12
部屋に揃っていたのは、リボーン、山本、雲雀さん、ランボの4人。獄寺くんは今日中に帰ってくるはず。了平さんは短期任務に飛んでいて、2、3日の内に戻ってくるだろう。骸は神出鬼没なところは変わらなくて、そのうちふらっと戻ってくる。まあ勘のいいあいつのことだから、何かを察知して近々戻ってくるんではないだろうか。
それじゃ今から紹介するから、とドアの外に待機させている郁を呼ぶ。さっきまでかぶっていたフードをとった郁が入ってくると、各々感嘆の息をはいた。
「白樺郁といいます」
「すっげー真っ赤! エンマも髪赤かったけど、ほんと林檎みたいに真っ赤なのな! 染めてんのか?」
「(エンマ?)いえ、地毛なんです」
「ワォ、そんな髪を持っていながら日本姓なんだ」
「あはは、よく言われます」
「綺麗な髪ですね」
「ありがとうございます」
あれ、意外とすんなり打ち解けてるような感じする。いやまだ一言ずつしか話してないけど。郁に1人ずつ簡単に自己紹介をさせ、最後リボーンの番になったとき、あ、と郁が声を上げた。
「ラスクの人!」
「あん時のやつじゃねーか」
「え、2人とも知り合い?」
「ああ、ちょっとな」
「そう、ちょっとね」
え、なんでそんな誤魔化すの!!! なになにどういうことなの!! 珍しくってわけでもないけど、なんだかリボーンが素で気に入ってる感がある。え、本当にどういうことなの。なんのつながりなの。
「綱吉、ちゃんと説明したの」
わたわたと動揺する俺に、雲雀さんがピシャリと言い放った。
そうだった。これからが一番大事な話になる。郁の人生を変えてしまいかねない話だ。郁、と呼んだ俺の声色で気付いたのか、郁が真面目な顔をして俺をみつめる。
「郁、ここはねボンゴレファミリー、マフィアの本部にあたる」
「マフィア?」
「そう、そして俺はこのボンゴレの10代目ボス、沢田綱吉。そこにいる彼らは守護者といって、俺を助けてくれる部下のようで先輩のようで大切な友人たち。リボーンは俺の、まあ師匠みたいなものなんだけど」
「……」
あ、ぽかーんとしてる。ん?ん?と首をかしげながら、それでも何とか飲み込もうとしてる郁がなんか可愛くて、でもこんな唐突な話をして申し訳なくて、あまり優しくは笑えずに苦笑がこぼれた。
「ごめん、黙ってて」
「え、っと、マフィアってことを隠していてってこと?」
「うん」
「いや、えっとそれはあんまり気にしてない。普通に色々一度に聞いて混乱はしてるけど、綱吉を責める気はないよ。寧ろ、隠さず教えてくれてありがとう」
俺を安心させるように優しく笑った郁に抱きしめたい衝動が体を走った。なんでこの人は、こんなに俺がほしい言葉をくれるんだろう。諦めていた人の温もりとか、優しさとか、そういうのをくれるから、縋りたくなってしまう。
「それで、なんで私ここに来ることになったの?」
「郁を連れてきたのはね、今敵対関係にあるマフィアが暴れてて、ひょっとしたら郁まで危害が及ぶんじゃないかと思ったからなんだ」
「……な、なるほど」
さすがに今までになく動揺を見せた郁に謝るけど、本人は気にする様子もなく何かを考え込んでいる。
「じゃあ私はここに保護してもらう形になるってこと……?」
「ああ、まあそういうことかな」
「なるほど……」
呟いて、少し黙った後ぱっと前を向いて口を開いた。
「あの、わからないことばっかりで迷惑をかけてしまうと思いますが、暫くの間よろしくお願いします。 一般的な家事くらいしかできませんが、できることがあれば仰ってください」
そう言ってぺこりと頭を下げた郁に、俺だけじゃなく、今度はみんながぽかんとした顔をする。
「ま、待って郁。郁は俺のせいで巻き込まれたようなもんなんだ。だからこれは俺の責任で、郁が気を遣うことはないんだよ……!」
「えっ、べ、別に気を遣っているわけじゃないんだけど。住ませてもらうんだもの、何かしなきゃ。それに保護ってことはもしもの時みなさんに守ってもらうことがあるかもしれないってことでしょう? 私は戦ったり自衛もままならないから、みなさんにお願いするしかない。だから、今私ができることくらいはするよ」
「でも、」
「いいの。守ってもらうばっかりじゃ、格好つかないでしょ」
へらりといつもの笑みを俺に向けて、そう郁は言った。かっこいい。郁はいつでもかっこいいよ。そう言いそうになって、何故か泣きそうになった。
よろしくお願いします。と改めて、いつもは見せないきりっとした顔でそう改めて頭を下げた郁に、はっきり言って、惚れた。