リブレとホウカ






チャンピオンに就任してからの疲れが一気に来たのか運悪く七夕に具合悪くなっていたホウカさんが七夕をどうしてもやりたいという事で一か月遅れの七夕という名のバーベキューパーティーをやっている。なぜ、一か月も遅いのか。そしてなぜ、俺の家でやっているのだろうか。そして、なんでダイゴさんやらミクリさんやらがいるんだ。ユウキとハルカは誘ったがあの2人を誘ってはない。ミクリさんを誘うのはわかるがあのホウカさんがダイゴさんを誘うとは思わない。…じゃあ、あの人勝手に来たのか?

「…これは、気にしたら負け…?」

「リブレ!ぼさっとしてないでそこにある食材庭に持っていきなさい!お客さん待たせちゃだめよ!」

「はいはい。分かってるよ。ったく、母さんは人使いが荒いぜ…。」


なんですって!?という怒号を聞き流しつつ言われたとおりに食材の入った笊を持ち庭に出る。母さんはイケメンが来たことに興奮した様子だった。あー、めんどくせ…。ため息を吐けば俺の天使であるシュイが足元で首を傾げた。お前はいつも可愛いなぁ…。一瞬の安らぎを感じていればひょいと手元から重さが消えた。原因はダイゴさんが笊を取り上げたからだ。びっくりさせんなよ…。

「リブレ君。ホウカが君を呼んでいたよ。」

「ホウカさんが?うわ、なんだろ…。(面倒な事じゃねーよな…?)」

「これは僕が持っていくから君はホウカのところへ行っておいで?」

俺の返事を聞く前にダイゴさんは颯爽と歩き出した。……俺が戻ってくる間に何か焼けてればいいな、ってそうじゃない。そんなことよりも、ホウカさんの呼び出しだ。ホウカさんの呼び出しにあまりいい思いがないので出来れば行きたくない、が、そうも言っていられないのですぐにホウカさんのところへ向かえばホウカさんは何かを書いていた。

「ホウカさん。」

「あら、リブレ。やっと来たのね?遅かったじゃない。」

「これで遅いってどういうことだよ!?…はぁ…、まぁ、いいっす。ところでわざわざ呼び出しだなんてなんかあったんすか?」

「んー?特に何もないわ。強いて言うなら、暇だったから、とかかしら?」

「暇つぶしかよ!!!」

「ふふっ、嘘よ。流石に暇つぶしで呼び出しなんてしないわ。あなただけ短冊を書いてなかったから書かせようと思って。」

「書かせようって…。やっぱ俺に拒否権はないんすね?」

「あると思ったの?」

「…はぁ。」

はい、ととびっきりの笑顔で短冊とペンを俺に渡してきたホウカさん。普通の人なら可愛いと思うだろうが俺には悪魔にしか見えない。残念すぎる…。さて、何を書こうか。拒否権が欲しいと書きたいところだが書いたら横からかえんほうしゃが飛んできそうなので却下。…なんだろう、泣きたくなってきた。

「あの、ホウカさん。」

「なにかしら?書き終わったの?」

「いや、そうじゃなくて、参考までにホウカさんがなんて書いたのか知りたくてですね…。」

「私?私のは別になんでもいいでしょう?貴方に教える必要はないわ!」

ホウカさんの短冊は何が書いてあるのかを聞けばそう言ってほんのりと頬を染めたホウカさん。ああ、なんとなくわかった。そうか、リア充的なあれか。相手は知らないけど、その願いが叶って少しでも落ち着いてくれればこっちも助かる。頑張れホウカさん!俺応援してるっス!カモン平穏ライフ!!そんなことを考えているとミクリさんがホウカさんを呼んだ。その声に大げさに肩を揺らしもっと顔を赤くしたホウカさん。…ふーん。そっか、ミクリさんかぁ…。

「かっ、勝手に見たら分かってるんでしょうね!!」

「見ませんから早く行ってください。ミクリさん待ってるんじゃないっすか?」

そう促せばホウカさんは急いで笹に短冊を括り付け走って行った。走って大丈夫なのか?つか、この笹どっから持ってきたんだよ…。人ん家の庭に勝手にぶっさしやがって…。

「さーて、どうしようか…。ホウカさんの恋が実りますようにってでも書くか?でもなぁ、別にあの二人なら応援しなくても知らないうちにくっついてそうだしなぁ…。んー…。」

ぶつぶつ大きな独り言を言いながら考える。…よし、これにしよう。願い事を決め短冊に書き笹につるす。うん、これなら無難だろう。そう一人で納得しみんなが集まっているところへ歩き出した。するとガツン!と盛大な音を立て俺の背中に何かがぶつかった。

「いってえええええええ!!!!」

「リブレ!?」

「リブレ君、大丈夫!?」

俺は痛さに悲鳴をあげる。なんだよ、でかい石でも全力投球されたか!?痛さに呻きつつ振り返るとそこには星形の何かがいた。あれ、コイツって…。

「ジラーチ…?」

「リブレ、大丈夫なの、って、え…?」

俺の盛大な悲鳴にみんなが駆けよって来たが俺の心配よりも先にジラーチらしきポケモンに目が行っていた。ハルカとユウキはジラーチを知らないらしく可愛いだの新種だのと言っているが、ホウカさんたちはやっぱり知っているようで唖然とそのポケモンを見つめていた。なんで、こんなところに…?

「お、おい。お前大丈夫か?生きてる…?」

恐る恐る触れば意識を取り戻したのかフラフラと浮かび上がったジラーチ。まじめな性格なのだろうか、大丈夫かと言うように俺の周りを一周飛んだあと何度もぺこぺこと頭をさげる。痛かったが奇跡的になんともないと言えばニコリと嬉しそうにジラーチは笑った。どこから落ちてきたのかは分からないが気を付けて帰れよと言えばジラーチは首を横に振った。…どういうことだ?帰れない理由でもあるのか?首を傾げれば後ろにいたホウカさんがボールを差し出してきた。

「リブレ、ボールあげるから一回投げてみて。」

「捕まえる気っすか?」

「帰ろうとしないなら捕まえて欲しいんじゃないかと思ったの。」

「…自分で投げないんすか?」

「……正直自分で捕まえられるなら捕まえたいところだけれど、きっと私じゃ無理だと思うのよね。」

女の勘だけれど、と苦笑いしたホウカさん。まあ、俺も捕まえられる気はしねぇんだけども。まあ、やってみるか、という事でホウカさんからボールを受け取り緩い動作で投げる。コツンとジラーチに当たり三回揺れる。やっぱ無理だろと思って見ていればプシュっと音が鳴りボールはその場で静止した。…えっ?

「ジラーチ、ゲットだぜ…?」





一か月遅れの七夕




この後まさか本当に俺がジラーチを捕まえられると思っていなかったホウカさんが背中にアタックしてきて再び悲鳴をあげることとなる。




エステラ
真面目な性格のジラーチ。
リブレの『珍しいポケモンに会いたい』という願いと幸運体質に引き寄せられ落ちてきた。

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