09

轟少年の個性は、やはり圧倒的だった。
対戦開始からすぐ障子少年に索敵させ、それを生かして建物ごと一気に凍らせた。見てるだけで寒くなるような凍てつき方に、中の者はひとたまりもないだろう。
そのまま建物の中へと歩みを進め、隠密していた葉隠少女は勿論、尾白少年も見事にスルーし、カメラの向こうで轟少年が黙々と核兵器のある部屋へ歩みを進めていく。核の守りを担当することになった来栖くんだが、何台かある定点カメラのちょうど映らない場所にいるらしく様子が分からないうちに、轟少年がその部屋へと入ってきた。あと数歩進めば核に触れる、というところでふとカメラに現れた影。

「待ってたわよ」

耳につけたワイヤレスイヤホンから、冷えた空気の中に響いたその声が流れた。




***




「待ってたわよ」

焦ることなく、優雅ささえ感じるような歩みで入ってきた彼の斜め後ろからそう囁くと、面白いくらいに彼はそのまま飛び退いた。
その形相があまりにも必死で、いえ、必死で笑うのは性格が悪いわね。あまりにも驚きすぎてて少し笑ってしまった。

「ッお前、なんで動ける……!」
「動けるようにしたのよ」

さすがにスプラッタなところは見せるつもりはなかったけれど、ちょうどカメラの死角にいたからまあいいかと思って、凍らされた足の皮を私は爪で剥いだのだ。動けるようになった足からボタボタと血が流れるのも暫くの間、ズルズルと流れた血が集まってきているうちに足の方も再生した。うん、便利ね。
まあそんなことは説明するわけないけど、ブーツは固まり床にくっついたままで、素足でいる私を目の前の彼──轟くんは警戒MAXの表情で見据えている。

「私はこれを貴方達に渡す訳にはいかないらしいの」

するりと爪が30センチほどに伸びた右手を持ち上げて、宣戦布告する。

「だから、まずはあなたからね」

にこりと笑みを添えて。





***





「反射神経いいわね」

トン、と床を蹴り一瞬で間合いを詰めるけれど、轟くんによって生成された氷が壁となって阻む。それを爪で破壊してもその間にしっかりと距離をとられて、どうにもさっきから進展しない。
動く度にジャラジャラと鳴る鎖が少し鬱陶しくて、それを思い出す度にやっぱり足が重いなと実感する。

「逃げてばっかりなの?」
「ッ!」

目を見開いた彼が今度は間合いを詰めてきて、それに反応しようとした私を見て瞬時にしゃがみ、鎖をぐいと引っ張った。バランスを崩し床に崩れ込む私の手と足を床に氷で縫い付けて、今の応酬でさすがに少し息を切らせた彼がゆっくりと立ち上がり、私を見下ろす。
その目は今度こそ優雅さなんてなくて、ちょっと満足した。
そのまま足を核へと運びヒーローチームの勝利。制限時間までもう少しだったらしくて、惜しかった、勝利した轟くんにより氷が溶かされ動けるようになった尾白くんと葉隠さんと合流し守りきれなくてごめんねと謝ったら「とんでもない!!!」と首を凄い勢いで横に振られた。

「先生……1戦目2戦目続けてレベル高すぎねえ……?」
「……気を取り直していこう有精卵ども!」