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第1Q


そして次の日。朝から土砂降りの雨。こんな天気では自転車での登校は不可能なので、冬玖とその妹・天川冬璃は相合い傘をして徒歩で行く事にした。因みに一人一本傘を使うという考えは二人にはない。


『お前の言ってた事マジだったわ』
『ああ、やっぱりいたんだ彼』


あの体質(?)には吃驚したでしょー、と笑いながら言う冬璃。実は彼女は昨日話題の中心となった帝光中の出身であった。バスケ部には関わっていないものの、持っている情報の量は半端ではなかったりする。


『仲良いのか?』
『それなりに。図書室でよく話してたよ。好きな作家さんが一緒でねぇ』
『……かなり仲良しだろそれ』


かなりの読書家な冬璃が自分のお気に入り作家話で盛り上がれるなら、相当趣味が合う筈だ。思った事をそのまま妹に言うと、彼女は『そう?だったら嬉しいなー』と周りに花を飛ばしながら笑った。


『てか「やっぱり」って事はアイツが誠凛にいるって知ってたのか?』
『んー、知ってたって言うか…想像がついた?かな。彼とは作家さんの話以外にも色々と世間話はしてたし』


バスケの話、兄妹の話、好きな食べ物、勉強……バスケ部での悩み。

公式試合の様子や結果。
擦れ違う仲間。
冷え切った信頼。
幼馴染みとの約束。

そして、自分が望んだバスケをする高校生。


『誠凛高校の話も出て来たから』


中学3年になってから、彼はバスケの話をする度に暗い表情をしていた。だが誠凛の話をする時だけは、少しだけ彼の顔に光が灯るのだ。嘗て自分が望み、今では憧れとなってしまったバスケをする者達。そんな彼らの存在が、支えとなっていた。


『見ていてあげてね、彼の事』
『仲間だからな』


ふわりと笑って見上げる妹の頭を、冬玖は空いている手でくしゃりと撫でた。


***


部活の時間になっても雨は降り止まない。外でのロードワークが出来ないので練習時間が余ってしまった。相談を受けたカントクは少し考える。

今年入った1年の実力はどれ程のものなのだろう。


「丁度いいかもね」

「5対5のミニゲームやろう!1年対2年で」


カントクのこの言葉に動揺したのは勿論1年だ。先輩と試合なんて、と怖じ気づく者を後押しするように、入部説明の時に言っていた事を思い出した者が言う。


「去年1年だけで決勝リーグまで行ってるって…!!」


1年は思わず生唾を飲み込んでしまった。誠凛は去年出来たばかりの新設校なのに。部員だってギリギリ1チーム作れるぐらいの人数だ。そんな状態で決勝リーグまで進出する程の実力者に、果たして自分達は適うのか。カントクはルーキー達がどこまでやれるのかと期待している。


「ビビるとこじゃねー」


そんな中、11番のゼッケンを付けた火神は言った。相手は弱いより強い方がいいに決まっている、と。


「行くぞ!!」
『待て』
「ぶっ!?」


物凄くいいカンジに決めコートに入ろうとした火神の背中を、冬玖は蹴り飛ばした。突然の事だった為火神はびたーん!と勢い良く体育館の床に倒れ伏す。


「テッメ…天川!いきなり何しやがる!!」
『いきなりはお前だ火神。まずはミーティングだろ』
「だからって蹴るか!?」
『それは悪い。俺は何かあるとすぐ脚が出る質でな』


どんだけ足癖悪いんだよ……と周りが絶句する中、冬玖は倒れた火神に手を貸し立たせる。目つきが悪い上に足癖が悪いなんて、不良だ、怖い、てか無表情って。そんな事を思われる冬玖だがそれはいつもの事であった。


『やる気があるのは結構な事だがポジションぐらいは決めた方がいいだろ』
「まあ…そうか」


火神を納得させた後、冬玖はカントクが選んだ1年メンバーを集めた。集まった5人のゼッケン番号は小さい方から順に6・7・9・11・15。因みに冬玖は6だ。


『得意なポジションとかあるか?』
「俺パワーフォワード」
『お前は何となく想像出来てた。降旗、お前は?』


火神の体格と性格を鑑みれば、大体のポジションは想像出来る。冬玖にサラッと流された火神はこめかみに青筋を浮き立たせる。先程から自分の扱いが酷過ぎやしないか。


「一応、ポイントガード……」
『ん、了解。じゃあ……』
「つーか、そういうお前はどうなんだよ?」


冬玖に話を振られた9番のゼッケンを付ける降旗は、彼の目つきと蹴りに若干怯えながら自信なさげに答える。その様子を然程気にせず冬玖は次のメンバーに訊こうとするが火神に遮られた。お前のポジションはどこだ、と。それに対して冬玖は、


『俺?ねーけど』
「……は?」


思わず目が点になってしまった自分達は決して悪くない……筈だ。

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