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STAY HERE, NOT ALONE
▼2022/09/03/02:33



(ん…ふわふわ…する)



「兄上、御目覚めで御座いますか?」
「………」
「…より、…いち」
「あぁ、どうぞそのままで」
「ん……」



 起き上がろうとするのを
 そっと制止されてしまったゆえ

 おとなしく
 縁壱の膝に頭を預け

 再び横になる


 私の髪をさらさらと梳きながら
 くすりと笑い

 大層驚きましたよ?
 などと

 頭上から降ってくる
 楽しげな声に
 

 …お前全然驚いてないだろう


 とは思へども
 決して言の葉にはせぬ
 
 しても無駄であろう?
 


「縁壱の洋服を握りしめたまま、洗濯物に
 埋もれておられたゆえ…」
「…ッ、そ…それは」

「兄上が倒れられたと思い、心の臓が止まる
 かと…」
「…んっ」


 ちゅっ、と音をたてて
 唇が重なる


「本日も家事は縁壱に全てお任せ下さい、と
 申し上げましたのに…」
「縁壱には家事を任せ切りゆえ…、洗濯物を
 片付けるくらいは手伝おうと…」
「兄上のお世話を全力で致すのが縁壱の務め 
 もっと縁壱を頼って下さいませ…」
「うん…、すまぬ…」


 縁壱の手伝いを、というのは
 あながち嘘では無かれども

 畳んでいる縁壱の衣類から
 ふいと薫ってきた

 お前の香りに包まれていたら


 …なんだか

 縁壱に抱きしめられて眠るがごとき
 心地良さを感じ

 とても
 穏やかな気持ちになって

 そのまま
 眠りこけていた


 ……なんて真実
 言えるわけもなかろう?



「後は縁壱が致しますゆえ、兄上はどうぞ
 ゆっくりお休みください」
「然れど…」
「また来週からお仕事がお忙しくなられる
 のでしょう?お願いでございます……」
「より……んんんッ……!」



 異論を唱えるどころか
 言の葉を紡ぐことも出来ぬほど

 長く深き口吸いキス
 アタマがくらくらする



「…はっ…ぁ……わかっ、…た……」
「はい。御返事も閨で御返し下さる反応の
 ごとく、素直だと嬉しいのですが…」
「…ッ!!ば……、ばかっ壱!」


「ところで夕食は何に致しましょう」
「え…」
「何か御希望は御座いますか?」
「ん……」



 なにも…
 食べたくないゆえ

 ずっと
 こうしていてほしい…



 というのは
 心の声で

 

 「炊き込みご飯…」
 「かしこまりました」


 わたしの
 大好きな笑顔で

 そんな風に申すから…

 
 それだけで
 胸も腹もいっぱいだ…


 そっと
 目を閉じて

 縁壱の手を握る


「あにうえ?」
「…もう少しだけ、このまま寝かせてくれ/」
「はい、喜んで」


 ぽんぽんと
 頭を撫でられる


「縁壱も御一緒して宜しいですか?」
「…いちいち聞くな」
「はい」


 腰に回された腕に

 両手を
 そっと重ねながら

 二人で
 夢の国へ旅立つ






 その日、

 夕食が
 並ぶことはなく

 翌日まで
 寝倒したことは

 言うまでもない




 然れど
 とても、シアワセだ










********************
 兄上も縁壱さんも
 お互いの洗濯物を(洗う前も洗った後も)

 こそりと(縁壱さんは堂々と?)嗅いで
 いろいろ妄想していたら楽しいなぁと…

 襯衣やインナーとか…(*´д`*)








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