聖バレンタインの決闘

※短い





「俺は! レベル4のゴブリンドバーグとガガガマジシャンで、オーバーレイ!」


 2月14日。その日は恋する少年少女がそわそわと何かを待ち続ける日。具体的には、少年は少女たちのチョコレート、少女は少年たちに告白する機会を。
 だけれどもこの世界にはそんなものに微塵も興味を持たない人達もいる。そのうちの一人は、私の目の前でいつも通りデュエルをしている少年、九十九 遊馬だ。
 彼は世界を救った英雄であると同時に、ただのデュエルが好きな男子中学生である。確かに人並み外れた身体能力だったり、その言葉の通り異世界人の半身だったりはするのだけれど、それでも私たちと過ごしてるその姿はただの男子中学生だ。


「ダイレクトアタックだぁ!!」


 昔は(失礼かもしれないけれど)ずっと負け続けていた遊馬だったけれど、アストラルと出会って変わった彼は凄まじい成長を見せていた。それは何度かアストラルと別れを経験した後も変わらなくて、なんだかすごいなぁ、って感心してしまう。
 ……こんな状態じゃあいつまで経ってもチョコレートを渡せそうにないな。分かっていたことだけど。思わず苦笑いを浮かべて手に持ったチョコレートの小包を鞄に直した。


「ん? 名前、帰んの?」

「うんー、特にやることもないしね」


 鞄を持って立ち上がるとデュエルを終わせたらしい遊馬が私の方を振り返っていう。嘘はいってないし、掌を振ってバイバイ、としてみれば遊馬は少しだけ頬をふくらませる。
 あれ、私何か変なことしたっけ? どうしたの、と遊馬を見れば不貞腐れたように彼は続ける。


「俺久しぶりに名前とデュエルしたかったんだけどなー……」

「そうなの?」


 珍しい、と言葉を飲み込んで鞄を机に置きなおす。遊馬、アストラルとあってからは私とデュエルすることなんてほとんどなかったくせに。いや、あの頃はNo.集めのために必死だったし、それ以外にもバリアンとの戦いとかで、それどこじゃなかったんだけど。
 今の遊馬に太刀打ちできるようなデッキだったっけなぁ。いや、負けたとしてもデッキのせいじゃなくて私のプレイングが問題なだけだ。デッキに責任転嫁するのはよくないな。


「……する?」


 デッキを手に持って声をかけてみれば遊馬の顔がパァっと明るくなる。……私は、遊馬のこの笑顔が好きだ。大好きだ。こんな遊馬だからこそ、私は。
 おう、と元気良く返事を返してくれた遊馬に私はDゲイザーを付けて応える。チョコレートは、……まぁ夏じゃないし後ででも大丈夫だろう。

 このデュエルに勝てたら、無理矢理にでも渡してやろう。そんな思いでフィールドにたって、私達は高らかと宣言した。



聖バレンタインデーの決闘
(いざ、尋常に勝負!)((デュエル!!))



Title...ポケットに拳銃
2015.07.22 執筆
僕らが生きた世界。