誰よりも頼りになる万丈目
「ふぁ、ぁ……」
授業中、小さなあくびを一つを零した。あぁ、眠い眠い。独り言をいいたくなったけれど、授業中なので我慢しておく。
おい、ととなりから小さな声がかかる。先生には気づかれなかったけれど、隣にいた万丈目にはやはり気づかれてしまったらしい。
なぁに、と聞いてみれば呆れたような顔で睨まれる。
「相変わらず品のない欠伸だな」
「……うるさいな万丈目。あんたに付き合わされて徹夜したのよ」
「万丈目さん≠セ」
「はいはいサンダーサンダー」
一年生の時から全く変わらないやりとりに最早懐かしさも覚える。果たして何回しただろう? 数なんてもうわからないけど、このやりとりは別に嫌いじゃない。
ああ、ねむい。昨日は先生の目を盗んで万丈目とデュエルし続けてたから、寝不足だ。勝つまでやめないとかなんとか言われて、結局真夜中の二時まで。
くぁ、ともうひとつ欠伸を落とす。この眠気の原因は万丈目にあるというのに、随分とひどい言い草だな、と今更ながら。まぁ長い付き合いだし、別にどうこういうつもりはないけれど。
「そんなに眠いのか?」
「うん、眠い。先生の話全く入ってこないし、ノートで字が踊ってる」
「……これは酷い」
言いながら万丈目にノートを見せれば酷い顔をされた。改めて自分でノートを見ても何を書いているかは全くわからない。何を書いてるんだろう、これ。
みみずが這ったような文字の羅列を見ているとさらに眠くなってきた。ダメだっていうのはわかってるけど、ダメだ、寝そう。うとうとと舟を漕ぎそうになっていれば万丈目から大きな溜息が聞こえてくる。
「なら寝るんだな」
「えー、ノート、とらなきゃ……」
「ノートくらいなら後で幾らでも写させてやる。デュエル相手が倒れでもしたらつまらないからな。それにこんな文字でノートをとったところで頭には入ってないんだろう、貴様のことなのだからな」
「……倒れたら十代のとこいくくせに」
「何かいったか名字?」
「いいえなにも」
小声で言って見れば見事に反応された。なんでこういうところだけちゃんと気づくんだよ、と少しだけ忌々しく思う。
それでも万丈目の言葉は素直に嬉しくて、そのまま頭を万丈目の肩に乗せてみた。普段の万丈目なら振り払いそうだけど彼は嫌な顔一つせずに私を受け入れてくれた。
自分に責任があるってことを少しだけでも理解してるんだろう。なら、夜中までデュエルさせないでよ、とも思うけどこいつもこいつでデュエル馬鹿だ。言ったって絶対に聞きやしない。
「……万丈目、準」
「……なんだ」
「好きよ」
「……知ってる」
眠いから、寝言。自分自身にそう言い訳して、名前で呼んで、いつもなら絶対に伝えない本心を伝えてみれば、彼からも絶対に伝えてこない本心が降ってくる。
ああ、こういうの幸せっていうのかなぁ。授業の間に寝るの、ダメなのはわかってるけど。ごめんなさい先生、今だけ幸せを噛み締めさせて。
誰よりも頼りになる君
(シニョーラ名前! 寝るんじゃないノーネ!)(……)(教諭に見つかったぞ起きろ)(ケチ……)
Title…反転コンタクト
2015.07.16 加筆修整