雨宿る奇縁

 雨宿りを続けて20分。一向に止みそうにない雨を横目に、柳原さんはそういえばと私を振り向いた。「三田さん知ってます? 雨の日って、幽霊が出やすいらしいですよ」と呟いて、けらけらと笑って見せる。それは知らなかったと返せば、隣からは今日なら見えるかもしれませんね、なんてふざけた声。

 幼い頃、怪談ブームに乗っかっていた時の私なら、柳原さんの言葉にも食いついたかもしれない。だが生憎、噂話にはとっくに飽きがきていた。特に幽霊話なんかには。

 私には無理でしょうね、霊感ないですから。そう言って前を向く。たまたま同じ場所で、雨が止むのを待っていただけの私達。さっきまで顔見知りですらなかった彼は、私の話を聞くや意外そうな顔をした。が、それも束の間、何が面白いのかにやけ顔で一言。

「そんなことないですよ? だって三田さん、僕が見えてるじゃないですか」

 彼の言葉に思わず、え、と視線を上げる。
先程まで柳原さんがいた場所に、既に人の姿はない。アスファルトには濡れた靴跡さえ見当たらなかった。