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第4Q


少々大分カオスな空気が流れましたが、ハイ、気を取り直して。

海常で一緒にバスケをやろうという誘いがものの数秒で却下された事を未だ根に持っているらしい黄瀬。黒子は自分の勧誘を断ってまで誠凛にいる事を選んだ上、黄瀬を含めた「キセキの世代」全員を倒すとまで(のたま)った。

普段は大人しいがバスケの事となると吃驚する程積極的になる黒子。そんな彼とまたバスケが出来るのは嬉しい。嬉しい……が、それは同じ仲間(チームメイト)であれば、の話だ。

……正直嫉妬した。
かつて共にプレーしていた仲間が、今は別のチームで、別の仲間と共に、新たに進もうとしている。だがそのチームは、仲間は、拍子抜けする程大した事がなかった。確かに火神の実力は周りよりも頭一つと言わず飛び抜けているだろう。それでも彼は10年に一人と言われた自分…「キセキの世代」の中でも一番下っ端だと自覚している自分にすら歯が立たなかった。

その程度(・・・・)で。
自分が尊敬する彼を。

嫉妬しない訳が、なかった。


「黒子っちにあそこまで言わせるキミには…ちょっと興味があるんス」


出る杭は打つ。


「『キセキの世代』なんて呼び名に別にこだわりとかはないスけど…あんだけハッキリ喧嘩売られちゃあね……」


後に障害となるような芽なら、早々に摘み取ってしまおう。


「オレもそこまで人間できてないんで……悪いけど本気でツブすっスよ」
「ったりめーだ!」


その程度(・・・・)の男に、黒子()は勿体ない。


***


……と、いいカンジに始まったと思いきや。


「あ、ここっス」
「……って、え?」


黄瀬に案内されてやって来た海常高校の体育館。全国クラスの強豪校なのでやはりそこも広かった。確かに広い。広い……のだが。


「……片面…でやるの?」


その体育館は真ん中でネットによって仕切られ、片面は練習中の部員が使用。もう片面が本日の練習試合用として整備されていた。ゴールを見上げると中々の年季が…入って……いるようで。


「あぁ来たか、ヨロシク。今日はこっちだけでやってもらえるかな」


海常高校バスケ部監督、武内源太は誠凛が到着した事に気付き、挨拶をする。至極当然といったような態度にカントクは顔をひきつらせた。


「こちらこそよろしくお願いします……で、あの…これは……」


なんとなく相手の考えている事は読めている。だが納得はいっていない。事情説明を促すと武内は見たままだと言った。

此方としては、今日の試合は軽い調整のつもりなのだが、学ぶものがなさすぎるので出ない部員に見学させるのは無駄。という訳で彼らには普段通りの練習をさせる為、試合で使うコートは半分。

ああ、これは……


「だが調整と言ってもウチのレギュラーのだ。トリプルスコアなどにならないよう頼むよ」

「「…………」」
『(完っ全にナメ腐ってやがる)』


去年一年だけで決勝リーグまで進んだとは言え、全国クラスでIHにも普通に出場する強豪校と比べれば明らかに此方は格下だ。それは相違ないし、認めてもいる。だがその事実がこの状況を作り出すのはおかしい。確かに他県にとって誠凛は無名に等しい。それでも「練習の片手間に相手してやる」という態度は戴けない。

日向達や黒子、火神は勿論、カントクもビキビキと血管を浮き立たせて怒りを露わにしていた。冬玖は怒りを通り越して呆れていたが。


『(指導者としてそれは如何なもんか……)』
「……ん?何ユニフォーム着とるんだ?黄瀬、オマエは出さんぞ!」
「え?」


武内に対する怒りと悔しさの視線。その矛先を向けられている彼は無意識ではあるが(逆に質が悪い)更に煽る。


「各中学のエース級がごろごろいる海常の中でも、オマエは格が違うんだ。黄瀬抜きのレギュラーの相手も務まらんかもしれんのに、出したら試合にもならなくなってしまうよ……」

『……へー』


成る程。そこまで言うか。それはそれは。へへぇ。ふーん。そう。別に?俺はベンチなんで。試合出れるかわかりませんけどね?そんな奴が腹を立てるのはおかしいですか?誰だって漫画やらアニメやらのキャラクターに不平不満を抱いた事はあるでしょう?それと同じですよ。

内心そんな事を呟く冬玖。「心の内」と書いて「内心」であるにも拘わらず、棒読みである。

黄瀬は火神に宣戦布告した手前、慌ててベンチには入っていると執り成す。武内に泡を吹かせられたら恐らくは出して貰えると。


「オレがワガママ言ってもいいスけど……」

「オレを引きずり出す事もできないようじゃ、」
「『キセキの世代』倒すとか言う資格もないしね」


お前まで煽って来るか。

黄瀬には直接言ってないが(言うつもりもないが)、冬玖も冬玖で「打倒『キセキの世代』」を掲げている。だが今黄瀬の目に映っているのは黒子と火神のみ。冬玖や先輩方の実力は評価されていないという事だ。黄瀬を引きずり出せない二人に「打倒『キセキの世代』」の資格がないのなら、黄瀬の眼中にすらない自分達は……考えただけで更に腹が立って来たので冬玖は此処で止める事にした。

ユニフォームに着替えるべく、案内してくれるという更衣室へ向かう……が、その前に。


『御丁寧な説明(ゴアイサツ)をどーも』
「アップはしといて下さい。出番待つとかないんで……」

「あの…スイマセン、調整とかそーゆーのはちょっとムリかと……」


上等だ。そっちがその気なら此方が何しようが文句は言わせない。


「「そんなヨユーはすぐなくなると思いますよ」」


目玉●父も吃驚なぐらい目を剥かせた後、洗剤も蟹も裸足で逃げ出すくらい泡を吹かせてやる。

心の準備は宜しいか?
吹いた泡を拭くタオルの用意は?
かっ開いた眼に()す薬もあるか?
言い訳の用意は済んだか?
覚悟しろ。

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