「本当に楽しみだったのに」

 最悪、と声が出た。駅の階段を上がりきって見えたのは大雨。今の時期だから仕方がないとは思いつつ、やはり気分もテンションもだだ下がる。朝から髪がまとまらないとは思っていたけれど、ここまでの豪雨になるなんて。折りたたみ傘で凌げる気がしない。意図せず溜息が出る。

 これからの予定は家に帰るだけ。
 せっかく準備したコーディネートも全く意味がなかった。時間をかけて頑張ったネイルも、今はただただ虚しいだけだ。朝巻いてきた髪はすっかりぐちゃぐちゃになっている。あーあ。

 だって酷くない?
 今日は一緒に映画見に行こうって、誘ってきたのはどっちなの。恨み言を内心で留めつつ、スマホのSNSアプリを開けば、目に映るのは「ごめん、今日やっぱ無理だわ」なんて簡素な短文。送信時刻は今日の12時半。集合時間の40分後。

「ほんと、もっと早く言いなよ」

 マジでムカつく、と本音を送らなかった私を褒めて欲しかった。履いてきた彼好みのメリー・ジェーンが、盛大に水溜まりを踏んだ。