03

あらすじ。
沢田綱吉くん。3歳下の幼馴染みが、私の家に間借りしにやってきた。
1LDKの部屋にしといてよかったー。1Kとか1DKだとさすがに狭いしそもそも泊めてあげられないからな。でもこういう時どっちの部屋貸したらいいんだろう?もう一部屋は私の寝室になってるし、リビングダイニングの方で過ごしてもらっていいんだろうか。

「私向こうの部屋寝室で使っちゃってるんだけど、綱吉くんこっちの部屋でもいい?向こうがよければそうするよ、ちょっと家具入れ替えは手伝ってもらうけど」
「俺はもう泊めてもらえるだけで有難いから、どっちでも大丈夫だよ」

にこにこ。
小さい頃から笑顔の可愛い子だったけど、それは今もで大人びてるけどかわいい。
思わず自分より高い頭をぽんぽんとすると、びっくりしたように目を丸々とさせた。

「もう子供じゃないよ」
「えー?私から見ればまだ子供だよ」

なーんて、私も数年前までまだ子供だったんだけどね。と笑うと、綱吉くんは少しだけむっとした表情になった。
少しびっくりして、そんなにいやだった?と聞くと、「涼ちゃんに子供扱いされるのは嫌かな」とのこと。まあ、歳もそんなに変わるわけじゃないもんな。少し寂しいけれど。
一言謝ると、仕方ないなあって笑ってくれたからまあ今後気をつけよう。

「話戻るけど、じゃあ私はもうひとつの部屋を使うね。ちゃんとした綱吉くんの自室がなくて申し訳ないんだけど……」
「俺荷物少ないし、全然大丈夫だよ」
「あるものは普通に使ってもらっていいから。あ、歯ブラシとかは買わないとダメかも」
「その辺は持ってきた」
「よかったよかった。食器はまあ棚に予備あるから、普通に生活できると思う」
「予備?」
「ん?んー、あれ、元彼が遊びに来てた時のやつなんだけどね」

何があったかな、と食器をしまい込んだ吊り棚を背伸びして開けると、後ろからパタンとその扉を閉められた。
へ?と後ろを振り返ろうとすると、ぴったりと後ろにいる気配がして思わず止まってしまう。

「なに、どしたの」
「涼ちゃん、彼氏いたんだ?」
「え、う、うん」

少しだけさっきより低くなった気のする声にびくりと肩が跳ねる。え、なに、怒るとこあったかな。
頭より高いところから聞こえる息を吐く音がとても近くて鮮明に聞こえて、そして不機嫌な雰囲気がもろに伝わってきて身動きがとれない。さらに近づいた気がして、このままでは何かわからないけどいかんと思ってくるりと振り向いた。

「あ、あの、ツナくん?」
「え?ああ、ごめんね」
「いや、うん、いいんだけど……どうしたの?」
「ん?うん、涼ちゃんに恋人がいたんだなあって」
「え、そ、それはあれ?私のようなものにまさか恋人ができるとはみたいな」
「ちがうちがう」

くすくすと笑う綱吉くんに、首を傾げる。頭にハテナを浮かべる私に彼が目を細めて私を見下ろすように更に近くなった。

「綺麗になってて、恋人がいても仕方ないけど、妬けるなって」
「え……?」
「なんてね」

にこり。綺麗な笑みを浮かべてすっと彼が離れる。
じょじょじょ、冗談、か。そりゃ冗談だよね!
かあああ、と熱を持った顔をぱたぱたと手で扇ぐ。男慣れしてないとかそんなのでは決してない、決してないけど!
近づいて改めて分かった。あんなに可愛らしかった小さな男の子が、今や背も越されて、肩幅も大きくなってた。声も、やっぱなんか低くなってるし。

「お、男の人になったんだなあ……」
「あはは、なにそれ」

私の気も知らずにのほほんと荷物を広げ出した背中をぺしんと叩いた。