足して二で割ったらちょうどいい

チョコレートのたっぷりかかったドーナツ、艶やかな光沢を放ってふるりと揺れるプリン、これでもかとクリームが盛られたショートケーキ、色とりどりのマカロン、砂糖がこれでもかと含まれているのであろうシェイクドリンク…以下etc。
テーブルの上にところ狭しと並び、発せられる甘い匂いにうんざりしたようにユウは顔をしかめ、じっとそれらを美味そうに頬張る赤い目の男を睨みつけた。

こちらの視線など意に介さず、満足げにスウィーツを頬張る男の顔はディセプティコンNo.2とは思えないほど緩みきっている。
リラックスしている証拠なのだろうが、とユウはため息をついた。

男…スタースクリームは大の甘党である。
初めて知った時は目を見開いて驚愕したものだ。
ファストフード店でよく売られている特大サイズの甘ったるいシェイクドリンク程度なら軽々飲み干してしまうのだ。

対してユウは、甘いものが苦手だった。
甘いミルクチョコより甘さ控えめのブラックチョコ、ジュースやシェイクドリンクより香ばしく香る苦いコーヒー。
かわいげがないとたまに言われる事があるが、特に気にしたことはない。

もう一度、ユウは小さくため息をついた。
部屋に充満する甘い匂いで胸焼けしそうだ、とユウは一気にコーヒーを飲み干すと、甘ったるい匂いで麻痺しそうになっていた鼻腔が、香ばしいコーヒーの香りで満たされた。

「いつまで俺を睨みつけているつもりだ。」

「……そんな大量に食べて、よく胸焼けしないね?」

スタースクリームの問いには答えず、ユウはじとりと睨みつけたままぼそりと言った。

「貴様ら虫けらとは元から違うんだ。」

こころなしか得意げな顔をしてスタースクリームはそうユウに返した。

構造の問題じゃなくて、本人の味覚の問題なのでは、と内心でツッコミをいれるが、口に出すとあとがうるさそうなのでやめておいた。

相変わらずスタースクリームは机の上に乗ったスウィーツを食べ続けている。
金属生命体だから虫歯になったり、太ったりする心配もないので好きなだけ食べられるのだろうが、甘い物が苦手なこちらとしては見ているだけでつらい。

「そういえば、」

とスタースクリームが口を開いた。その唇の端にはドーナツを食べて付着したのであろうチョコレートが存在を主張しており、普段の威圧感のようなものはまるでない。

「貴様はなぜ甘い物が嫌いなんだ?人間の女とは基本的に甘い物が好きだと聞いたが。」

「たしかに女性は甘い物を好む人が多いけれど、それは個人差でちがうの。私は昔甘い物で嫌な思いをした事があるから苦手。」

そういってユウは小さなクッキーに手を伸ばし、口に放り込んだ。
そしてすぐに甘い、と呟き、顔をしかめた。
口の中に残る甘ったるさを消そうと手元のマグカップを見るが、すでにコーヒーを飲み干してしまっている事に気づき、もう一度淹れなおすことにした。

先ほどよりも苦味が強いコーヒーを淹れ、熱いそれを一口、口に含むと甘ったるさが消えた。

そのまま、カップをテーブルに置き、座ろうとするとぐいと手を引かれた。

「…何?」

椅子から腰を上げて、何かを話すでもなく、じっと自分を見つめるスタースクリームに首をかしげたユウ。
直後、スタースクリームの唇が自分のそれに重なった。

「!?」

突然のキスに慌ててぐいぐいとスタースクリームの体を押して身体を離そうとしたユウだったが、いつのまにか腕が腰にまわっており、離れようにも離れられない。
あきらめてスタースクリームの口づけを受け入れること数秒。
ちゅ、と名残惜しそうにリップ音を立てて唇が離された。

「……苦い。」

わずかに眉を寄せてスタースクリームがぽつりと言った。
対してユウは。

ぐい、とコーヒーを一気に飲み干すと今度は自分からスタースクリームに唇を押し付けた。
スタースクリームからした時よりも長い時間をかけて、口付けると、ユウは唇を離し、にっこりと笑った。

「うん、やっぱり甘い物はここからが一番ちょうどいい。」

あなた限定だけど、と付け加えたユウを、スタースクリームは何も言わずに抱きしめた。
頭に当たるスタースクリームの頭部であろう場所がうっすらと熱を放ち、ぎゅるぎゅるという普段はめったに聞かない機械音を発しているのを聞いて、ユウは小さく口の端を歪めて笑みを浮かべた。