LIST TOP>>更新履歴>>


紫陽花に雨の降るごとく
▼2022/07/11/01:12



 恐らくは深夜

 珍しく
 窓を叩く激しい雨風の音で
 
 目を覚ました



「雨…すごいですね…」
「ん…より…ち?」



 どうやら縁壱も

 この雨音に
 眠りを妨げられたらしい



「縁壱もあまりの雨風の音に、目が覚めて
 しまいました」
「ん…久しぶりの豪雨、だな」
「はい」



 今夏は空梅雨
 と言われていたゆえ

 久々の雨音に
 少しだけドキドキする



「久々の雨は嬉しいが、出勤時には止んで
 くれるとありがたいな」
「はい。然れどあまりにひどい降りならば
 縁壱が車で御送りいたしますよ」
「ん、ありがとう」



 己の身体を
 確かと抱きしめている

 縁壱の胸に抱きつきながら
 脚をからめる



「あにうえ…」
「…よりいち」



 優しく抱きしめ返され

 頭を優しく
 撫でられながら

 髪に口づけの雨が降りそそぐのを
 静かに受ける


(あぁ…心地良い)
 


「…紫陽花、この雨で大きく育つと嬉しい
 ですね」
「そう、だな…」



 先週二人で植えた
 紫陽花の花が

 久しぶりの雨に
 喜ぶ姿が見えた気がして

 静かに微笑む

 
 其れから…

 頭を撫でられながら
 ふと蘇ってきた

 こんな
 夜更けの雨音が

 思い出させてくれた
 優しい物語



 遠いとおい昔
 
 直ぐに夏バテし
 体調が優れなかった幼き頃

 寝台ベッドに横たわり
 ぐったりしている私に

 縁壱が
 いつも持ってきてくれた

 思い出の花…紫陽花

 色とりどりの
 その美しさ、姿に

 どれほど
 心身ともに癒されたか…


 そして

 あの頃から変わらぬ
 優しさと愛情を注いでくれる縁壱に

 改めて感謝するとともに
 愛しき想いが溢れ来る



「ふふっ…」
「あにうえ?」


「なんでもない。さぁ、寝よう」
「はい、おやすみなさいませ」
「ん、よりいち…おやすみ」



 触れるだけの口づけを交わし
 縁壱の胸の中に収まる


 

 あめ
 あめ

 アジサイに降り注ぐ
 あめ

 過ぎ去りしあの頃の光景が
 鮮やかに蘇る


 すこしだけ…

 優しく
 聞こえるようになった

 雨音に

 
 今度は
 室内用の

 小さな鉢植えを
 購入しようか?

 そんなことを
 考えながら


 眠りに落ちていった
 



********************
 梅雨のじめじめした
 空気の中で

 鮮やかに咲く紫陽花の姿は
 最高(*´ω`*)









⏮new old⏭


展示室TOP>>綜合案内處