど、今は違う。
これが「本気」のオールマイト。
ただそこにいるだけで、敵から戦意を喪失させるほどの存在。
「イーリス」
「はい」
答えた瞬間、彩果の手をひねりあげていた男が吹っ飛んだ。体制を崩して倒れかけたところを、太く逞しい腕に支えられた。
慌てて視線をあげ、驚いた。倉庫内にいた敵の全てが、倒れ伏していたからだ。
早すぎて、視界にとらえることすらできなかった。オールマイトは敵を屠りながら、倉庫の入り口からここまでの距離を、瞬時に移動してきたのだ。
「もう、大丈夫だ」
いつものように白い歯を見せて、オールマイトが微笑む。先ほどまでとは別人のように。
はい、と小さく答えて、彩果は顔を伏せた。
ナンバーワンヒーローによって、彩果は救出され、敵はすべて、警察の手に引き渡された。
***
窓の向こうに広がる、東京の街。
高層階から眺めるバーミリオンに染まる夕焼け空と摩天楼は、いつものように美しかった。
上京したとき、多くの人々が暮らすこの街を守っていくのだと、心に決めたはずだった。
それがどうだ。
潜入を見破られ、救出されてしまうとは。
守るどころか、守られてしまった己の現状を思うと、彩果は情けない気持ちでいっぱいになる。
あの場合、ああするしかなかった。それはわかっている。けれど事前にもう少し策を講じておくべきだった。それが大きな反省点だ。
それに、と、彩果は口を大きくへの字にまげた。
あのひとと自分の間には、どれほどの距離があるのだろう。それほどに、オールマイトは圧倒的だった。
同じ事務所で働けるようになれば、少しでもオールマイトに近づける。もちろん、ヒーローとして。
かつてはそんなふうに思っていた。けれど、違う。
ヒーローとしてのオールマイトを知れば知るほど、その距離は広がる。
以前、サーが「君にしかできないことがある」と言ってくれたが、今はとても、そんなふうには思えなかった。
「元気がないね」
いきなり降ってきた声に、慌てて頭上を振り仰いだ。
視線の先で心配そうに眉を下げているのは、今のいままで思いを馳せていたスーパーヒーロー。
いつの間に……と思ったが、気配を殺して近寄ることなどこの人にとっては造作もないことだと、すぐに気づいた。
「オールマイト」
「こないだのこと、まだ気にしているのかい?」
「そんなことは……」
ありません、と答えようとして、口をつぐんだ。ごまかしの言葉は、きっとこのひとには通用しない。
「……驕っていたんだと思います」
オールマイトの事務所につとめ、半年が経ち、任務にもなれ、単独捜査に慣れてきた。自分の中に、小さな油断があった。
「生意気な話ですが、すっかり一人前になったつもりでいました」
敵のリストに漏れがあったのは、警察の手落ちだ。だが完璧なリストなど存在しない。そもそも、そんなものが手に入れられるなら、彩果が潜入するまでもない。
であれば、自らの個性が通用しない敵がいることを、彩果はあらかじめ想定し対策を講じておくべきだった。
身を隠し敵地に単身乗り込む己の任務の特性からして、ああした事態は推測されてしかるべきだ。それを見越した上司たちからは、ヒーロー協会から支給されている物とは別に、ボタンを押すだけで事務所とつながる端末を用意してもらっている。
だからといって、はじめから救援を期待して任務にあたるなど、ヒーローとしては失格だ。
「せめて、逃げ道をもう一つ確保しておくべきでした」
「うん。では、次に気をつければいいんじゃないかな」
「はい……」
「あのね、イーリス。私とナイトアイが、何のために君にあの端末を持たせたと思っているか、考えてみて」
「……いざというとき、救援を呼べるようにです」
「そうだね。私たちが必要だと思っているから、用意しているんだよ」
「それは、わたしが一人前ではないから、でしょうか?」
「それは違う」
低いが、柔らかくそして優しい声だった。
「いいかい。人には向き不向きがある。私は百人に囲まれても相手を倒すことができる。ナイトアイは触れた相手の未来を予知し、動きや行動を予測してそれに対応することができる」
「はい」
「君には、なにができる?」
「……姿を消して敵陣内に忍び込み、情報を集めることができます」
「そうだ。私とナイトアイが君に求めているのはそれだ。私の隣に立って戦うことじゃない」
そうかもしれない、と彩果は思った。
オールマイトは不動のトップ。
彼と対等に戦える者など、誰もいない。現役ヒーローの中で、オールマイトと並び立ち戦える者がいるとしたら、それはおそらく、現ナンバーツーである、エンデヴァーただひとりだろう。
相棒であるサーですら、メインの戦闘はオールマイトにまかせ、自身は他のフォローにあたる。アメリカ時代の相棒、デヴィット・シールド博士に至っては、ヒーローではなく科学者だった。
