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嘘つきParadox
▼2022/04/25/04:53



「やはり寒夜には縁壱が居らねば駄目だな」
「縁壱は温石代わりで御座いますか?」

「何か不満でも?」
「否や。兄上を我が腕の中に抱きしめられる
 のであらば、大歓迎で御座います」



 外の寒さなど
 まるで感じられぬ

 私の常春が場處…
 愛しき縁壱の腕の中で

 胸いっぱいに
 太陽よりいちの香りを吸い込みながら

 ぎゅうと
 抱きついていく



「兄上、あにうえ…」
「……ッ、んぅ…より…ち」



 額、頬、唇と順に口付けられ
 最後に縁壱の所有印キスマークを首筋に残される
 


「…ッ、明日は早い故…今宵は此のまま寝か
 せておくれ」
「はい。心得ております」
「ん…済まぬ」


 触れるだけの口付けを
 私からひとつ

 後は
 縁壱の体温と鼓動に誘われ

 ゆるゆると
 心地良き眠りに落ちてゆくのみ……



「兄上」
「……ん、なん…だ?」


 夢現ゆめうつつの境界を彷徨いながら
 かそけき声にて応える


「先刻の御言葉で御座いますが…」
「…うん?」
「兄上は真夏の熱帯夜であれど、縁壱に抱き
 ついていらっしゃいますよね?」



 縁壱の言葉は
 眠りの世界からうつつへと

 私の意識を
 ひと息に呼び戻す



「うっ…そ、れは… お前が冷房の設定温度を 
 低くしすぎる故、寒くてだな…」



 自分でも苦しき言い訳にしか
 聞こえぬ

 弁解の言葉を必死に探し
 反論を試みる



「兄上はほんに愛らしい。素直に縁壱が好き
 だからと仰れば宜しいのに」
「ばっ…ちがっ!」

「違うのですか…」
「違……、わぬ……」

「ふふっ。縁壱も兄上がだいすきで、心より 
 お慕い申し上げておりますよ」
「…分かっておるなら逐一言わせるでない」

「其れでも縁壱は兄上の御口から直に御言葉好きだ
 を賜りたいのです…」
「…縁壱」
「はい」

 

 一瞬の沈黙

 次の言葉を優しく促すが如く
 髪を撫でる縁壱が手

 其のまま
 背中から腰へと滑り

 再びぎゅうと抱き寄せられる


「よりいち……」


 おもてを然と上げ
 
 互いの唇が触れる寸前まで
 伸び上がり
 


「私には縁壱だけだ、愛してる…」



 口吸いキスも付けて
 嘘偽り無き心情きもちを伝える



 羞恥が勝り
 未だ己が心を素直に言えぬ兄を

 どうか
 許しておくれ…


 全てを見通しているのであろう
 赫き瞳を正面に捉へ

 もう一度
 我が心アイシテルを伝えるべく



 そっと唇を重ねた








********************
 素直だけれど
 素直になりきれない兄上は

 超絶御可愛らしい (ノ´∀`*)
 すべてが好きすぎてツライ……








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