07
「へ、え? ボス?」びっくりした様子のベルさんが、昨日の男の人を見て呟いた。
え、ボス?
「え、ベルさん、ボスって」
「うちのボスだよ、ヴァリアーの」
あっけらかんと言うベルさんの視線の先には紛れもないその人。えっうそ。
驚いて、口をぱくぱくさせるばかりで言葉の出ない私を見て、フッと笑ったその人が私の腕を掴み歩き出す。後ろでベルさんが、は?え?と困っている声が聞こえた。
「あっあの!」
「なんだ」
「昨日は、すみません! 私、知らなくて! お名前も、聞きそびれてしまって……!」
「ザンザス」
「ざ、ザンザスさん、どこに、」
「どこに行くつもりだよ、ザンザス」
どこに行くんですか、と言おうとして、聞き慣れた声が遮った。前を歩いていたザンザスさんが急に立ち止まり、ドン、とそのままぶつかる。いたい。
「こんな場に出てくるなんて珍しいと思ったら、もう帰っちゃうの?」
「うるせぇ、ガキの遊びに興味はない」
「ガキって……俺ももういい歳だよ」
「そう言うんならとっとと女を作ることだな」
「作らないよ」
「……」
「俺は、そういうの興味無いから。ーー1人だけって、決めてるからね」
それはきっと、その場にいる人達にとってかなりの爆弾発言だったのだろう。その一言で、ざわついた会場。女性の悲鳴じみたものまで聞こえる。
「そういうザンザスは、誰連れてるわけ? ヴァリアーが女を連れてるってざわついてたけど」
え、待って、こんな形で再会してしまう?
近付いてきた綱吉が、ザンザスさんの後ろにいる私を覗き込んで、目を、見開いた。
「え……」
「っ」
「郁……?」
「つな、よし……」
綱吉が私の名前を呼んで、私が綱吉の名前を呼んで。一瞬静まり返ったホールが一気に騒がしくなった。「どこの令嬢だ!」「だれよあの女!」「ドン・ボンゴレを呼び捨てにするなど無礼な!」みたいな罵声も含めた阿鼻叫喚が飛び交う。綱吉が一瞬しまったという顔をして、びっくりして固まってしまった私の手を掴み走り出す。
走り出した瞬間、さっきザンザスさんにぶつかった時にウィッグの一部が引っかかってしまっていたのか、勢いでずるりとウィッグが頭から落ちて、赤い髪がぱらりと落ちた。
「あああ!」
「げ! ごめん郁!」
「だ、大丈夫!」
こうなってしまっては仕方ない。ウィッグは諦めるしかない。バタバタとその場を走り去る途中、私を見付けたベルさんが呆けたように口を開けてるのが目に入った。