息抜きにコンテストをした。最近はなにかと息が詰まる。バッジ集めは苦ではない。大変なのは、マグマ団だ。なりゆきとはいえ私はマグマ団の事を知ってしまった。知ったからには、なんとしてでも止めなくちゃいけないと思っている。壁際の椅子に座り休憩していれば、いつぞや見かけた薄茶色の帽子と赤いスカーフに鮮やかな水色の髪が特徴の女の子が現れた。
「こんにちは、ホウカちゃん!」
「あら、えっと、コナラちゃんだったわよね?お久しぶり…かしら?」
「うん!コナラであってるよー!うーん?久しぶりっていうほどではないかも?ホウカちゃんは今日もコンテスト出場したの?」
でもステージで会わなかったね?と聞かれ首をかしげる。ステージという事はコナラちゃんも出場していたのだろう。何のコンテストに出場したか聞いてみればこの前のリベンジという事で同じかっこよさに出ていたという。あら…、私、今日はうつくしさの方だったのよね…。残念だわ…。
「あ、それでね、実はホウカちゃんに聞きたいことがあったの!今日居てくれてほんとよかった!」
「聞きたいこと…?」
「最近、マっちゃんとかホムホムから聞く女の子ってホウカちゃんかなぁ?と思って!」
この前、えんとつ山で戦ったんでしょ?と言ってにっこりと笑顔を浮かべたコナラちゃんにゾッとする。マっちゃんから隕石もらったの?と追撃を仕掛けてくるコナラちゃんの目は笑っていなかった。それよりも、隕石って…。その話を持ち出され思わず立ち上がる。
「あなた、どうして…?だって、それはマグマ団とアクア団しか知らないことよ…!?」
「えへへ、この間教えてもらったんだー!それでね、ホウカちゃん。」
「な、なにかしら。」
「どうしてマっちゃんの考えを否定するの?人の考え方ってそれぞれだよね?」
「…それじゃあ、私からも質問なのだけれど。コナラちゃんは、このままマグマ団が超古代ポケモンを目覚めさせて陸が増えることがいい事だと思うの?」
そう問えばわたしが言いたいのはそうじゃないよと静かに首を横に振ったコナラちゃん。陸が増えることは関係ないというの…?じゃあ、どうして…?
「わたしはマっちゃんの考えを否定する権利があるわけじゃないよ。それはホウカちゃんにも言えるよね?」
「…そうかもしれないわね。だから、邪魔をするのをやめろと言うのかしら?」
「んー、ホウカちゃんはちょっと難しく考えすぎじゃないかな?まあ、でもそれが一番かも?…でも、マっちゃんのことと同じように、わたしにホウカちゃんの考えを否定する権利があるわけじゃないからねー。」
「…何が言いたいの?」
コナラちゃんの言いたいことが分からずつい顔をしかめてしまった。コナラちゃんはそんな私を見て怖い顔しないでよと困ったように笑った。ああ、ごめんなさいね。そんなに凶悪な顔だったのかしら…。
「このままだとわたしとホウカちゃんは敵になっちゃうね?」
「…コナラちゃん。」
「なあに?」
「あなたとはお友達でいたかったわ。」
「…ホウカちゃんがマっちゃんの考えを否定するかぎり、きっと無理だよ。」
「そう。…残念だわ。」
私の返事にコナラちゃんは何を思ったのだろうか。彼女は何かを言いたそうに口を開いたが声を発することはなかった。数秒の沈黙の後、敵なら容赦はしないからね、とだけ言ってコナラちゃんはコンテスト会場を後にした。…あの子は、悪い子ではないと思う。とても優しい子なのだろう。マグマ団が陸を増やすことに賛同しているわけでもなければ否定しているわけでもなさそうだ。ただ単に私に好きな人が否定されてたのが嫌なだけだったのかもしれない。そんな子と戦うのは勘弁したいが、マグマ団を追っている限りそれは避けられないのだろう。次に彼女と会うときはいつになるのだろうか。できれば会うのはすべてが解決してから会いたいわ。お友達として、ね。