私が獄寺で、獄寺が私で。





♂♀♂


pppp…pppp…


「っるせ、」


目覚ましなんかかけた覚えもない。それなのに煩わしいこの音を消そうと腕を伸ばす。携帯に手を伸ばして止める。時間を見る。


「…はぁ?なんだってこんな時間に…」


何かの間違いか、夕方にかけられたアラーム。ふと、外に目をやる。が、


「…え」


窓はない。そして、ハンガーにかかる制服、ベッド下に落ちている下着。何より、サイドテーブルに置かれた銃。まさか、

視線を、真下に。


「…ある。」


自分にはない、ふたつの膨らみ。
ゆっくりと、両手で包み込んだ。っつーか、こいつ…!ベットの下に落ちていた下着に目をやる。寝るときも、付けろよ。…柔けぇ。


「何してんの、お前。」


金髪にのっかるティアラ。前髪に隠れた目。やっぱりここは。


「つーか、今日ボスと本部だろ。はやくしろって。っしし、揉んでもでかくなんねーって。」

「んなっ!?」

「…今日、変じゃね?熱でもあんの?」


近寄って、手を伸ばして来る。当たり前のようにこいつは北山の頭に…って、


「ま、待て待て!オレは…」


ここで、もし北山じゃないと言ったら。「はぁ?っししし、まじウケる!つーか、お前だれの乳揉んでんだよ。」なんつー、事になるんじゃ。


「…はぁ?“オレ”って、───あ、へぇ。そー言うこと。っししし、マジ?…言っとくけど、今日お前仕事だから。澪の乳揉んでたことバラされたくねーなら、黙って仕事しよーぜ。」


床に転がった下着をナイフで持ち上げて、楽しそうに笑う目の前の王子を果てさせてやろうかと思っても武器はない。


「ベルフェゴール…なんでこんな事になってるのか分かんねーのかよ!」

「知らねーって。つーか、どう?こいつの乳。それから、いつもこいつ風呂はいってから仕事行ってるから。」

「お、おい!」

「あー、あと。スクアーロのこと、あいつスペルビっつーし、ボスのこともXANXUSさん、だから。間違えたらバレるぜ?
まぁ風呂な。隊服なら揃えてやっから。下着も一緒に。」

「…っ!!お前ら付き合ってんのかよ!」

「そんなんじゃねーよ、早く行かねーとボスにカッ消されるぜ?」


風呂。着替え、裸、全てが頭のなかでぐるぐると巡る。つーか、


「仕事って」

「本部。顔出して話聞いとくだけってあいついつも言ってっけど。」

「本部って、お前、まさか」

「ボンゴレの本部に決まってるっしょ。あんなとこ王子からしたら肩っ苦しいけど。」


あの!ボンゴレ本部。まさか、まさか、あの、本当に…っ!


「10代目ぇ、お先に…失礼しますっ!!」

「…ボスの前で沢田の名前だしたら死ぬから。」









♀♂♀














目が覚めたら固い床。たばこ臭い部屋。なにより、


『ジャラジャラが鬱陶しい!』


腕と首につくアクセサリーを投げ捨てる。何のためにこいつは…それよりも、案外落ち着いていた自分にびっくり。なんでだろう、摩訶不思議体験しすぎてさ。これ以上驚くこともないよね。


『7時って、もしかして今日学校?』


辺りを見回して、携帯を探す。記憶にある番号を打ち込めば、直ぐに出た。


『もしもし?あのさ、』

「っしし、わーってるって。今お前日本?」

『今日の仕事、スクアーロにお願いして。番号記憶してないからかけれないし。』

「っしし、大丈夫だって。それより先にバレっから。お前も学生楽しめよ。」

『ちょっと!待って…。…嘘でしょ。楽しんでる。あの、バカ王子。』


時計がギリギリだと焦らしてくる。雲雀なんかに目をつけられたら面倒だし…ああもう。行って寝ればいいか。それに、ひさびさに日本にいるなら寿司。それから、お茶。というか、米。味噌汁飲まないと。


『おはよーございます!10代目!』

「お、おはよう…あ、れ?ご、獄寺くん…どうかしたの?」


ひきつるような顔に吹き出しそうな笑いをこらえる。やめてくれよ、平常心保てないよ、私。


『え、何か可笑しいっすか?』

「いや、その…アクセサリとか、ほら。あ、あと髪くくってるし…。」

『自分、気付いたんです!今までの格好がダサかったこと。』


だめだ、笑いそう。どうしよう、いつまでバレないかな。アクセサリーをすべて外して。たばこも全部置いてきた。制服は見事なまで模範生のように着付けて、髪の毛も束ねた。黒眼鏡を拝借したら頭が銀髪って以外は真面目生徒に見えるはず。


「よっ。ツナ、…と、ご、獄寺?」

『よぉ、山本。あのよ、一生の願いがあんだけど。』

「え?…な、何だよ。」

『お前ん家の寿司。今晩食べさせてくんねぇ?』

「えぇ!?ちょ、ちょっと…本当に獄寺くん!?」

『…っ、あはは!ダメだ!無理無理、』


山本のきょとん、とした顔。焦る沢田、首をかしげる家庭教師くん。…もう、限界。


「も、もしかして…北山?」


凄いな、沢田は。どうして分かるんだろう。私だってこと。


「え、ええ!またぁ!?」

『10代目、今日も一日よろしくお願いします!!』

「…っはは、なんか面白そーなことになってるのな。いいぜ、寿司。いっぱい食ってけよ。」

『ありがと、って、獄寺はこんなんじゃないか。』


拝啓、獄寺さん。
私は今、仕事から解き放たれて自由を満喫していますが、いかがお過ごしですか?

To be continue...





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