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六花りっかと戯る
▼2022/04/25/04:49



「あ、雪です兄上!」
「随分冷えると思うたら雪とは…」


 暦のうえでは弥生も下旬とならば
 季春だというに…

 縁壱の言葉に窓外を見遣れば
 銀華に変わりし雨粒が

 はらりはらり
 曇天より舞い降りている

 
「春の雪も素敵で御座いますよね?」
「そうか?私は寒いのは苦手だか…ッ!」

  
 言の葉を言い終わらぬ内に
 腕の中に閉じ込められる


「…っ縁壱、いきなり引っ張るでない」
「申し訳御座いません。然れど兄上の仰る
 『寒い』は『抱きしめて』と同義かと」

「むッ…それ、は…」
「そう、で御座いましょう?」
「………」


 まあ、偶には己の気持ちを
 素直に表現してやっても良かろう

 したり顔の縁壱に
 悪巧みする童の如く微笑んで、


「そう、だな…」
「あにうえ?…ッ!」


 キョトンとした顔を
 ぐっと引き寄せ

 鼻のアタマに
 かぷりと噛み付いてやる


「私を暖めて良いのは縁壱だけゆえ…」
「あ…あにうえ…」


 つう、と唇を指でなぞり
 触れるだけの口吸いをひとつ

 さあ、
 このあとは縁壱おまえ次第

 さてさて、どう出る?


「あにうえ…斯様に煽られたらば、貴方が
 泣いても喚いても止まりませんよ?」
「ん…縁壱、さむい…」
「ほんに兄上は縁壱の全てをダメになさる
 罪深くも愛しき御方……」


 額と瞼に幾度も
 啄む如き口づけを落とされる

 私の思惑通り
 瞬時に臨戦態勢?に入った縁壱の姿に

 心の中でひとり悦に入る
 
 とりわけ私は
 情事の前の、此の余裕無き

 縁壱の顔がすきなのだ


 もっと
 私にしか見せぬ表情が見たくて

 縁壱の唇を人差し指で制止し
 甘えた声で囁く

 
「…いっそ春まで暖めてはくれぬか?」
「あにうえっ」


 縁壱の炎の如き瞳が
 大写しになり

 私の世界が
 縁壱一色に染まると
 
 呼吸も、思考も、なにもかもを
 確実に奪ってゆく

 激しくて
 あまい甘い愛撫に酔う

 部屋に散り敷く互いの衣服は
 外に舞う六花のごとし

 先程まで感じていた寒さは
 既に消え

 ただただ熱き縁壱の体温を
 全身で受け止める


「あにうえ、あにうえ…愛しております」
「ん、私も縁壱を愛しているぞ…」


 風が強まったか
 吹雪出した立花を視界の隅に捉えつつ


 「縁壱、もっとお前を寄越せ…」


 腕と脚を蔦の如く絡めながら
 縁壱に縋った










********************
 「春の雪」っていう
 コトノハがそもそも好き (๑´>᎑<)~♡

 暖かさに慣れてしまった身体には
 キツイけれど

 兄上と縁壱サンには

 互いの愛を確認するための装置として
 ぜひ使って頂きたいかと…








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