おまけ
『ベル、ただいま。』
こうやって眺める景色も、今、目の前にいる人もみんな存在しているのかな。本当は、いつか覚める夢なのかな。これから、私は、いちいち確かめないといけないのかな。
『あのさ、私。』
「もーよくね?生きてんだし。」
『なら、一言だけ。』
「あ?」
『ベルは、生きてますか?』
あなたは生きてますか。あなたは存在していますか?私はどうですか。あなたと、同じ世界で生きていますか?もしかして、私は、あなたは、夢なんですか?現実じゃないなんてこと、ありますか?
ぐちゃぐちゃな頭は、こんな言葉しか言えないのか。
ふと、手のひらが暖かいものに包まれて目の前まで上がった。
少し離れていたベルが、目の前までやって来て、私の手を、手のひらを合わせて鏡のように真っ正面に立っている。
「生きてんじゃねーの?少なくとも、」
合わしていた手のひらを握り、強く引かれた。
そして、唇に何かが触れて…
「これは現実だろ。」
目の前で、ニヤリと笑うベル。ああ、そうだね。現実だよ。
ってまてまてまてまて!!
『おいこら。ちゃんと台本通りにしてよ!』
「知らね。だって王子だもん。」
『ほら見て。唇、そんな、急にされたから。血が出てきてるし…っていうか、キ…』
「キス?」
『もう!そ、そんな簡単にしないでよ、キ、キス!』
「血、やばくね?」
『けっこう深いよ、ああもう。腫れるよ、これもう。』
「へぇ、見せてみろって。」
後頭部に回された手、そして塞がれた唇
『んむ、』
ベルの舌が、切れた唇を舐めて、吸って、…て、…ああもう!
「っしし、ごちそーさん。血の味、嫌いじゃねーよ。」
『こんの、くそ王子!!』
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