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「ちょっと、綱吉」
「……」
「つ、綱吉……?」

腕を掴まれたままズンズン進んでいく綱吉にただただ引っ張られてついていくけれど、彼は何も言わないし獄寺さんは置いてきてしまったし、どうしたらいいんだろう。
彼の味方になりに来る、と言った途端立ち上がった綱吉。怒らせてしまったんだろうか。私のような何の力もない人間に言われて、腹を立てた?ーーなんて、自分で考えておきながら、それは無いだろうと思い直す。そんなことで、怒るような人ではないと知っている。
そんなことを考えているうちに一つのドアの前にたどり着いて、少し乱暴に開けた綱吉に引かれて私も部屋に入る。一つの壁を埋め尽くしている本棚と、綺麗に整えられたベッド。控えめでお洒落なテーブルには書類が積み重ねられていて、お洒落だけれど生活感の少ない部屋だと思った。窓際の花瓶を見るまでは。

「あれ、あの花って……わっ!」

私が入った後ドアが閉められ、ぐいっと壁に追いやられる。か、壁ドンというやつだ!?
綱吉、と声をかけてみるけれど、下を向いていて垂れた前髪でよく顔が見えない。暫く待っても返事もなく動くこともなく、困ってもう一度名前を呼ぶと、ゆるゆると顔が上がる。

「どうしたの、綱吉」
「っ……郁が、かっこよすぎて惚れた」
「ふふ」

顔と耳を真っ赤にした綱吉がそこにはいて、その顔は嬉しさとか恥ずかしさとか、何とも言えない表情を浮かべている。

「ちょっと、抱きしめていい?」
「えっ」
「ちょっとだけ、」

いいよもダメもいう暇もなく、綱吉の私より逞しくて、男の人にしては少し華奢な腕が私の身体に回る。左手が後頭部を優しく掴んでいて、彼の頭が私の肩に埋まった。前髪が首を掠めてくすぐったい。

「ありがとう」

聞こえるか聞こえないかのような細く擦れた声が私の鼓膜を刺激して、ここにきていつもより大人っぽかった綱吉の可愛いところが見えて、私まで頬が緩んだ。