ゼェゼェと息を切らしながらなんとか46番道路と29番道路を分ける関所前まで辿り着いた。
45,6番道路は利用するトレーナーも野生のポケモンもレベルが高い。一方、29番道路は旅立ちを迎えたばかりの初心者がよく利用する道で、飛び出してくるポケモンも可愛らしいくレベルの低いことが多い。
それらの生活区を分けるためにも地形を活かした高低差による逆行防止策や注意喚起をするための関所などを設けている、らしい。全てテレビで聞いたことの受け売りだが。
あのなかなかの高低差をひょいと下ることができる人なんているのだろうか。いや、いるんだろうな……。実際息を切らしているのは私だけで、晴琉くんはもちろん子どもの澄ちゃんまで余裕のある顔をしている。
呼吸が整ったことを確認して関所内に進む。身元確認などがあるのではと少し身構えていたが、監視員さんと会釈をする程度で通ることが出来た。おはようございます、朝からご苦労様です。
ここまで来る途中、3人で話をしながら歩いた。私が旅に出たなんとなくのキッカケ、急ぎ足な理由。私のポケモンと話ができるチカラについて。これはりゅうのあな前の池によく遊びに来ていたらしい澄ちゃんは既に知っている様子だった。
聞いていいものか迷ったけれど、澄ちゃんの話し方について。彼女曰く「たくさん はなすこと なかった」とのこと。つまり話し慣れていないだけ、のようだ。これから沢山お話して上手くなりたいとも言ってくれた。
関所を抜け、少し開けたところでバッグの中に紛れ込んでいた4年前の簡易地図を取りだし場所を確認する。
「さてと、どっちに行けばいいのかな?」
『たしか、ワカバには研究所ぐらいしか大きい施設はなかったはずだぞ。』
「そうなの?よく知ってるね。」
『長老が読んだ後の新聞を時々拝借してたからな。』
「なにそれ初耳。」
「ねぇ、どっち すすむ?」
「ボール買わなきゃ行けないし、ヨシノシティかな?」
『そうだな、ならこっちだ。……多分な。』
「詰め甘くない?」
『仕方ないだろ俺だって初めて行くんだから。』
流石に大きく地形が変わっていることもないだろう、と簡易地図を頼りに歩き始める。草むらを進むことになったが、朝もまだ早いこともあってか、そこまでポケモンも多くない。起きてきたオタチも、逆に巣に帰るホーホーもなんだか眠そうだ。
『……ろ、…………………ってんだろ!!』
『おま………し……るっせ……!やん…か……!!?』
『……はぁ……!!?』
どこかそう遠くない場所から争うような声が聞こえてくる。多分、この先通らなければいけない草むらの近く。きっとあの茂みの奥だ。
なるべく厄介事は避けなければ。ガバイトの姿でも人の姿でもこの辺りのポケモンより一回り大きく目立ちやすい晴琉くんには一度ボールに戻ってもらう。『何かあれば直ぐに出せよ』という言葉が優しい。
ボールがなく戻ることの出来ない澄ちゃんには静かにねとアイコンタクトをとる。こくんと頷いたのを見て、しっかりを手を繋ぎそっと歩き始めた。
なるべく草むらの端を歩き、近づかないよう茂みの脇を通り過ぎようとしたその時、目の前に赤色の何かが飛び出してきた!
澄ちゃんにぐんっと手を引かれ、反動でしりもちをつく。ちょうど私がたっていた奥の木には小さく焼け焦げた跡が。
息をつき澄ちゃんにお礼を言うと、そこには大きな目をさらに大きくして私の顔を指さす彼女が。
なにか付いているのか、とぺたぺた自分の顔を触るともう少し上とジェスチャーをされる。触るだけではわからず、バッグから手鏡を出して確認すると、そこに写ったのはチリチリと焦げて縮んだ前髪が。
「!!?」
「チサトちゃん、こげてる!」
鏡を覗いて呆気に取られていると、腰に巻いたベルトのボールホルダーがすごい勢いで揺れていた。壊れてしまうのではと思い、付けているボールを外し軽く投げると中からは見るからに慌てている晴琉くんが飛び出してくる。
『チサト大丈夫か!?どうした!怪我か!あぁもうなんでもっと早く出さないんだ!!』
「ご、ごめん。でもこれ怪我ではない……。」
『いいから!……なんで髪が焦げるようなことになるんだ……!?』
そんなこと私が知りたい。
当事者以上に慌てる晴琉くんを他に怪我はないからと宥めていると、赤色の何かが飛び出してきた茂みから今度は耳を疑うような轟音と土煙が!
土煙がすこし収まったのを見て茂みをかき分けるとそこには。
仁王立ちで佇む澄ちゃんと地に伏した3匹のポケモンがいた。
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