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チュンチュンと小鳥のさえずりが耳に届いてきて、ゆっくりと瞼を開けた。中途半端に閉めていたカーテンの隙間から日が入り込んでいて、結構寝てしまっていたんだとわかった。
天井を見ると、オシャレな模様。周りを見渡すと、高級そうな絨毯とアンティークの机と椅子。壁には本棚があって、日本書から洋書、様々な本達が半分ほど棚を埋めている。今寝転がっているベッドも、自分の家のベッドを思い返すと、比べものにならないほど大きい。
昨日初めてこの部屋に案内された時、「こんな高級なお部屋じゃ寝れない」って言ったのに変えてくれなくて、しかも私は爆睡してしまってた。はずかしすぎる。
のそのそと起き上がり、服を着替える。大きすぎるクローゼットには私の持ってきた服が数着しか入っていなくて、少しクローゼットに申し訳なさを感じた。もう少し持ってくればよかったかもしれない。そんなことを考えていると、コンコンとノックがきこえる。

「どうぞ」
「あ、起きてた。おはよう、郁。少しは眠れた?」
「綱吉、おはよう。それがベッドがとても気持ち良いもんで爆睡してしまって」
「はは、それは良かった」

朝だというのにしっかりスーツを着た綱吉が入ってくると、寝癖のついた私の髪を梳かしてくれる。こんなことを男性にされるのは初めてで最初戸惑ったけれど、手付きが優しくてとても心地良いものだから、お言葉に甘えてしまうことにした。

「なんか、起きてすぐ郁に会えるって不思議な感じ」
「あ、それ私も思った。やっぱりちょっと不安があったけど、綱吉の顔見たら安心したよ」
「そっか。俺も、郁の顔見たら安心した」
「あはは」
「なんで笑うの……?」

なんでだろう。面白かったわけじゃないんだけど、嬉しかった。ちょっと柄にもなく照れてしまいそうで、隠すために笑った。

「郁、今日俺ちょっと仕事で出掛けるんだ。翌日早々で悪いんだけど、本読んだり、屋敷内も自由に歩いていいから、ゆっくり過ごしててほしい」
「あ、うん、わかった」
「後でこの屋敷の地図渡すから、個人の部屋くらいしか立ち入り禁止はないけど、迷わないように気をつけてね」
「気をつけます」

人の家で迷うなんて、そんな恥ずかしいことはしたくない。けどこれだけ出かければやっぱり迷う人はいるんだろう、じゃないと地図なんて普通作らないもんね。
いつまでも髪から手を離さない綱吉に、何をしているんだろうと思えば、苦戦しながら綱吉が髪を結んでくれていた。私がいつもしているひとつ結び。

「うーん、難しい。ちょっと不格好になっちゃったかも」
「そんなことないよ。うん、十分上手」

鏡の前でくるりと後ろを向いて確認してその出来に笑って感謝を述べると、コツコツと近付いてきた綱吉。その顔があまりにも幸せそうに微笑を浮かべていて、そしてそんな顔で私を見るものだから息を飲んでしまった。あ、多分私今顔赤い。

「なんか照れてる?」
「い、いや、そんなことは、ない」
「ほんと?」
「ほ、本当」

ばくばくと煩い心臓を押さえながらそう言うと、綱吉はふっと笑ってから離れた。

「先に食堂に行ってるから、準備ができたらおいで。食堂は右の階段を降りてすぐだよ」
「わ、わかった」

ぱたんとドアを閉めて出て行った綱吉に、漸くはあっと息をついた。な、なんだろう。今までの綱吉と何かをちがうように感じる。今まで店に来てくれていた綱吉はここまで大人っぽくなくて、普通に過ごしてたのに。

「なんか、どきどきする」

どっちが彼の顔?どっちも彼の顔?
ふと鏡に映った顔が赤くて、こんなことではいけないと両頬をバチンと叩いた。