連れ立つもの
サー・クロコダイルが王下七武海の座から引きずり下ろされた。
何やら政府に隠れてアラバスタの国家転覆を目論んでいたらしい。
「なんとまあ大それたことを…」
で、その目論見をかのスモーカーが見破り、クロコダイル討伐を果たしたと。
その記事が大見出しを飾る新聞を眺め、鼻から息を抜いた。
もっと利口な男だと思っていた。海賊の割には話の分かるやつで、七武海という立場を弁えているものだと。
その印象を政府に植え付けるためこその演技だったということか。
「どれ、ひとつ祝いの言葉でもかけに行ってやるとするか。」
近いうちに勲章の授与と昇格式がある。彼も暫くの間は本部に滞在するだろう。
早速と足軽に彼の部屋を訪れ、扉を叩いた。
「……出世した人間の顔じゃないな。」
大の大人も逃げ出しそうな凶悪面で、葉巻をふかす男がいた。明らかに今回の昇格に納得のいってないと言った出で立ちだった。
手前のソファに座って足を組んだと同時に、恐ろしく重暗い声音で告げられる。
「………おれの手柄じゃねェ。」
「だろうな。見ればわかる。」
「…腐ってやがる。おれは海賊なんぞに昇進を手助けしてほしかったわけじゃあねぇ。」
「ご尤もだ。」
ギロリと刺すような目で射貫かれた。その後すぐに顔が逸らされた反動で、葉巻の先から灰が落ちる。
“海賊なんぞ”とは、流れから取るにクロコダイルのことではなく、最近お熱だった例の麦わらのことだろう。
束の間の無言に満ちた部屋で足を組みなおしながら、ゆるく口を開いた。
「実はな、私も昇格の話を持ちかけられたんだ。」
彼は紫煙をなぞっていた視線を上げ、鋭い瞳をこちらに向けた。
自分の昇格はこの男とは違い地道な戦果によるものだ。こちらもそろそろだろうと思っていた。
当然勲章はないが、昇格式には私も出席することになっている。
「私をここに連れてきたのはあんたなんだ。」
ちゃんと手本を見せてくれないと。
苦々しい顔をした。噛んだ葉巻の先から、黒い灰がぼろぼろと零れ落ちる。
「昇格おめでとう、スモーカー。」