第1Q
入部届を出した次の日。バスケ部入部希望者は早速体育館に集まっていた。
「よーし、全員揃ったなー」
「1年はそっちな」
15人の希望者は先輩の指示を聞き、指定された場所に固まる。その中で冬玖は一人の男子を見付けた。
『あ、お前あの時の……』
「あ?ああ、よお。昨日振りだな」
冬玖は入部届を出した日にぶつかりそうになった赤髪の男子生徒を思い出した。バスケ部希望だったのかと冬玖が驚いている反面、赤髪の男子生徒こと火神大我は自分が目を付けた生徒がちゃんといた事に嬉しく思った。
「俺は火神大我。お前は?」
『天川冬玖だ。よろしくな』
軽い自己紹介をした後、握手をする。互いのその手は、皮膚が厚く硬くなっていた。それは日頃沢山ボールに触れながらかなりの練習を積んだ証だ。
硬いボールをつき、持ち、投げる。その繰り返しで皮膚は擦れ、破れて血を滲ませる。何度も何度も擦れては破れ、治り、また擦れて破れる事で、いつしかその皮膚は厚く硬くなる事を覚えるのだ。
なあなあに済ませた練習ではなく、日々目標を持って努力したもの。握手しただけでわかる。
「『(コイツは本気だ)』」
こんな手を持っている奴はそうそういない。やはりコイツは強い。パッと離れた手を眺めながら、火神はにやけそうになる顔を抑えた。
『(……背高ぇ…)』
火神が一人うずうずしている横で、冬玖は少しズレた事を考えていた。冬玖の身長は185p。男子高校生の平均を余裕で超す背丈だが、隣の火神はそんな彼の背よりも5p程高い。そして何よりがっしりとしたその体躯。彼は身長だけでなくウェイトも結構あるのだろう。そんな推測は今し方バスケ部の監督(驚く事に2年生の女子だった)にバーンという効果音と共に「シャツを脱げ!!」と言われそのまま何の躊躇いもせず脱ぎ出した火神の上半身を見て確信となった。
「(うっわ生で初めて見る。これは……)」
『(……「天賦の才能」…ってヤツか?)』
というか俺が火神の後とか弱く視えるんじゃ……
何でお前そっちにいるんだよなどと冬玖は内心視られる順番に文句を言う。冬玖は
高さはあるが
重さはない。高身長の割に低体重なのだ。火神に比べたらもやし同然だろう。
垂涎しながら火神を視ていたカントクは眼鏡の先輩に声をかけられ我に返り、隣にいる冬玖を視た。
「……あら、」
『?』
「(バランスが取れてる…いや、取れ過ぎ……?)」
『(げ、眉間に皺寄ってる……)』
ぐぐっとカントクの眉間に寄った皺を見て、冬玖は顔が引き攣る。と言っても彼は表情筋が死滅していると噂される程の無表情なので少し顔が強ばった程度であるが。
「(185pの65sなんて細いにも程があるわ……)」
『(そんなに低いのか俺の身体能力……)』
「(なのに数値は全て平均の遥か上……)」
『(……だから火神の後は嫌だったんだよ)』
二人の思考が丸っきりズレている事を知る者は誰もいない。まじまじと視て来るカントクに冬玖は早く終われ早く終われと念を送る。……勿論気付くハズなどない事はわかっている。だがそれ程までに彼は居た堪れないのだ。
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