「我々の助けなく多勢を倒せるヒーローが欲しいなら、そういう者を採用している。だが、私には戦闘に特化したタイプの相棒は必要ない」
きっぱりとした声だった。
「私が必要としているのは、私にできないことをしてくれる相棒だ。たとえば、全く無駄のない作戦を立案できる者」
「はい」
「作戦立案には綿密な調査が必要とされる。それに必要な個性を持っているのが、イーリス、君だ」
「……はい」
「いいかい? 私たちには君が必要なんだよ」
涙が出そうだった。けれど、泣いてはいけないと思った。
「今回、君は運悪く敵に見つかってしまった。けれど、あそこで救援を呼んでくれたのは正解だった。でなければ、私たちは、君という潜入捜査に長けた相棒を失っていたことだろう」
思い出してぞっとした。たしかにそうだろう。
敵に捕縛されたヒーローは、たいてい無残な姿で発見される。
「だからイーリス、そろそろ、君には前を向いてもらわねば困る」
「はい」
と、そこまで一息につげ、オールマイトはコーヒーメーカーに向かい、ボタンを押した。
モカ、深煎り、ブラック。
「君は何にする?」
「あ、ありがとうございます。自分で……」
「なに、このままボタンを押すだけのことだよ。なにがいいんだい?」
「恐縮です。では、マンデリンをミルク増量でお願いします」
「デカフェ?」
「いえ、普通ので大丈夫です」
「OK」
やがて抽出完了のブザーがなり、はい、と、オールマイトからコーヒーを手渡された。
「ところでさ、イーリス」
「はい」
「24日の夜、予定はあいているかな?」
驚きのあまり、手に取ったコーヒーをひっくり返してしまうところだった。かろうじて己の動きを律し、軽く息を吸い込む。
彩果の勤務時間はフレックスだ。任務が夜であったり早朝であったりするからだ。特に任務のないときは、サーと交代で街のパトロールにあたる。
24日は今のところ特別な任務は入っていない。退勤も夕方の予定だ。もちろん、雇用主であるオールマイトは、それを知っているはずだった。
「あいています」
「恋人やお友達と会う用事も?」
「恋人はいませんし、友人と会う予定も今のところはありません!」
「それはよかった。いや、もし彼氏がいたら申し訳ないと思ってさ」
12月24日はクリスマスイブ。本来の意味をはき違えていると笑われそうだが、我が国では、恋人たちのイベント日でもある。
この流れは、期待してもいいのだろうか。
オールマイトは屈託なく笑みながら、続けた。
「新たな任務が入ったんだが、受けてもらえるかい?」
微笑みながら告げられたのは、デートではなく任務の誘い。
まあ、そんなところだろう。現実はそう甘くはないということだ。
内心がっくりしながらも、彩果はまた、はいといらえた。
「残業手当ははずむし、ドレス代は経費で落とせるからね」
「ドレス?」
「そう。任務はパーティーの要人警護だ。私はメインゲストとして出席することになっているが、それとは別に、客に紛れて警護にあたるヒーローが欲しいそうだ。幸い、君は一般には顔が割れていない。ナイトアイのパートナーとして、パーティーに参加してもらいたい」
「……承知しました」
「本当は、私のパートナーになって欲しいくらいなんだけどね」
オールマイトはまた屈託なく笑う。リップサービスだとわかっていても、そんなふうに微笑まれたら、やっぱり嬉しい。
この人は罪作りだ。
こうした軽口がどれだけ言われた側を幸福にするか、彼は知らない。
「どうかしたかい?」
「いいえ」
と、小さく笑って彩果は答え、そして続けた。
「パーティーへの潜入は初めてなので、少し緊張しますね」
「潜入といっても一人じゃない。パートナー役のナイトアイが隣にいてくれる。彼に教えてもらいながら、いろいろ覚えたらいい」
「はい」
「それじゃ、私はもう一つ現場があるから」
空になった紙カップをトラッシュボックスに放り込み、オールマイトは彼専用の専用の出入り口――引き違い窓――のある執務室へと向かった。慌ただしく去っていく大きな後ろ姿を見送りながら、もしかしたら……と、彩果は思う。
もしかしたらオールマイトは、自分を慰めるために来てくれたのだろうか。
このところ、自分はひどく落ち込んでいた。それを隠し通す余裕もなかった。
「また、助けてもらっちゃった」
前回はこの身を。そして今回は心を。
手にしていたコーヒーを、一口飲んだ。ミルクがたくさん入った好みの味のコーヒーは、まだ、ほんのり温かかった。
2019.12.19
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